東電への経営支援 国民への負担強要は許されない
40年の運転期間満了を迎えた原発など、再稼働を進める動きが強まる中、安倍内閣は原発で大もうけする電力会社を国民の負担で支援する議論を加速しています。
経済産業省が設置した「東京電力改革1F(イチエフ=福島第1原発)問題委員会」(東電委員会)は5日、福島第1原発の処理費用に国民負担を求める方針を示しました。「電力システム改革貫徹のための政策小委員会」の作業部会では、原発の廃炉費用を電気料金に上乗せし、すべての電力利用者に負担させる議論が始まっています。
内閣府に置かれた原子力委員会の原子力損害賠償制度専門部会には、原発事故を起こした電力会社の責任範囲を現行の「無限責任」から「有限責任」に切り替える案が提示されました。電力会社の損害賠償責任に上限を設定し、超える部分を国民に負担させる狙いです。
東電委員会にオブザーバーとして参加する東京電力ホールディングスの広瀬直己社長は「東電が債務超過になって倒れてしまう危険を取り除いてほしい」と述べ、身勝手極まる姿勢をあらわにしました。その傲慢な要求に国民負担で応えようとする政府の姿勢も大問題です。
「脱原発社会を」と願い、電力小売り自由化を機に新電力と契約した市民が「廃炉費用は原発企業が負担せよ」と怒りの声を上げています。
日本弁護士連合会は「有限責任論」を批判し、無限賠償責任の維持を求める意見書を内閣総理大臣や原子力委員会委員長などに提出しました。
政府・与党が推し進める「復興加速化」によって、帰還困難地区を除く区域の避難指示が解除され、損害賠償の一方的な打ち切りや値切りが強まるなど、原発事故被害を人為的に収束させる動きが広がっていることも重大です。
全商連も加盟する原発をなくす全国連絡会は、「国と東京電力が責任を果たすことを求める請願署名」を100万人目標で取り組んでいます。
原発推進政策を転換し、東電への経営支援は国民負担ではなく、原発関連企業の責任で行うべきです。
全国商工新聞(2016年10月17日付) |