要支援者を除外する改悪許すな
菅内閣が提出した介護保険法改定案がこのほど、衆議院で可決されました。今回の「改定」は、要支援者を保険給付の対象から外し、給付費の削減を進めるのが狙いです。
現在、要介護認定で「要支援」とされた人には、訪問・通所介護などの保険給付(サービス)を受ける権利があります。
改定法では、要支援者を市町村の判断で保険給付の対象から外し、新設する「介護予防・日常生活支援総合事業」(以下、総合事業)の対象に移すことができる仕組みになっています。
「総合事業」では、訪問・通所サービス、配食、見守りなどを行い、介護保険財政から上限付きで財源が支給されます。しかし、サービスの水準については保険給付のような全国一律の基準がなく、市町村の裁量で切り下げが可能になっています。また、保険給付で原則1割負担の利用料が、「総合事業」では、値上げされる恐れさえあります。
介護保険が「介護の社会化」を目標に2000年に創設されて11年。国や自治体が支出する公費と、国民が負担する保険料や利用料を財源に、公的な介護制度の確立を目的としてきました。しかし、自公政権による社会保障費削減路線で、介護サービスの削減や保険料・利用料の負担が増え続けてきました。
高齢化に伴って公的介護を求める人は増加しています。例えば、特養ホームの「待機者」は介護保険導入後10年間で4倍以上にもなっています。
介護は、状態が軽い人への対策を尽くすことで重度化を防ぎ、認知症や寝たきりなどの予防につながります。症状が軽いというだけで、保険給付の対象から外し、安上がりの事業に委ねる今回の改定は本末転倒です。
東日本大震災で、被災者に必要な介護が行き渡らない実態が明らかとなり、介護保険制度の重要性があらためて浮き彫りになっています。
民商・全商連はこれまでも、国民すべてに行き届いた介護を供給することなどを求めて署名運動を展開してきました。高齢者が安心して暮らせる社会をつくる上でも、今回の改悪を許すことはできません。介護制度拡充めざす運動のさらなる強化が求められています。
全国商工新聞(2011年6月20日付)
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