国民の期待に反する事業仕分け
来年度予算要求の無駄を洗い出す行政刷新会議の「事業仕分け」は17日、第一弾の作業を終えました。30兆円、447事業が対象にされましたが、46事業、総額1500億円にとどまっています。与党は「廃止」や「来年度計上の見送り」を求め、公益法人などが持つ15基金、総額7200億円超の国庫への返納を要請する構えで、「まず1兆円の財源を確保できた」と評価しています。
この仕分け作業は、全面的に公開され、少人数とはいえ会場で傍聴でき、さらにインターネットでも中継されました。そのこともあって国民の関心も高く、「よくやっている」との評価もあります。しかし、問題点も多いのが現状です。軍事費では1200億円もするヘリ空母、「ミサイル防衛」など主要な部分は除外し、広報など細かいところばかりを対象にしています。政党助成金、高速道路無料化など巨額で無駄な予算も対象外です。これで国民が期待した「無駄遣いの洗い出し」といえるでしょうか。
「『事業仕分け』はもともと小泉内閣の時代に『行政改革推進法』(06年)によって規定されたものであり、民間人の『仕分け人』には『小泉改革』を推進した人物も含まれている」(日本共産党市田忠義書記局長)との指摘もあります。
作業は、民主党の国会議員7人以外に民間人56人を起用。例えば厚生労働グループの福井秀夫氏は自公政権の規制改革会議・労働タスクフォースの座長を務めた人物です。また石弘光氏は庶民増税を推し進めた政府税調の会長でした。増税や規制緩和を推進した人物に、事業仕分けを行わせることは容認できません。
一方「廃止」とされたものにも国民から見れば納得できないものも少なくありません。例えば「子どもの読書活動の推進事業と子どもゆめ基金の約23億円が廃止されたのには驚きました。町の図書館は財政難から町民主体のNPOが運営しています。事業仕分けは無駄をなくす一方で、地方の子どもたちの読書の興味や体験の機会を取り上げることにならないか」(「朝日」17日付、声)と不安を広げています。
効率性の観点ばかりで現場の意見を反映しない乱暴なやり方は改めるべきです。また、「努力したが財源は十分つくれなかった。消費税の増税しかない」との議論の誘導は絶対すべきではありません。
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