【談話】
テロ等を口実とした「共謀罪」法案の閣議決定に断固抗議する
2017年3月21日 全国商工団体連合会 事務局長 岡崎民人
安倍晋三内閣は21日、共謀罪法案(組織犯罪処罰法「改正」案)を閣議決定した。憲法改悪の野望をあらわにし、民主主義と基本的人権を踏みにじる法案の閣議決定・国会上程に強く抗議する。
共謀罪法案は第1に、「話し合う」という民主主義の根幹を否定し圧殺するものである。犯罪を計画段階で処罰できるようになり、実行後の処罰が原則の日本の刑法体系が激変する。複数での「話し合い」を「共謀」と警察権力がみなせば監視・取締りの対象にされかねない。憲法19条、21条、31条が定める市民の内心の自由、言論・表現、結社の自由を侵害する案は廃案にすべきである。
第2に、市民の「テロ」への不安に便乗して共謀罪を正当化することは許されない。多国間で組織犯罪の捜査情報を共有する国際組織犯罪防止条約締結のための法整備と政府はごまかしているが、同条約はテロ防止目的の法律ではない。マフィアなど越境的犯罪集団の犯罪防止のための条約であり、共謀罪を創設しなくても同条約は批准できる。
第3に、共謀罪法案は監視・密告社会をつくる。「話し合い」を犯罪対象とすれば、情報を集める目的で一般市民を監視するため、警察権力の活動が強化される。電話やメール・ラインなども対象とされる。司法取引・密告による「共謀」立証が行われるようになり、えん罪が起きる危険性がある。
第4に、戦前の治安維持法に匹敵する危険な法案である。法案は、刑法をはじめとした277の現行法を対象とする。犯罪前提の「話し合い」・「準備行為」があるとされれば、関係者を一網打尽にできる。その中には所得税法、法人税法、消費税法、道路交通法、著作権法など、中小業者の営業に関わる重要な法律も含まれている。組織的犯罪集団かどうかは捜査機関の判断に委ねられており、民主商工会などの市民団体・運動の抑圧・弾圧につながる危険を払しょくできない。「節税対策の話し合い」も対象にされる危険性がある。
第5に、今国会では、国税通則法の大改悪も並行して進められている。強権的な税務調査が横行しかねず、重税に反対する運動そのものが「扇動」の罪に問われかねない。個人の尊厳を守る立憲主義の立場を投げ捨て、納税者の権利憲章の制定を拒みながら、弾圧立法を創設するなど断じて許すわけにはいかない。
民商・全商連は共謀罪の危険な狙いを広く知らせ、法案阻止へ全力でたたかう。そして、立憲主義の回復・安倍政権の退陣を求め、広範な人々と力をあわせて奮闘する。
以上
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