年金改悪 国民負担より大企業の責任で
厚生労働省が社会保障推進協議会年金部会に示した「年金支給開始年齢引き上げ」案は、国民に負担増と給付削減を押し付け、大企業の社会的責任を免除し莫大な減税で優遇するという「税と社会保障の一体改革」の狙いを露呈したものでした。
厚労省案は、3つの具体案として示されましたが、共通する考え方は、厚生年金支給を65歳開始にするため3年に1歳ずつ引き上げている現行計画を2年に1歳に前倒しすることや、開始を68歳からにするなど、受給者への給付を削減するものです。
現行計画でも現在56歳の男性が62歳支給開始となる2016年だけで8000億円もの給付削減になる上に、68歳まで引き上げたら1歳あたり5000億円削減と試算されています。これは厚生年金比例報酬部分だけでも平均で一人年間110万円、60歳からの支給と比べて、65歳開始で550万円、68歳開始なら約900万円が消えると言われています。
厚労省案で最も早い場合、現在57歳が62歳から、54歳は65歳から、51歳以下の人が68歳からの支給になります。実際に68歳まで年金がないとすれば、現状では働く場がなく無収入の人が限りなく増加します。政府は、高年齢者を対象に新たな「低賃金労働者群」をつくり出そうというのでしょうか。
今回の具体案は、厚生年金だけでなく国民年金にも適用される考え方であり、私たち自営業者も含め、すべての国民の生存権や幸福追求権にも関わる大問題です。
しかも、財界は社会保険料企業負担分まで税金で賄うよう政府に求めています。社会保障財源は消費税増税という「一体改革」の与党方針、そして庶民増税・消費税増税案が国会に提出される直前に具体案を提示したタイミングなどから見れば、今後高まるであろう国民の反発を、消費税増税容認に誘導しようという、よこしまな狙いがあることは間違いありません。
年金改悪案のひどい内容と、国民負担増ではなく大企業などに応分の責任を果たさせることの重要性を広く伝え、運動を進めましょう。
全国商工新聞(2011年11月7日付)
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