「食の安全」めざして 農民連と協定を締結=全商連
「食の安全に関する協定」を交わした農民連の白石淳一会長(左から2人目)と全商連の太田義郎会長(その右)
全国商工団体連合会(全商連)と農民運動全国連合会(農民連)は10月24日、「食の安全に関する協定」を交わし、同日、都内で太田義郎全商連会長と白石淳一農民連会長による調印式が行われました。「より安全でより安心できるものを提供したい」との中小業者、消費者の願いに応えようと結ばれたもので、両氏は「運動をともに発展させよう」と固い握手を交わしました。
協定は、農民連の食品分析センター(注)と連携し、民商会員がこのセンターを利用する場合、検査費用を「一般価格から25%引き」とし、一方、全商連は同センター機器の導入募金に協力する、というものです。
調印式で確認書を交わした太田、白石の両会長は「食の安全を守り、経営の発展と共同のさらなる前進を図る大きな合意。さらにお互いの運動を発展させよう」と握手を交わしました。
調印式には、農民連の吉川利明事務局長と食品分析センターの八田純人所長が、全商連からは岡崎民人事務局長と中山眞常任理事が同席しました。
農民連食品分析センターとは
96年に農業者や消費者の募金で設立された。企業や行政などの影響を受けることなく独立して活動を行っている。ゲルマニウム半導体検出器、ガスクロマトグラフ質量分析、アミノ酸分析計、分光光度計などの分析機器を保有。これまで輸入小麦を原材料とした小麦製品からポストハーベスト農薬を、輸入レモンから防カビ剤を、輸入配合飼料から有機リン系農薬を、健康食品大豆プロテイン製品から遺伝子組み換えDNAなどを検出。福島原発事故後は、食品放射能汚染の検査を実施するなど、役割を発揮してきた。15年には食品中の遺伝子組み換えの混入率が測定できる機器やミツバチの大量死に大きな影響を与えているネオニコチノイド系農薬を検出できる機器を導入した。
全商連と農民連が結んだ「食の安全に関する協定」は以下の通りです。
全国商工団体連合会(全商連)と農民運動全国連合会(農民連)は、以下の合意事項に基づいて、「食の安全に関する協定」を結び、双方の運動発展をめざします。
一、全商連は、第52回総会方針に基づき、不当表示に対する監視を強め、食品の安全を確保する運動と共同を発展させる立場から、農民連が呼び掛けた食品中の遺伝子組換えの混入率が測定できる機器と、農薬をはじめ広範囲の分析が可能な新たな機器を導入するための募金運動に協力し、食品等の検査依頼運動に取り組みます。
一、農民連は、全商連が行う検査依頼運動に応えるため、農民連分析センターによる学習会などに取り組みます。また、全商連に加盟する県商工団体連合会の承認を受けた民主商工会会員が依頼する、残留農薬や、遺伝子組換え作物の混入割合の測定、放射能や重金属の分析、細菌検査、食品中の異物混入などの分析料金について一般価格から25%割り引くこととします。
2016年10月24日
全国商工団体連合会 会長 太田義郎
農民運動全国連合会 会長 白石淳一
地産地消強める力に
岡田民人(全商連・事務局長)に聞く
全商連が農民連と結んだ「食の安全に関する協定」の背景や今後の取り組みについて、全商連の岡崎民人事務局長に聞きました。
―全商連はなぜ「協定」を締結したのですか。
この「協定」は、農民連から提起されたものですが、全商連第52回総会方針・「私たちの要求」でも、「食品企業の偽装や不当表示に対する監視を強め、食品の安全を確保する」ことを掲げています。
この方針を実践するため三役会議でも議論を重ねた結果、「協定」の締結」を決めたものです。
この運動のより一層の推進と、TPP(環太平洋連携協定)に反対する共同行動の発展に大きく寄与すると、考えています。
―「食の安全」は、国民の大きな関心事です。
そうですね。ところが政府は、農産物の輸入自由化を進めると同時に、食品安全基準や残留農薬基準の緩和、BSE(牛海綿状脳症)検査の骨抜きなどを立て続けに進めています。
食の安全は、これまで以上に脅かされています。
TPPへの参加が決まれば、農産物や食品の輸入が拡大され、産地や遺伝子組み換えの表示など消費者が望む厳しい規制は、いっそう困難になるでしょう。東京電力福島第1原発事故による風評被害も収まっていません。
―消費者と直に接する中小業者の間でも「より安全・安心なものを提供したい」との意識が高まっています。
今回の「協定」はまさにそれに応えるものです。
農民連食品分析センターは、世界でもまれな企業や行政から独立した専門的な分析機関です。
これまでも輸入食品の残留農薬問題などを分析し、食品衛生法改定などの成果を上げてきました。放射能や土壌の分析なども実施していますが、今回、新たな分析機器を導入することで、食品・原材料の遺伝子組み換え混入率や広範な残留農薬の検査ができるようになります。
また、飲食店や食品加工業者向けの雑菌の検査、精肉や鮮魚、野菜、果物などを扱う業務別の検査も可能です。
―まさに身近なところから「食の安全」をアピールできるわけですね。
そうです。自ら扱う食品が遺伝子組み換えか、国産かどうかなどを確認し、検査結果を公表して消費者にアピールすることもできます。検査に取り組んでいる実績を積むことで、検査に訪れる保健所にも、店や作業場の清潔を保とうとする姿勢を示すことができます。
新たな検査機器導入のための募金に全商連が応じることで、民商会員は食品分析センターへの検査費用が「一般価格から25%引き」になります。
また、こうした専門的な分析機関とのつながりがつくられることで民商の魅力も増します。
この協定締結を力に、地産地消や農商工連携の取り組みを大きく広げたい。そして、食の安全を守り、経営の発展と共同のさらなる前進をめざしたい、と考えています。
全国商工新聞(2016年11月7日付)
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