年金積立金の運用失敗 国民へのつけ回しは許されない
安倍晋三首相は衆議院予算委員会で、株価の下落で年金積立金の運用で損が発生していることに関連し「想定の利益が出ないなら当然支払いに影響する」として年金の給付減があり得ることに言及しました。
公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、昨年8月以降、株価の下落により約8兆円の損失を出していました。年金は「安全・効率的」に運用することが定められており、現在の年金積立金約130兆円の運用先は国債60%、日本株、外国株それぞれ12%とされてきました。しかし、14年10月に積立金の運用方針を大きく変え、日本株、外国株をそれぞれ25%に拡大、国債の割合を35%に引き下げました。日本株の運用はさらに拡大し、積立金のうち最大で67%、87兆円を株式による運用ができるようにしたのです。
これは、株価の上昇を至上命題としてきた安倍政権が株式市場に新たな資金を投入し株価を買い支えるための政策にほかなりません。
安倍首相は「運用は長いスパンで見るから、時々の損益が直ちに年金額に反映されるわけではない」と弁明していますが、この間の株の値下がりで、さらに積立金が失われたことは明らかです。
こんな危険な運用によって国民の貴重な財産を失う一方、国民には高い年金保険料の負担と年金給付の削減を押し付けています。また、年金事務所は中小業者の実態を無視して、健康保険・厚生年金の強制加入を迫り、保険料の滞納に対する差し押さえなど徴収を強化しています。年金積立金を投機性の高い株式市場に投入し、失敗の「ツケ」を国民・中小業者に押し付けることは許されません。
同時に、国民の生活を第一に考えた経済運営が必要です。消費税10%への再増税など論外であり、雇用の7割を支える中小企業者に対する支援を強化することが求められています。
年金財政を安定させ、給付を保障し、拡充するためにも、国民生活を顧みない安倍政権に「ノー」の声を突き付け、年金積立金の危険な投機をやめさせることが急務です。
全国商工新聞(2016年3月7日付) |