自然エネルギーへ転換を
福島原発災害を契機として、エネルギー政策の根本的転換を求める世論と運動が高まっています。
今なお甚大な被害を広げる原発事故は、世界有数の地震国・日本において安全な立地場所など存在しないことを明らかにしました。取り返しのつかない失敗を繰り返さないためには、原発推進からの撤退しかありません。とりわけ、老朽化原発の運転を即時中止し、放射性廃棄物の再処理施設の閉鎖、プルトニウム循環サイクルからの撤退が不可欠になっています。
こうした一方で、持続可能な社会に向けたエネルギーの開発・普及に国民的関心が広がっています。生態系と共存できない原発の危険性に加え、二酸化炭素の排出を押し上げる石炭火力発電の増設が、世界に広がる地球温暖化対策に逆行することを多くの国民が知っています。多様な自然エネルギーの可能性が見直されているのです。
エネルギー政策の転換に向け、例えば、太陽光発電のみに適用されている固定価格買い取り制度は、すべての自然エネルギーで実施されるべきです。特に、現在も供給力の高い小水力発電などに適用されれば、効果は高いでしょう。また、千葉大学等の調査では、「再生可能エネルギーだけで地域の民生と農業用エネルギーをまかなえる市区町村が57」に上ります。自治体がその地域特性を生かし、風力や地熱、バイオマス、太陽光・太陽熱などの自然エネルギーを推進する施策も有意義です。そして国の多額に上るエネルギー特別会計を自然エネルギーの普及に振り向け、消費電力の高い都市がその財政を支援することも重要でしょう。
歴代政府が進めてきた「原発村」とやゆされる「政・官・財・学」の癒着は、今回の事故を教訓に打破しなければなりません。その際、原発の現場で働いてきた労働者や下請け業者の雇用と新たな仕事を確保するよう国が最大限の努力を払うことは当然です。
いま、広く国民に公開され、国民が積極参加できるエネルギー政策の確立への挑戦が始まっています。広範な中小業者が省エネや補修、電源開発も含め、その持てる力を発揮できれば、それは新たな時代に向けた一つの社会貢献といえるのではないでしょうか。
全国商工新聞(2011年6月6日付)
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