「共謀罪」法案提出の構え 危険な狙いと本質知らせ廃案に
安倍政権は、自民党政権がこれまで3度国会に提出し、人権侵害との国民の批判を浴びて廃案となってきた「共謀罪」法案を、9月召集の臨時国会に提出する構えです。
共謀罪とは実際の犯罪行為がなくても、相談し合意しただけで犯罪とされ、「実行行為を処罰する」という近代刑法の根幹を揺るがす悪法です。
報道によれば「テロ等組織犯罪準備罪」を設け、「4年以上の懲役もしくは禁錮の刑が定められている罪を実行」する「組織的犯罪集団」を対象とするとしています。しかし、「テロ」にかかわらず、警察が「陰謀を張り巡らしている」と判断すれば、ただちに捜査が可能です。対象犯罪も600を超え、万引きやキセル乗車のような凶悪とはいえないものも含まれています。
また、共謀に加えて、資金や物品を取得する「準備行為」も、犯罪の構成要件になっています。しかし、条文には「その他」という文言が盛り込まれており、これも捜査当局の拡大解釈が可能です。
共謀罪の導入について政府は、2000年に署名した国際テロや麻薬対策のための「国際組織犯罪防止条約」の締結に向けた国内法整備の一環と主張してきました。しかし、日本には重大犯罪に限って例外的に、陰謀罪、予備罪など未遂よりも前の段階で処罰可能な立法がすでに存在しています。日弁連も、共謀罪の制定は条約締結の絶対条件ではなく、その国の法制度のままで批准している国がほとんどと述べています。共謀罪成立を条約批准の絶対条件であるかのように主張して、国民をだます態度は許されません。
先の国会では、盗聴法の改悪により対象犯罪が一般刑法犯罪にも適用可能となりました。最近も、大分県警による野党支援団体への盗撮が発覚し、共謀罪が成立すれば、マイナンバー、風営法の警察立ち入りなど、国家権力による国民監視に拍車をかけることは明らかです。
こうした動きは、安倍政権の「戦争できる国」づくりと一体です。市民活動を萎縮させ、市民の言論を封ずる共謀罪の狙いと本質を知らせ、国民的な運動で必ず葬り去りましょう。
全国商工新聞(2016年9月12日付) |