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  トップページ > 全商連の活動 > 全国商工新聞 第2900号 10月26日付
 
全商連の活動
 

新署名解説「地域を支える中小業者の支援を」


 全商連は総選挙の結果を受けて、鳩山内閣、民主・社民・国民新党3党連立政権に中小業者の要求実現を迫る、新しい署名運動を提起しました。その内容を解説します。

1 中小業者支援を国政の重要な柱として位置づけること

 (1)中小企業憲章を制定すること
 未曾有の金融・経済危機により、世界各国は、とにかくもうかればよいという経済のあり方は転換を迫られています。日本でも、大企業中心の外需(輸出)頼みの経済のもろさが、明らかになりました。
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「景気回復の実感なし」と語る中小業者(東京・大田区の製造業者)
 大銀行・大企業中心の経済は、雇用破壊や地域経済の衰退を招くことからも、見直しを求める声が高まっています。
 先の総選挙では、民主党が「中小企業憲章」の制定を公約しました。中小企業・中小業者は、全企業数の99%、従業者数の78%を占め、雇用確保や社会貢献を重視し、地域経済に利益を還元しています。
 地域に根ざして文化や伝統を支える一方、大量生産・大量消費型社会の限界を克服し、持続可能な社会の中心的な担い手です。
 こうした中小企業・中小業者の役割を明確にし、国と自治体に中小企業振興策を推進することを義務付ける、中小企業憲章の制定が必要です。

 (2)中小企業予算を1兆円へ増額すること
 09年度中小企業予算は1890億円で、一般歳出に占める割合は0・37%、中小業者1人当たり4万5000円にすぎず、抜本的に増額することが必要です。
 固定費補助など、中小業者の直接支援として、従業員20人以下の製造業者46万事業者に、月額12万円を支給するためには単年度で6640億円あれば可能です(全商連試算)。
 この直接支援のために、例えば、大企業製造業(資本金10億円以上)の換金可能な内部留保の2%を拠出させることができれば、国の負担は半額の3320億円で済み、中小企業予算の使い道をさらに拡充させることができます。
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 また、09年度中小企業予算のうち、中小企業金融対策795億円や下請け取引の適正化の推進7億円(下請代金検査官の増員など)をはじめ、経営力向上対策121億円、新分野への挑戦の応援321億円、商店街・小規模企業への応援186億円に相当する部分(合計1430億円)を上乗せすれば、全部で約1兆円になります(表1参照)。
 こうした予算を使えば、新署名に盛り込んだ要求の一定部分を実施することができます。

2 経済危機から中小業者を守るための施策を実施すること

 (1)大企業などの中小業者いじめを防止する法律をつくること
 民主・社民・国民新の3党連立政権は「中小企業いじめ防止法」の制定を打ち出しています。
 下請けいじめなど不公正取引を禁止する法改正・整備にあたっては、(1)違反行為が行われた場合の原状回復措置について、民事的救済制度の整備をはかる(2)「実損金額の3倍の賠償額及び弁護士費用を回復できる」(米・クレイトン法第4条)のように被害者に損害賠償請求権を与える(3)下請代金遅延等防止法の書面保存期間を5年に延長する(4)当面の運用改善として、「被害行為についての申告者」に審査結果と行政が講じた措置を速やかに報告する(5)「損害金額」の回復について行政指導を徹底する(6)審査対象の期間を1年から不法行為の請求権が継続する10年とするよう改善をはかる‐などを盛り込む必要があります。
 また、「下請中小企業振興法」振興基準に基づき指導・監督を強化することも重要です。

 (2)休業補償や固定費補助など、中小業者への直接支援を緊急に実施すること
 産業活力再生特別措置法(産活法)の「改正」によって、政府が日本政策投資銀行を経由して経営不振に陥った大企業に経営責任も問わず、返済も求めず出資するために2兆円の枠が用意されています。
 すでに、半導体メーカー(エルピーダメモリ)に300億円が投入されましたが、2兆円あれば国内の全中小製造業者に367万円を支給できます。
 また、政府は「失業給付を受けられない人などに職業訓練を条件に最大月額12万円の生活費を支給する」支援措置などを準備しました。これは中小業者も対象になることが明らかになっています(同制度は現在、新政権が凍結)。
 さらに、日本の食糧を支える農家には農業機械リース料の一部(リース物件価格の2分の1など)を補助する「食料供給力向上緊急機械リース支援事業」も実施されています。  こうした国策は、中小業者への休業補償実現につながる内容を持っています。
 エルピーダメモリ社への資本注入について二階経済産業相(当時)は「こういう大変な事態でありますから、あらゆる知恵を絞って、あらゆる対策を講じて、1社でも倒産の憂き目に遭うような企業を防ぎ、そして雇用を維持するということに全力を尽くしていきたいと思っております」(2月6日記者会見)と述べるとともに、「中小業者のものづくり技術力は、まさに日本の宝」と国会答弁しています(5月22日)。こうした認識を中小業者施策に反映させる必要があります。

3 資金繰り支援の緊急対策を講じること

 (1)全業種対象にし、審査の緩和を
 緊急保証制度は拡充されてきたとはいえ、いまだに全業種対象ではありません。
 しかも、「緊急保証申請企業の23・5%が融資減額、8・2%は審査通らず」(「帝国データバンク」6月3日発表資料)と指摘されているように、貸し渋りも後を絶ちません。
 経済危機下で中小業者の資金繰りを支えるためには、98年10月から01年3月まで政府が実施した「金融安定化特別保証」(特別保証)のように、全業種を対象とし、保証できない一定の審査基準(ネガティブリスト)に該当しない場合は原則として保証するという保証審査の緩和策を緊急に実施すべきです。

 (2)借り換えや元金据え置きへの積極的な対応を
 不況の長期化により、すでに借りている融資の返済が困難になるなか、新たな資金を必要とするケースもあります。
 全商連は「10年返済、3年据置」の制度創設を提起し、各地で運動が進むなか、29都道府県で「10年返済、据置2年」の制度が実施されました。こうした制度への借り換えは、月々の返済額を減らす上で有効です。
 亀井静香金融担当相が金融機関への元利払いを3年間凍結可能とする法案作りを表明しましたが、こうした施策の実現を急ぐべきです。

 (3)保証料・金利負担の軽減策を<br>  借り換えや条件変更をする際に、信用保証料が必要になります。そのため、新たに発生する保証料分の手持ち資金がなければ借り換えができないことになります(保証料の分割払いは可能)。
 また、借り手の負担軽減のために、東京都大田区や世田谷区などのような「ゼロ金利」融資を国の制度として実施させることも必要です。

4 納税者の権利を確立し、中小業者・国民の税負担を軽減すること

 (1)納税者権利憲章を制定すること
 税務署員が納税者を犯罪者扱いする税務調査の被害が横行し、営業と生活に欠かせない事業所や自宅、売掛金の差し押さえも後を絶ちません。
 これは、納税者を守り、税務行政における適正な手続きを定めた法規定「納税者権利憲章」が日本にないからです。「納税者権利憲章」がないのは、OECDに加盟する30カ国で日本だけです。
 全商連は92年、「『納税者の権利憲章』への提言」を発表、実現すべき13条を示しています。先の総選挙では、民主党が「納税者権利憲章」の制定を公約しました。
 納税者の権利を尊重する基本理念を明らかにし、税務当局の質問検査権に限界があること、生存権的な財産の差し押さえや徴収は禁止されることなどが、明確に示されるよう、世論を広げることが必要です。

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 (2)消費税率を引き下げ、免税点を3000万円に戻すこと
 消費税の税率引き下げは、消費者が買い物をすればするほど減税効果が実感され、庶民の消費が持続的に拡大します。内需再生のため、いまこそ消費税は減税すべきです。
 世界的な金融・経済危機の下、先進諸国は、大企業や大資産家への増税を財源に、消費税減税をはじめ、中低所得者への負担を軽減しています(図1参照)。
 消費税は小規模な業者ほど、転嫁が困難です。赤字でもかかる消費税は「食えば払えず、払えば食えない」中小業者つぶしの税金です。免税点の引き下げで、消費税の新規滞納発生は、大幅に増えました(図2参照)。
 免税点を3000万円に戻すのに必要な予算は4000億円、消費税収の3%に過ぎません(国・地方含む)。
 小規模な業者ほど、不況のしわ寄せを受けているいま、免税点の引き上げが待ったなしで必要です。

5 中小業者とその家族の健康を守る対策を講じること

 (1)直ちに後期高齢者医療制度を廃止すること
 75歳以上を別建ての保険に移し、保険料の限りない負担増を強いる後期高齢者医療制度の廃止法案を参議院で一度可決しています。
 老人を「うば捨て山」に追いやる世界に例のない後期高齢者医療制度の廃止は、3党連立政権の政策合意になっています。

 (2)子どもと75歳以上の医療費を無料にすること
 1973年から10年間、70歳以上の老人医療費は無料でした。
 最近、東京都日の出町と石川県川北町が75歳以上の老人医療費の無料化に踏み出しています。
 子どもの医療費は08年4月現在、中学校卒業まで助成する市区町村は外来で235あります。フィンランドでは、18歳未満は無料です。
 子どもを安心して産み育てるためには、医療費の無料化は不可欠です。

   
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