全国商工団体連合会(全商連)は11月28、29の両日、東京・目白の全商連会館で第7回常任理事会を開き、次の決議を採択しました。
民主党政権に切実な要求実現を迫り、年間増勢をめざす拡大運動を
一、はじめに
第2回理事会から4カ月余が経過しました。
この間、歴史的な総選挙をたたかい、自公政権を退場に追い込み、新しい政治への第一歩を踏み出しました。
第9回全国会長会議を節目とし、政治の激動の中で「仲間を増やして要求実現」と奮闘してきました。
11・8国民大集会には全国から3万5000人が参加するなか、55万人分を超える署名が持ち寄られ、民主党政権に切実な要求を突きつけました。同時に開かれた「沖縄県民大会」では、新基地建設ノーの意思と怒りが改めて示されるなど、「政治を変えて要求を実現しよう」という世論と運動が大きく広がっています。
「地域の宝を生かし、新時代をきり拓こう」をテーマにした第16回商工交流会は西陣織工業組合や京友禅協同組合連合会など、九つの業界団体から後援や協賛が寄せられ、1500人の参加で大きく成功しました。「中小商工業の社会的役割に確信が持てた」と商売への意欲をかきたて、中小業者が地域経済の主役となる展望を広げました。
第11回全国業者婦人決起集会は、経営・暮らしの困難や嵐にも立ち向かう業者婦人の底力を示し、所得税法第56条廃止への確信を広げています。
全商連青年部協議会は、第34回総会を5年連続増勢で迎えました。
資金繰り支援を亀井静香金融担当相に迫るなかで、「金融円滑化法」の実施や「条件変更を行っても不良債権としない」方向でのさらなる金融検査マニュアル改定など、中小業者を不良債権扱いしてきた構造改革路線を修正する前向きな変化をつくり出しています。
経営と暮らしの危機が深まるなかで、固定費補助など直接支援の要求や「地域を支える中小業者の支援を」署名に期待と共感が広がっています。
来年5月には全商連第49回総会を迎えます。第2回理事会決議を堅持し、民主党政権に切実な要求実現を迫り、年間増勢をめざす拡大運動に奮闘しましょう。
二、中小業者の苦難と民主党政権の動向
政府がデフレを宣言する事態のなかで、中小業者の経営状況は好転せず、いっそうの苦難が襲いかかっています。「昨年秋から売り上げが8〜9割減少したまま」「家賃が払えず工場を追い出された」「厳しい取り立てを苦に自殺」など、各地で悲劇が続いています。
自公政権退場を願う国民の声を受けて誕生した民主党政権ですが、政策を具体化するなかで危険な側面が浮かび上がっています。
財源確保を急ぐ民主党政権は、生活関連予算の削減や庶民増税へと動き始めています。税金の無駄遣いを洗い出すという「事業仕分け」では、政党助成金や軍事費を対象から外す一方、自治体への交付金や医師不足対策費削減の結論を短時間で出すなど、強引な手法に懸念が広がっています。子ども手当の財源として扶養控除の廃止に加え、特定扶養控除縮小を打ち出しました。医療や福祉の充実よりも高速道路無料化を優先する姿勢にも批判が高まっています。
後期高齢者医療制度も「新制度に移行するには時間がかかる」と廃止を先送りしようとしています。日米首脳会談で鳩山由紀夫首相は「日米同盟の深化・発展」を表明し、普天間基地移設の結論を先延ばしするなど、日米軍事同盟から抜け出せず揺れ動いています。
また、日米FTA(自由貿易協定)の締結促進など、構造改革路線推進の姿勢も見逃せません。金融円滑化法と同時に実施される「条件変更対応保証」についても、「明らかに大銀行救済が目的」との声も上がっています。
民主党は、国会審議から内閣法制局を排除する「国会改革」で旧政権が手をつけなかった解釈改憲の拡大や衆院比例定数削減をめざすなど、平和と民主主義を脅かしています。
こうした政権の危険な動きの背景には、財界とアメリカの圧力があります。
一方、民主党政権は、生活保護の母子加算を復活させ、緊急雇用対策、肝炎患者救済を打ち出すなど、国民の要求を意識した政策推進を図るという政治姿勢も併せ持っています。
鳩山政権を国民要求の側に立たせるためには、中小業者・国民の運動が決定的に重要です。そのためにも、民商・全商連が困難打開の運動を前進させ、主体的な力量を大きくすることが求められています。
三、要求運動の重点
1、厳しい時こそ、声をかけあい、相談活動の強化を
厳しい経済情勢のなか、中小業者の経営存続がかかった年末、年度末を迎えます。
各地で中小業者の苦難が広がっているだけに、会員・商工新聞読者への訪問対話を強め「一人で悩まず、困っていることはなんでも話してほしい」と心から呼びかけ、「集まって、話し合い、相談し、助け合う」ことが大切です。
そして、地域の中小業者に積極的に声をかけ、困難打開に取り組む民商の姿と実績を知らせ、「なんでも相談会」の開催を強めます。
2、商売を続け、生きぬくための資金確保に全力を
中小業者にとって資金確保は最も切実な要求です。
「金融円滑化法」などの新制度が創設されます。そのことを契機に学習を推進し、「融資実現まであきらめない」構えをつくり、班や支部で力を合わせられるよう粘り強く取り組みます。
「金融円滑化法」は、返済猶予(条件変更)だけでなく、新規融資や借り換えなどの金融要求に対して、金融機関が相互に協調して応じる努力義務を負わせるもので、住宅ローンの返済猶予への対応も含まれています。金融機関は、融資の実行と謝絶の件数、謝絶理由など、対応状況を国に報告し、国がその情報を6カ月ごとに公表します。虚偽報告をした金融機関の従事者には1年以下の懲役または300万円(法人は2億円)以下の罰金が科せられます。
「条件変更対応保証」は、公的融資や信用保証協会の保証付き融資を利用していない業者に新たな保証を付けて返済猶予を受けやすくするものです。条件変更する金額の4割を保証協会が保証します。保証料率は最高の2・2%が適用されます。
新制度を実際の資金繰りに生かすためにも、金融機関や信用保証協会と懇談し、相談や申し込みへの積極的な対応を求めます。2010年3月末で実施期限を迎える緊急保証制度の継続と民主党が公約に掲げた「金融安定化特別保証復活」の実現を迫り、全業種対象の保証制度実現をめざします。融資制度の改善、保証料や金利の負担軽減を行うよう国や自治体に迫ります。
生活福祉資金貸付制度は私たちの要求が組み込まれ、保証人要件緩和、返済期間延長、金利引き下げ、利用限度額拡大などが行われました。大いに活用し、家族経営と生活を守ります。
全商連は「危機を生きぬく金融対策交流会」(1月28日、東京)を開催します。困難突破事例やこの間の経験を持ち寄り、年度末に向けた融資要求実現の運動と組織建設推進の力にします。
3、経営力強化と中小業者を支える施策の実現を
生活密着型の工事や防災、環境対策など、中小業者の仕事を増やす官公需施策や前倒し発注を自治体に迫ります。住宅リフォーム助成制度や小規模工事希望者登録制度をすべての自治体に創設・制度改善させ、受注に結びつけます。最低賃金の引き上げと中小業者の経営維持を保障する公共工事報酬確保法や公契約条例の制定をめざします。
第16回商工交流会の成功を力に、経営交流会や商売を語る会を開き、励まし合いながら経営力強化に取り組みます。
業者団体との協力・共同を強めて、地域経済振興の運動を推進し、環境・エネルギーなど新たな時代の要請に応える取り組みを進めます。
独占禁止法が改正され、製造原価や仕入原価を下回る価格設定に課徴金を課すことになりました。こうした公正な取引ルール改善の施策がより実効性あるものにするために奮闘します。
雇用と技術を守っている町工場の存続へ、固定費補助など直接支援を求める運動を強めます。中小業者いじめを防止する実効ある措置と大企業への徹底指導を国に要求します。新事業への挑戦や新製品開発への支援強化を国や自治体に求めます。
雇用安定助成金を積極活用し、使いやすくするよう改善させます。経営と暮らしを守るためにあらゆる福祉制度の活用を進めます。
「地域を支える中小業者の支援を」署名は、鳩山政権が掲げた前向きな公約を守らせ、緊急切実な要求の実現を迫るものです。全会員が署名運動に参加し、地域経済になくてはならない中小業者の役割を訴えながら要求をくみ上げ、1・27中小業者決起大会(全中連主催、日比谷公会堂)に結集します。署名推進の宣伝資料を運動に生かします。
4、庶民増税許さず納税者の権利確立を
「年金財源に消費税を」という民主党の公約を受け、政府税調での増税論議が始まっています。財界は「消費税率を引き上げ、法人税減税を」と身勝手な要求を掲げています。
世界的な富裕者増税の流れを広く知らせ、消費税減税を求める運動を強めます。自公政権が2011年までに消費税増税法案を成立させるとした所得税法付則第104条廃止を求めます。
また、低所得者対策として、一定の減税額を所得税から差し引き、課税されない世帯には減税分を給付する「給付つき税額控除」の実施を口実にした「納税者番号制度」の導入が狙われています。プライバシー侵害や個人情報の目的外利用など、「納税者番号制度」の危険性を知らせるとともに、庶民増税反対の世論を高めます。
人権無視の税務調査や徴収が国や自治体の財政悪化を背景にさらに加速しようとしています。「生きることが優先する」という権利主張と、その裏付けとなり経営対策にも役立つ自主記帳、自主計算運動を班・支部で推進します。納税の猶予など、「納税緩和措置」を積極的に活用し、違法・不当な差し押さえを許さない運動を強めます。
「納税者の権利憲章」を公約に掲げた民主党に早期実現を迫ります。
全商連第16回税研集会(1月16・17日、東京・大阪)では、民主党と新政権の税制改革の方向を分析し、「税制改革運動」の発展方向を探求します。
3・13重税反対統一行動(3月12日)の意義を話し合い、民主的な税制・税務行政確立の要求を押し出し、全会員の参加と共同を広げて成功させます。
所得税法第56条廃止を中小業者全体の要求として重視し、自治体決議をいっそう推進します。
5、差別医療を廃止し社会保障の充実を
後期高齢者医療制度を廃止して老人保健法に戻すなら、高齢者の負担を緩和し「特定健診」を元の基本健診に戻すなど、よりましな医療制度確立への新しい局面をつくり出せます。国保証の無条件交付と払える国保料(税)に引き下げる運動に取り組みます。
中小業者の健康破壊が進んでいるだけに、いのちと健康を守る集団健診や健康づくりの活動を全会員対象に強めます。
亀井金融担当相が「自主共済は保険業法の適用除外に」と指示するなど、新たな動きが出ています。自主共済を守るために、「保険業法を見直し、団体自治に干渉しないことを求める」署名を強め、共済会加入率80%を早期に達成するために全会員加入をめざして奮闘します。
6、憲法と平和を守り、核兵器廃絶をめざす活動
沖縄新基地建設問題は、民主党政権が従来型の日米関係から脱却できるかどうかの試金石となっています。普天間基地即時撤去、辺野古への新基地建設反対を求め、沖縄との連帯を強めてたたかいます。2010年は安保制定50年の節目の年であり、安保条約廃棄と米軍基地撤去の運動を強めます。
鳩山首相が国連総会で核廃絶の先頭に立つことや非核三原則を堅持することを明言し、9月の国連安全保障理事会が「核兵器のない世界の条件をつくる」とする決議を全会一致で採択するなど、核兵器廃絶の世論は世界でいっそう高まっています。「核兵器のない世界を」署名推進に力を入れ、1会員10署名をめざし、12月から4月までの毎月6〜9日を全国的な署名集中行動日に設定し奮闘します。2010年5月にニューヨークで開かれるNPT(核不拡散条約)再検討会議への要請・「核兵器のない世界のための国際行動デー」の日本代表団にすべての県から参加をめざします。3・1ビキニデーの成功に貢献します。
四、組織建設の重点
1、取り組みの前進面に学んで
この間、「増やしてこそ民商」の気概を持った民商建設に取り組んできました。
「拡大運動全国交流会」で民商の値打ちをどう押し出すかを実践的に交流し、また全国会長会議を拡大運動の結節点として奮闘するなか、10月は読者が2年ぶりに増勢に転じました。
討議を通じて、「民主党中心の新政権に切実な要求実現をどう迫るのか」を深め、確信にすることで、要求を掘り起こし、拡大運動の力にしています。「仲間が増えてみんな笑顔」(改訂)パンフや「拡大運動全国交流会」報告集を読み合わせ、討議することで、拡大運動の意義や定石を体得し、力を集中した拡大の独自追求を進めています。
資金繰りや納税の猶予、生活資金確保など苦難の解決を、拡大運動に結実させる意識的な努力を通じて、紹介運動を広げています。
激励訪問で会員に安心感を広げ、班・支部建設と配達・集金活動を生かして地域の結びつきを強めることで、退会や購読中止を減らし、仲間づくりを前進させています。
拡大運動と結び「地域で話題になる」宣伝活動に、知恵と力を集める努力も強めています。
こうした奮闘に深く学び、行動に結実させてこそ、「仲間を増やして要求実現」を本格的軌道に乗せることができます。
全商連第49回総会を視野に入れ、すべての民商が年末・年度末での会員・読者の増勢をめざし、「目標と計画」を充実させ攻勢的な組織建設を推進します。
2、民商の値打ちを押し出す拡大運動を
強大な民商建設こそ、切実な要求を実現し、中小業者の社会貢献に対する正当な評価を広げる力です。民商の値打ちを要求運動と組織建設一体で押し出し、力を集中した会員・読者の拡大運動に取り組みます。
年末、確定申告期、年度末という変化と流れに対応し、機敏な相談活動・要求解決を拡大に結実させます。お試し購読や攻勢的対話運動で「右手に署名、左手に商工新聞」を徹底し、民主党政権が公約する中小業者支援を実現するために奮闘する民商の姿を広く知らせます。
大量普及している「仲間が増えてみんな笑顔」パンフの読み合わせ、討議を機関会議から支部役員会へと広げ、メリハリをつけて統一行動に取り組みます。民商への相談内容や行動結果・反応を、ニュースで多くの会員に知らせます。
ハンドマイク宣伝や宣伝カーの運行など、「目に見え、音に聞こえる」大量宣伝を進め、「一人で悩まず、民商に」と一声かけてのビラ配布や紹介運動を強めます。
支部ごとの拡大行動を重視し、力持ち支部には「牽引車」の役割を発揮してもらうとともに、すべての支部が拡大成果で足並みをそろえられるよう、役員・事務局が援助を強めます。また婦人部、青年部、共済会の活動に配慮しつつ、民商の総合力を会員・読者の拡大に生かします。
年間増勢に見合った目標を持ち、年末までの成果を持ち寄って新春決起集会を開催します。
10年1月1日を起点に、毎週月曜日「週報」を12日から開始し、3月29日まで集約します。
3、商工新聞中心の活動強化と班・支部建設を
要求運動と組織建設を一体的に推進するため、商工新聞中心の活動と班・支部建設を会員が最も集まるこの時期に思い切って強めます。
商工新聞をよく読み、交渉や要請に生かすことで困難を打開する奮闘が広がっています。また機関会議や支部役員会の討議に役立てることで、情勢を深くつかみ、民商運動に確信を持って取り組んでいます。
読者を増やす活動は、民商運動を通じて中小業者・国民に団結する素晴らしさを伝え、地域を変えていく大志あるものです。配達・集金活動には根気や忍耐が求められますが、仲間を結びつけ、連絡網としても役立ちます。商工新聞中心の活動が、会員の自覚に支えられた班・支部活動と重なり合うなら、民商運動は大きく発展します。
12月1日で「基本調査」から半年になります。支部の「目標と計画」を充実させ、活動を通じて支部の役員体制を強化します。
制度学習や切実な要求での学習会・説明会を生かし、「運動しつつ学び、学びつつ運動する」なかで、相談員の育成に力を入れます。新会員には「私たちの民商」や「基本方向」を必ず手渡し、民商運動への理解を深めてもらう歓迎学習会を、講義の担い手も増やして定例化します。
4、組織運営の改善と事務局建設の強化を
経験したことのない経済危機を背景に、幾多の困難があるなかでの活動だけに、励まし合い、助け合える「元気な、あったか民商」づくりが切実に求められています。
討議を尽くして方針を決め、その実践に力を合わせられるよう、組織運営の改善に取り組みます。班・支部での助け合いを親身に援助することで会員の活動参加を広げ、月ごとの活動サイクルを確立します。
民商に寄せられる相談内容が複雑・困難さを増し、多岐にわたるだけに、今日的課題に応える事務局建設の強化も大切です。役員と事務局員が力を合わせ一緒に活動することで、要求ある者が運動の先頭に立てるよう請負を克服し、組織の拡大強化で困難を突破する姿勢を貫くという基本に立ち返って活動改善を進めます。
県連として、持てる力を最大限に生かせるよう、2人以下の事務局体制の民商への系統的な援助を強めます。民商運動の値打ちに確信を深め、また要求相談への対処や、組織者としての役割などが深く学び合えるよう、必要と条件に応じて、経験と知識を蓄積する事務局員の協力も得るようにします。
五、会員一人ひとりを大切に、年末・年度末の未収克服と財政活動の強化を
年末・年度末に向けて、会費や商工新聞代等の未収克服に全力を挙げます。会費の集金は仲間の心を集める活動です。未収になっている会員ほど困難を抱え、民商を求めています。未収会員への訪問のなかで、多重債務で悩んでいることが分かり、相談に乗って問題を解決し、元気を取り戻している例も生まれています。
年末を控え、経営と暮らしがいっそう厳しさを増しているだけに、すべての会員への訪問活動を強めます。
役員会で時間をとって、基本調査結果や未収克服の課題などを議論し、特別の体制をとって取り組みます。また、「5点改善」など財政活動の基本に立ち返り、具体的な改善策をもって取り組むようにします。
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