第16回商工交流会=おこしやす京都へ
第16回中小商工業全国交流・研究集会(商工交流会、10月31日〜11月2日)の開催まで2カ月を切りました。2年に1度開かれる商工交流会は、業者や研究者、自治体職員など幅広い人が参加し、多彩な運動、研究・政策活動を交流し、中小商工業の発展方向を明らかにするものです。後援・協賛団体は、西陣織工業組合をはじめ新たに加わった京都畳商工協同組合など過去最高の18団体。協力・共同の広がりの中で迎える商工交流会となります。
今回の商工交流会のメーンテーマは「地域の宝を生かし、新時代をきり拓こう―カジノ経済から育てあう経済へ―」。
森清範・清水寺貫主の記念講演はじめ、「極める」「広げる」「つくる」をキーワードにしたパネルディスカッション、四つの基礎講座に、「仕事おこし」「まちづくり」「下請け取引問題」「料理飲食」などを題材にした20の分科会と魅力ある企画がいっぱい。とくに移動分科会では「西陣と京町家」「京町衆の足跡と吟行」「京の水をたどる」「京・職人の技」をテーマにした「地域の宝探し」も盛り込まれています。
全国の参加者を迎える京都府実行委員会は8月5日、会場などの下見を実施、準備も万端です。
伊藤邦雄・京都府実行委員長は「今、政治も経済も大きなターニングポイントを迎えています。その変化を実感し、技術と運動を全国から持ち寄れる商工交流会にしたい。京都での開催は初めて。初日の全体会の文化行事には舞妓さんによる踊りもありまっせ。楽しみにしていて下さい」と話しています。
全国から参加を 磯谷吉夫 全国実行委員長
|
後援を決めた京友禅協同組合連合会に支援要請した商工交流会実行委のメンバー |
商工交流会は今回で16回目を迎えます。
世界的な経済の転換期に開かれる集会であり、開催場所は伝統的な産業が集積する一方、その衰退の危機が指摘されている京都です。
メーンテーマにあるように、地域の宝を生かし、新時代を切り開いていくこと、カジノ経済から育てあう経済を、どうつくりあげるかが問われているのではないでしょうか。
中小業者は構造改革路線の下で悲鳴を上げています。この集会を通じ、外需頼みの経済から内需主導の経済に切り替え、地域の隅々にまで活力が行き渡るような仕組みをどうつくるのか。また、雇用を創出し、確保してきた中小業者の役割にどう光をあてていくのか。ぜひ皆さんと研究したい、と考えています。
政権が交代し、業者が主人公になる政治への大きな転換期を迎えています。
今回の集会では清水寺の森清範貫主さんの記念講演をはじめ、めったに聞く機会のない話や企画が盛りだくさんです。皆さんが全国から参加されることを心からお待ちしています。
伝統文化の体験を 山崎清一郎 西陣織工業組合副理事長
京都には、経済産業大臣指定伝統的工芸品が14あります。西陣織もその一つで、織物としては日本一の規模ですが、地道な商売で日々、厳しい商いを続けております。でも西陣というブランドに誇りを持ち、責任感もある。大企業と違って、機屋、染屋などさまざまな業種のネットワークや技術が集積して成り立っている産地です。
今秋、「伝統的工芸品」の全国大会が京都で開催されるなど、さまざまなイベントが予定されています。商工交流会の開催とも重なるわけですが、こうしたイベントをきっかけに景気が少しでも良くなればと願っています。
商工交流会の移動分科会では、西陣織会館の見学も組み込まれています。会館では純国産絹工房も設置し、養蚕を見ていただくこともでき、爪掻本つづれ織の技法による「風神・雷神」の製織や、きものショーもあり、手織り体験などもできます。見るだけじゃない、京都をぜひ楽しんでください。
京都の技術をぜひ見て 磯垣昇 京都畳商工協同組合理事長
私たちも移動分科会「京・職人の技」に出展を予定しています。最近の畳は、ほとんどが機械縫いです。京たたみを手縫いできる畳職人もずい分と少なくなり、また畳床の材料も発砲スチロールに変わっている今では、稲わらを使った畳床は大変少なくなりました。畳文化が廃れていっているわけです。
伝統的な畳の技術は継承が難しいのですが、畳訓練校において少しずつ継承をしております。組合員のところには、全国から簡単な修理も舞い込むようになりました。
少なくなったとはいえ、京都にはまだまだ伝統的な技術が残されています。
商工交流会では、全国のみなさんに本物の技術をぜひ見てほしい。また、西陣織や染物などの伝統的な技術の集積の上に畳文化も築き上げられてきたことを知っていただければ、と思います。
知恵の経営学んで 石田哲雄 四条大宮商店街振興組合理事長
本物と出会える街―それが京都です。歴史の舞台、茶道・華道のお家元。各宗派本山、大学、伝統産業の結晶、芸舞妓、平安時代の建築物等々…。
京都では、地域・観光資源も見ていただきたいのですが、街を歩いて気づいていただきたいことがあります。それは安売りをする店や会社が驚くほどないということです。つまり、利益が高い高付加価値経営を行っているわけです。この経営が実現できる理由は、われわれが知的資産を有していることにあります。
知的資産とは、伝統、特許、ノウハウ、人材、ブランドなどを言いますが、京都では知的資産経営を「知恵の経営」と呼んでいます。つまり、京都の本物とは、われわれ京都人のことをいうのです。
商工交流会を通じ、皆さまと人脈という新たな知的財産を築くことができれば、と考えております。
多彩な企画で魅力満載
地域の宝「中小商工業」の時代を
第16回中小商工業全国交流・研究集会は分科会やパネルディスカッション、基礎講座など多彩な企画が満載。その魅力を毎号紹介します。1回目は全企画のテーマと助言者、報告者、コーディネーター、講師を紹介し、2つの分科会の魅力を助言者が語ります。
第3分科会 持続可能なまちづくりと地域商業の役割 和歌山大学準教授 足立 基浩さん
古くからある地域の商業施設は、単に購買するという目的以外にも多面的な都市機能・価値を有している。コミュニティーの場所であったり、いざという場合の拠点であったり、特に高齢化が進む街には必要不可欠な存在といえる。
そんな場所には市民の愛着が宿っている。こうした愛着を私は「センチメンタル価値」と呼んでいるが、市民の愛着によって育てられた街は観光的な魅力をも秘めている。
ヨーロッパの多くの都市には街角の商店街がなんともいえない温もりを宿し、観光客を魅了しているケースは多い。
そこに市民の生活の光が見えるからだ。21世紀は間違いなく少子高齢化に対応し、車に依存しない街、そして観光客を呼べるような街が求められる。そして、ヨーロッパではそうした都市構造を有した街を「持続可能な街」と呼んで都市の目標としている。
分科会で、そんな新しい時代のまちづくりと地域商業の役割を一緒に考えませんか?
第15分科会 カジノ経済と地域金融の課題 静岡大学教授 鳥畑 与一さん
「カジノ経済から育てあう経済へ」という集会テーマにぴったりの本分科会では、マネーゲームに奉仕する市場原理型金融改革が、日本の中小零細企業と地域経済の発展にいかに逆行してきたかをリアルな現場報告を通じて明らかにします。郵政民営化、政府系金融機関の統廃合、信用保証制度改悪など公的金融(政策金融)の弱体化の実態と本質が明確にされます。
今、自民党ですら「行き過ぎた市場原理主義とは決別すべき」と言います。しかし、「イノベーション」を遂げた中小企業など勝ち組優先の政策への反省は見られません。民主党も「地域金融円滑化法」等による中小企業支援策を主張しますが、「市場原理の貫徹」をうたった「基本理念・政策」はそのままです。
日本経済の真の担い手である中小零細企業を発展させる「育て合う金融」をめざして、岩橋(阪南大)、鳥畑(静岡大)を助言者に、多彩な現場報告をもとに、地域金融や制度融資のあり方や今後の方向性について深め合いたいと考えています。
|