店舗・工場への直接支援の実現を
東日本大震災で、救援活動の広がりとともに復旧・復興対策の検討が始まっています。政府・民主党は今後5年間を「集中期間」とし、有識者らによる復興構想会議で、被災地の再生を具体化していくといいます。
菅首相は早速、山を削っての高台住宅建設や、植物・バイオマスによるエコタウンなどを提唱しています。しかしこれまでの行政主導の「街づくり」の多くが、大企業を中心とした「スクラップ&ビルド」へ住民の協力を強いるものでした。
復旧・復興のまちづくりは、何より被災者の痛苦の体験に心を寄せ、地域住民の総意に基づく復興のエネルギーを信頼したものであるべきです。今回の大震災の被災地の多くが、海岸沿いのさまざまな地形や気象の変化と共生し、地域資源を生かした農水産物加工や木材建築、食品製造加工を基幹産業としてきました。そして地震多発の日本にあって、防災や災害復旧への対処が、住民の相互扶助で行われ、住環境をはじめとした暮らしの基盤づくりも苦労と知恵の積み重ねで、進められてきたのではないでしょうか。
大切なのは、復旧・復興に地域の歴史も生かし、住民合意で震災・防災対策を総点検し、体験に即して強化していくことです。国はそれを徹底支援する立場に立ってこそ、耐震設計基準の見直しや観測・予知・避難の態勢、そして消火対策も実効性あるものになるでしょう。
こうした住民の発意を生かすためにも、被災者に対する生活再建の個人補償の拡充が第一義的課題です。阪神・淡路大震災以来、被災者を中心とした国民共同で被災者生活支援制度を創設・改善させてきましたが、住宅全壊でわずか300万円では、最低生活さえ保障できず、住民本位のまちづくりも成功しません。
さらにいえば、自営商工業の店舗や工場は、まったく支援の対象外とされてきました。営業と生活を一体とした中小業者の存在は、それ自体が街の荒廃を防ぐ「公共的役割」を担っており、その正当性を認めさせることが重要です。
地域に根ざす中小業者の再建で復旧・復興の確かな道を開くため、店舗・工場への直接支援を正面から要求しようではありませんか。
全国商工新聞(2011年4月18日付)
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