効果疑問の金融緩和 国民の懐を温めて内需拡大こそ
安倍政権と日銀が2%の「物価上昇目標」を達成するまで金融緩和を続けるという共同声明を発表しました。政府の圧力で「中央銀行の独立性」が無視された異例の対策ですが、広範な国民には効果への疑問や物価上昇による生活圧迫という新たな懸念が広がっています。
安倍政権は、この金融緩和を財政出動や成長戦略とともに、経済政策の「三本の矢」の一つと喧伝しています。しかし、経済政策の中身を間違えると真の景気回復にはつながりません。
金融緩和では、市中通貨量をどんなに増やしても、銀行が地道な中小企業の育成や地域経済の振興に役立てない限り、健全な経済循環は生まれません。また財政出動も、高速道路建設の再開や国際港湾の整備といった浪費型の公共事業から脱却しなければ、波及効果は限られてしまい、財政危機をより深刻にするだけです。成長戦略でいえば、「世界で一番企業が活動しやすい国」づくりや海外展開支援を打ち出していますが、これではまん延する下請けへの単価たたきや違法なリストラを是正できません。
安倍政権の経済政策については、総じて2003年から08年ごろまでの政策の「蒸し返し」という指摘があることも見逃せません。当時、金融緩和で確かに円安になりました。しかし膨大な資金がアメリカ国債の購入に流出し、輸出大企業が得たドルは再び、アメリカ国債に費やされて日本には戻ってきませんでした。やがて、その資金はアメリカで不動産バブルとサブプライム問題を招く契機ともなりました。そのことが「くず肉を松阪牛として売るようなもの」といわれた詐欺的商法の発覚により「リーマン・ショック」を招き、世界恐慌の到来を現実的に危惧せざるを得ない事態に至ったからです。
真の景気回復には、国民の懐を温め、内需を拡大することで仕事と資金が循環する政策の実現こそが求められます。
最悪の大衆課税である消費税増税を断固中止させるたたかいと結び「売り手よし、買い手よし、世間よし」の中小業者の仕事おこし・顧客拡大を国や自治体に迫ろうではありませんか。
全国商工新聞(2013年2月4日付)
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