社会保険未加入の建設業者 排除やめよの世論と運動を
建設業者の社会保険未加入問題で、国土交通省が強権的な対策を打ち出したことに苦難と怒りが広がっています。
先週の本紙でも大きく報じたように、国交省は、来月から建設業の許可・更新の際、社会保険加入状況の調査を徹底する構えで、2017年度以降、未加入が発覚すれば、未納保険料の徴収と合わせ、営業停止処分にするとしています。
社会保険の未加入がなぜ、生まれるのかをまともに調べもせず、行政指針として拙速で官僚的な規制だけが強行されるとすれば、建設現場に大きな混乱が広がることは必至です。
社会保険の未加入を防ぐというなら、その制度の構造的な欠陥や不公正な取引を正すことこそ、優先されるべきです。
例えば、「払いたくても払えない」ほど、社会保険料の負担が重いという問題です。とりわけ、労働集約型で人件費割合の高い小企業にとって、大企業と同じ保険料率を迫られること自体が、能力に応じて公平に負担するという原則に反しています。また長引く不況とダンピングが横行する中、代金・単価の値引き圧力などによる経営悪化が保険料の捻出を困難にしていることも見逃せません。実際、こうした不公正取引を放置していることが、「弱肉強食」をより過酷なものにし、社会保険加入が任意である従業員5人未満の事業所などを、現場から締め出す事態さえ生んでいるのです。
建設を生業とする小企業・家族経営の多くは、従業員の家族構成や暮らしぶりを熟知しています。若い世代が手に職をつけることを援助し、「自らの手取りを減らしてでも雇用を守りたい」と懸命に努力している方も少なくないでしょう。そんな中小建設業者の苦労や善意には一切目も向けず、社会保険の未加入に、一律「不正行為」の烙印を押す乱暴な規制が許されるはずもありません。
「下請け排除をやめよ」「建設業許可を取り上げるな」の世論と運動を、実態の告発と結び、広げようではありませんか。社会保険料を含む法定福利費を、すべての建設業者が確保できる仕組みをつくるよう政府・国交省に強く迫りましょう。
全国商工新聞(2012年10月22日付)
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