罰則強化、通則法改悪の廃案を
衆議院は16日、「現下の厳しい経済状況及び雇用情勢に対応して税制の整備を図るための所得税法等の一部を改正する法律案」を可決し、参議院に送付しました。この法案は、今国会に上程されていた2011年度税制改正法案の一部を抽出し、急きょ新法案として政府提案されたものですが、中小法人の軽減税率など国民生活に有益な期限延長措置とともに、大金持ちのための証券優遇税制2年延長も紛れ込ませました。とりわけ重大な問題は、納税者への罰則強化が盛り込まれたことです。
所得税、消費税、法人税などほとんどの税目に、故意の申告書不提出を「ほ脱犯」とし、「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金を科すほか、消費税の不正還付未遂への罰則を創設し、国税犯則取締法に「官公署又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる」という条文を追加しています。さらに、消費税法には事業年度の前半6カ月で1000万円を超えれば、翌年から課税業者とする規定も挿入されています。
主権者である国民に新たな罰則を科すという、憲法の人権規定にかかわる問題を、ほとんど審議もせず、また立法趣旨が異なる案件をことさらつなぎ合わせて強行することは、国権の最高機関の名を汚すものです。
さらに重大なことは、この急転直下の動きは、民主・自民・公明の3党合意の下に進行し、さらに納税者の権利侵害が狙われていることです。3党は8日、罰則強化とともに、国税通則法改悪についても「各党間で引き続き協議し、成案を得る」との文書を取り交わしています。
これは、民商・全商連が昨年末以来、改悪阻止に向けた運動を繰り広げ、税理士団体や日弁連など各界に反対意見が広がる中、正面からの議論を避け、衆参両院で大多数を占める民・自・公3党による「談合」突破を策したものです。そこには、税と社会保障改革、復興税など消費税増税の諸準備として納税者の権利制限をあせる国税当局の意図が見えます。
法案は参議院段階ですが、今こそ全国いっせいに、罰則強化の削除、国税通則法改悪案の廃案を求める行動を起こし、納税者の権利を侵害する重大な攻撃をはね返しましょう。
全国商工新聞(2011年6月27日付)
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