許せぬ原発再稼動と値上げ
野田政権は9日、東京電力と原子力損害賠償支援機構が提出した「総合特別事業計画」を認定しました。特徴的なのは来年4月から新潟・柏崎刈羽原発を再稼働させるのに加え、7月からの家庭用電気料金の値上げや1兆円の新たな公的資金注入を明記したことです。
福島原発事故の原因は、いまだ究明されず、被害が拡大する状況です。にもかかわらず原発再稼働を計画すること自体が、政府の無反省を示し、「原発ゼロ」への国民の願いを踏みにじるものです。また電気料金も、東電が直近の10年で6186億円も過大に見積もっていたことが発覚しました。大企業が割安料金で莫大な恩恵を受ける一方、赤字を家庭向けの利益で補てんしてきた実態も明らかになりました。こんな状況で10・28%の家庭料金値上げが許されるはずもありません。ましてや料金値上げを「電力不足」と併せ、原発再稼働の口実にする横暴を断じて許すことはできません。
政府がなすべきは、東電やその株主、大口貸し手である大手金融機関に共同責任を取らせ、事故処理や完全賠償の負担を担わせることです。また東電が隠す「総括原価」の具体的データを公表させ、あらゆる経費に独占的利潤を上乗せするような料金算定を見直させるべきです。
原発の再稼働は、全国にあるどの原発も許せません。そもそも「国民の生命」と「電力不足」をてんびんにかける発想自体が根本的に誤っており、再生可能エネルギーの本格的な導入と低エネルギー社会の実現にむけた取り組みこそ、政府の責務に他なりません。
国は、特別会計を再生可能エネルギーの普及へと大胆に振り向け、自治体は地域経済振興のためにも、エネルギー自給を推進するべきです。また発電設備も町工場で製造できるよう小型・分散化を奨励し、さらに大企業には、内需による原発廃炉と発電設備転換の方向を一刻も早く示すことが、新たな仕事・雇用対策につながります。
広範な中小業者には培ってきた技術・技能や専門知識があります。それを「原発ゼロ社会」実現に生かせるなら、希望ある新時代を開く力となるでしょう。
全国商工新聞(2012年5月21日付)
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