一律に課金は乱暴 小規模店は免除に
全商連常任理事 勝部志郎
日本音楽著作権協会(JASRAC)が9日、BGMを利用しながら音楽著作権使用料の納付の手続きをしていないとして全国171事業者に対し民事調停を申し立てました。
かつてカラオケ問題でも利用許諾契約を締結していない業者に対し懲罰的な賠償請求を行うなど脅しまがいの契約締結を強要する問題が各地で発生しましたが、JASRACの権力的な体質は変わらず、「法的措置」という「脅し」が常とう手段になっており、かえって著作権のマイナスイメージを生んでいます。
BGMの利用に使用料を求めることは、カラオケ著作権以上に多くの問題があります。
第一は本来自由にできる私的利用が制限される恐れがあることです。本来CDを購入した人が自室だろうが車の中で聞こうが自由です。しかし、JASRACは、自室以外の店内で楽曲を流せば「利用許諾手続きが必要」と言います。清掃や仕込みをしながら聞いていても使用料が発生するというのは私的利用の制限です。そもそも第三者に「聞かせる目的」がないのですから対象にすべきではないでしょう。著作権で保護される「上演権・演奏権」は「著作物を公衆に直接見せ聞かせることを目的として、上演・演奏する権利」とされていることからも明らかです。
第二に著作権使用料徴収の対象を拡大しすぎると文化の発展を妨げかねません。「管理・支配し、そこから利益を得ている」とみなされる商業利用ならともかく、事業主が「自ら聞くために流すBGM」とは区別される必要があります。
第三にBGM利用料の設定は、合理性も根拠もなく、「取れるところからわずかでも取る」ということになっているのではないかということです。
JASRACは店舗面積に応じた年額利用料を設定しています(500平方メートルまで6000円。1万平方メートルまで1万円〜)。店舗等でのCDなどの再生はそもそも捕捉できないはずです。「楽曲の権利者にきちんと使用料が払われるなら納得するが、一律課金は乱暴」というのが多くの利用者の声です。
私たちは(1)利用許諾契約を必要とするBGM利用は、その利用により「利益も帰属」すると考えられる商業的施設に限ること(2)BGM利用料規定は、利用者・国民の合意の得られるようなものに改め、ガラス張りの徴収と分配の運営に努めること(3)小規模な事業者の負担能力にも充分配慮し、「店舗等の面積」が150平方メートル以下の施設は免除すること ― を求めます。
全国商工新聞(2015年6月22日付) |