高齢者の暮らし支える弁当宅配事業 一人ひとりの好みに調理
安否確認など地域のセーフティーネット
加田野さん(中央)と妹の直美さん(右)
群馬県高崎市で開催される第13回夏期研究集会(8月18日、19日)では、民主商工会(民商)の実践報告にも注目です。各地で地域の課題に応え、中小業者としてかけがえのない役割を果たしています。大阪・和泉高石民商の会員で「あーchaからぁげとねぇねのそうざい」を経営する加田野由美さんが高齢者の暮らしを支える弁当宅配事業について報告します。
補助金で導入した調理器。食材をきれいなまま軟らかくできます
「あーchaからぁげとねぇねのそうざい」は、お弁当宅配20年のベテラン「あーcha」こと加田野直美さんと、高齢者向け弁当の調理に携わり10年になる「ねぇね」こと由美さんの姉妹が設立した合同会社です。「弁当、総菜」部門と高齢者用弁当を宅配する「ねぇねデリ」の2部門からなります。
飲食関係の仕事をしていたものの体を壊し、継続が難しくなった由美さんに、妹の直美さんが「一緒にやっていかない? 自営業であれば姉さんの体の具合も見ながら助け合っていけるよ」と声を掛けたのがきっかけでした。
総菜メニューをLINEで流し
「ねぇねデリ」の弁当
手作り弁当は、ボリュームがあるだけでなく品数も豊富でリピーターの多い人気商品です。2週間分のお総菜メニューをホームページやLINEで流し、700円の商品から宅配もしています。
高齢者弁当宅配は「好き嫌い」や「あっさりしたもの」「少量で」など一人ひとりの嗜好や要望も聞き取った上で個人カードを作成し、具材の中身や大きさ、固さなど調理方法も一人ひとりに合せて調整しています。
見た目や風味を保って軟らかく
食品素材の中まで酵素を急速に浸み込ませる技術をつかい、従来不可能だった「食品素材の見た目や風味を保ったまま軟らかく」することができます。
嚥下障害があるからとミキサーなどで食事をペースト状にすると見た目も悪く「食欲もでない」という人でも「食が進むようになり、元気がでた」と喜ばれています。「ねぇねデリ」では、同時に安否確認も行い、ベッド脇のテーブルにまで届けたり、薬の時間のある人には飲み忘れないように声掛けもしています。
「配達時に『悪いけど、ゴミ出してくれない…』『洗濯を干して…』など頼まれ事もしばしば。時間の許す限り喜んで引き受けます。それがうちの強みですから」と由美さん。また、「今日も昨日も食べていませんでしたよ」とケアマネジャーに伝えることもあり、逆に、ケアマネさんから「○○さんの様子見に行ってもらえませんか?」と頼まれることもあると話します。
現在の宅配は約70世帯。高齢者の独居が増える中、「ねぇねデリ」は地域のセーフティーネットとして欠かせない役割を果たしています。
補助金を申請し移動販売に挑戦
今年度の補助金も申請中です。買い物に不自由を感じている高齢者も多いので、宅配をしながら食材の販売もしたいと考えています。移動販売車の購入に充てる予定です。
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