全商連第1回理事会決議
歴史的転換期に打って出て要求運動と組織建設の一体的前進を
2016年9月4日
全商連第1回理事会決議
一、情勢の激動と民商・全商連の立場
この間、「戦争する国づくり阻止、政治の転換をめざして全会員参加でたたかおう」と、第52回総会の特別決議に基づき、日本の進路に関わる重要な政治戦をたたかってきました。
参議院選挙の結果は「立憲4野党プラス市民」の共同の広がりを通じて、1人区の統一候補が11議席を獲得し、日本共産党が6議席へと倍増させました。しかし一方で、自公与党とおおさか維新(現、日本維新)などの改憲勢力が3分の2を占め、予断を許さない事態です。
民商・全商連は今回の政治戦で、(1)消費税増税を中止し応能負担の税制に、(2)軍拡をやめ社会保障充実へ、(3)大企業応援の「アベノミクス」ではなく循環型の地域経済政策を、(4)TPP(環太平洋連携協定)阻止、「原発ゼロ」へ、(5)「戦争する国」ではなく「防災・減災の国」づくりへ、と「5つの転換」を訴え、野党統一候補との懇談・要請で切実な要求の一致点を広げながら奮闘しました。この中で、10%への消費税増税を再延期に追い込むとともに、安倍暴走政治の矛盾が集中する東北5県や沖縄選挙区などでの野党統一候補勝利に貢献したことは重要です。
いま、憲法9条を焦点に、戦争か平和かをめぐる「歴史的転換期」のせめぎ合いが強まっています。自民党の改憲草案を土台とした明文改憲や、テロを口実にした「共謀罪」の創設、国民の最低生活さえ圧迫する過酷な徴税と社会保障の解体、大企業のもうけ口を拡大する構造改革と経済の軍事化を断じて許すことはできません。
参議院選挙で広げた「共同の議席」とともに、東京都知事選挙などでの「野党共闘」の発展を、今後の要求実現に生かすたたかいが強く求められています。
「平和でこそ商売繁盛」の信条を生かして、戦争法廃止・立憲主義回復の世論と運動を広げます。「税金の在り方と使い道」を根本から正すたたかいを強めて、個人の尊厳が守られる政治の実現をめざします。「営業の自由」が実質的に保障されるよう、要求実現の道筋を明らかにする政策提案活動を多彩に発展させ、中小業者の生きる道を開きます。
全商連創立65周年にふさわしく、「団結こそ宝」として、転換期に打って出る強大な民商・全商連の建設に挑戦します。
二、要求運動の重点
臨時国会では、消費税増税再延期の関連法案や、新たな経済対策を含む第2次補正予算案、TPP承認案などが審議されます。TPP・消費税・マイナンバー(共通番号)・憲法の署名推進リーフなどを活用し、「右手に署名、左手に商工新聞」で打って出ます。すべての県連が「集中宣伝週間」を計画し、安倍政権打倒・悪政転換をめざします。
全国中小業者団体連絡会の幹事会・省庁交渉(9月16日)に要求を持ち寄り、多彩な成果を秋から春に向けた運動の発展に生かします。
1、全自治体要請と業種別・問題別対策を
TPP承認案が重大局面を迎えます。TPPは農産物だけでなく、工業製品やサービス、政府調達、著作権、投資や金融、食の安全、労働、地域振興策などあらゆる分野に及びます。多国籍大企業と投資家の莫大な利益を保障するために、国の経済主権や地方自治を破壊する亡国の多国間協定を断じて認めることはできません。
安倍政権が掲げる「地方創生」は、特区制度で大企業への市場開放を進め、「世界で一番企業が活躍しやすい国」にするものです。28兆円超の経済対策もリニア新幹線への巨額な公的資金投入など浪費型の公共事業による大企業へのバラマキが中心です。
TPP阻止をはじめ持続可能な循環型社会づくりへ、自治体への働きかけが急務です。行動参加を広げ、支部の力も引き出しながら、全自治体要請に取り組みます。
小規模企業振興条例の制定とともに、「地方版総合戦略」に中小業者支援策を盛り込むよう迫ります。公契約条例や住宅・商店版リフォーム助成制度を要求し、単価引き上げや仕事おこしに生かします。
風俗営業法をめぐる警察の立ち入りが各地で相次ぎ、「お酌して罰金100万円」「廃業に追い込まれた」など、料飲業者の苦悩が広がっています。建設業界では、国土交通省が元請企業に対して社会保険未加入事業者を現場から排除するよう「指導」を強め、一人親方にまで社会保険の加入が強要されています。「営業の自由」を脅かす官僚的規制や制裁行政の実態を調査・告発し、県や省庁に是正を迫ります。
相談が増えている一人親方事務組合への加入への対応を強めます。「社会保険・安心加入リーフ」で応能負担に反する社会保険制度の実態を告発し、過酷な徴収から実利実益を守ります。
141万もの中小企業者が利用する信用保証制度の部分保証拡大に反対し、業界団体や金融機関と懇談します。新たな借り換え保証や自治体の制度融資を活用し、資金繰りの悩みに応えます。
仲間とともに「事業計画」や「経営力向上計画」を策定し、国・自治体の補助金獲得に挑戦します。
被災地での営業再建や原発被害の完全賠償、原発ゼロをめざします。
2、消費税再増税と社会保障改悪を阻止し、納税者の権利擁護を
消費税廃止各界連絡会や民商の粘り強い運動は、自民、公明、民主(現・民進)の3党合意を崩し、10%への消費税率引き上げを再延期させました。一方で、「税率引き上げができなければ社会保障の充実はできない」など、国民をあざむく悪宣伝が広げられていることは重大です。
大企業・富裕層の税逃れや5兆円を超す大軍拡予算を削減すれば、消費税の減税や社会保障の充実は実現できることを広く知らせます。複数税率が不公平を拡大して煩雑な実務負担を押し付け、インボイス(適格請求書)制度の導入が免税業者の取引排除につながることを告発し、実施中止を迫ります。
倉敷民商弾圧事件での裁判闘争を通じて、納税者の自覚と責任に基づく自主申告運動には、いかなる権力も介入できないことを明確にさせました。「上告趣意書パンフ」を読み、討議し、納税者の権利と自主申告運動への確信を深めます。「誰でもできる小法人の決算・申告パンフ」や「自主計算パンフ」を使って、実践的に学び合う機会を増やします。
事前通知もしない違法・不当な税務調査が横行しています。税理士法を悪用した権力の介入を許さず、機敏に反撃します。拡充された納税緩和措置の活用を進め、徴収行政の横暴を是正します。
75歳以上の病院窓口負担の引き上げ、生活保護の母子加算切り捨てなど社会保障の大改悪は許せません。「要支援・要介護」認定者の65%超を訪問介護や通所介護の保険給付から外す「国家的詐欺」を許さない世論と運動を強めます。
国保料(税)の引き上げと徴収強化につながる国保の都道府県単位化に向けて、10月には市町村に「標準保険料率」などを算定するソフトが配布されます。「国保料(税)は所得の1割以内に」などの願いに応え、負担軽減を求める運動を強めます。社会保障の充実をめざし、社会保障推進協議会などとの共同を広げます。
来年の確定申告書にはマイナンバー記載欄が設けられます。マイナンバーの対応に悩む中小業者に「記載がなくても不利益はない」という政府・省庁の回答を知らせ、制度廃止をめざします。
3、改憲と新基地建設に反対し、核廃絶の世論と運動を
安倍政権は、参議院選挙で改憲の争点化を徹底して避けながら、秋の臨時国会で憲法審査会を開こうとしています。憲法9条を壊す「国防軍」創設や「緊急事態条項」創設による国会機能と基本的人権の停止など断じて許せません。
南スーダンへ派遣されている自衛隊に、11月から戦争法に基づく「駆けつけ警護」や「宿営地の共同防衛」などの任務を追加し、武器使用権限を拡大する動きを見逃せません。自衛隊員を海外で「殺し、殺される」事態に巻き込む現実的な危険性を知らせ、撤回させる取り組みを強めます。
戦争法の違憲性や自民党改憲草案の危険な中身を広く告発し、4野党が掲げた「安倍政権の下での憲法改悪を許さない」との1点での共同を広げます。
「中小業者こそ平和産業の担い手」と自覚を高め、産業の軍事化に反対します。国民の平和的生存権や個人の尊厳を守るため、憲法を徹底してたたかいに生かします。
安倍政権は、参議院選挙投票日の翌日、住民らを強制的に排除して、東村高江・米軍ヘリパッド(着陸帯)への建設工事用資材搬入を強行するなど、民主主義破壊の暴挙を続けています。強権・独裁・無法の限りを尽くす悪政に対して、「命(ぬち)どう宝」と奮闘する「オール沖縄」への全国支援を強め、辺野古新基地建設工事の再開や在日米軍基地の再編・強化を許さない世論と運動を広げます。
核兵器のない世界を実現するための法的措置を議論してきた国連の作業部会が、核兵器禁止条約交渉の会議を2017年に招集することを国連総会に勧告し、米国オバマ大統領が被爆地広島を初めて訪問するなど、核兵器廃絶は世界の大きな流れになっています。原水爆禁止世界大会の成功を力に、2020年の核不拡散条約(NPT)再検討会議に向けて「ヒバクシャ国際署名」を世界数億人規模で集めることが呼び掛けられました。核抑止力論にしがみつく安倍政権の態度は断じて許せません。唯一の被爆国にふさわしい役割を果たすよう厳しく迫ります。
三、組織建設の重点
参議院選挙などで切実な要求と政治を結ぶ対話運動を展開し、共同と団結を強めてきました。さまざまな集まりで、商工新聞から政治戦の争点や意義、要求実現の展望を学び合うとともに、一人ひとりの国民が主権者として選挙権を行使するよう、身近な結びつきも生かして働きかけてきました。
「野党プラス市民」の共同への貢献で広がる民商・全商連への期待と信頼に応え、「仲間を増やして悪政に反撃」のたたかいを推進します。今年12月末を、必ず第52回総会時現勢(読者で24万5936人、会員で18万190人)の突破で迎え、会勢を前進の軌道に乗せるために全国の力を結集します。
1、地域を舞台にした対話運動と相談活動の強化を
打って出る宣伝・対話で、潜在化する要求を掘り起こします。
転換期に民商の「値打ち」を押し出すため、「目に見え、音に聞こえ、口コミで話題となる」大量宣伝が不可欠です。知恵と力を集め、チラシ・ポスターや立て看板、バスやタウン誌への広告、宣伝カーの運行やSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の活用などに取り組みます。
また、国税・地方税や社会保険料の過酷な収奪に加え、「営業の自由」を奪う制裁行政が猛威を振るう一方で、「商売を伸ばしたい」という意欲に応えた「法人のメリット・デメリット」相談などが大きな反響を呼んでいます。焦点となる要求を具体的に解決する相談会・説明会・学習会を広く呼び掛け、民商ならではの相談活動に導くことが大切です。
商工新聞から全国の多彩な経験に学ぶとともに、会内外の相談内容を系統的に機関会議で分析・検討します。成果がみんなのものとなるよう、商工新聞・宣伝紙や実績パンフ、ニュースで広く知らせ、「相談できる仲間がいる」という確信をみなぎらせます。
全商連は、権利主張の根拠を明らかにする相談活動を通じて仲間を増やす力を抜本的に高めるため、10月初旬に構え大きく、「相談活動・拡大運動全国交流会」を3会場(東京、兵庫、宮崎)で開催します。すべての民商からの参加を追求し相談活動を強化し運動の継承・発展にも生かします。
2、会勢を前進の軌道に乗せる持続拡大の推進を
総会方針を堅持し、読者前面の拡大と毎月の会員拡大を追求します。
多彩な一点共闘の一翼を担うとともに、仲間を増やす取り組みを第一義的課題として推進してこそ、中小業者の生きる道を切り開き、民商・全商連の社会的使命を果たすことができます。
「世論と運動で政治を動かす」という大志を培い、読者前面の拡大に取り組みます。読者を増やして悪政への警鐘を響かせ、権力の横暴を是正し、暮らしと平和に貢献する施策を広げます。
「仲間増やしは会員本来の願い」であることに確信を深め、すべての民商が毎月の会員拡大に挑戦します。月初めに会長と事務局長が「今月はどう会員を増やすか」を相談するとともに、月サイクルの活動を確立し、「減らさず増やす」持続拡大へと発展させます。
すべての民商が8月末現勢に基づき、会勢を前進の軌道に乗せる「目標と計画」を充実させます。
「地域にどんな民商をつくるのか」の議論を深めるとともに、経済センサス調査の結果動向を分析し、地域の特性や業種構成、申告形態別組織率なども明らかにして、要求運動と組織建設の一体的な推進を図ります。
「仲間が増えてみんな笑顔」パンフに学び、拡大運動がすべての民商の体質となるよう、県連として連帯感ある拡大統一行動や、取り組みの前進面を学び合う機会を設けるようにします。
3、学習を軸に班・支部活動と商工新聞の活用を
方針学習推進の「特別期間」を生かして、連合会組織への確信を深め、会員主人公の班・支部活動を計画的に強めます。
幹部学校では、総会方針の全面実践へ、役員と事務局員が「共同の運動の推進者」としての役割を担っている自覚を高め合います。班長や支部役員の学習機会を増やすとともに、身近な助け合いを強めて班・支部への会員所属率を本気で高めます。新会員歓迎学習会を増やして班・支部の仲間に迎え入れるとともに、「入ってよかった。よかったことは人にもすすめよう」の気風を広げます。
全商連は、創立65周年を記念して、全国会長会議を2017年2月初旬に開催します。また、第52回総会方針学習DVDと「写真で見る民商・全商連の65年」を作成します。役員会や班・支部のさまざまな集まりでDVDを視聴するとともに、写真史からたたかいの歴史に学ぶようにします。
商工新聞中心の活動への全会員参加を追求します。紙面を紹介し合い、読者拡大への活動参加を増やします。また、配達の際にひと声かけて民商への理解や署名運動への協力を広げ、確実な集金で会員としての自覚を高めて民商・県連・全商連の統一的な財政強化に役立てます。双方向の通信活動が充実するよう仲間を励ます民商ニュースづくりに挑戦し、商工新聞の紙面を充実させます。
「基本調査」の結果と検討課題に基づき、拡大を基点とした活動改善を進めます。
四、総合力発揮への拡大・強化
集団健診を広げて互いの健康を気づかい、心を込めた慶弔見舞を届けてきた共済会の活動が、民商・全商連の魅力を高めています。2度目となる全商連との連続総会を成功させ、全国の奮闘で会員加入率80%を超える県連共済会が約半数となりました。7年ぶりとなる規約・運営規定の改正で、75歳以上の加入者制度を改善するとともに、加入時の免責期間を短縮し、集団健診活動助成金を増額したことが大いに歓迎され、助け合いの輪を広げる力となっています。
すべての民商が共済会と力を合わせ、大きな構えで集団健診に取り組み、未受診者ゼロをめざします。配偶者や家族の健康にも気を配り、班に共済係、支部に共済役員を増やして「目くばり、気くばり、心くばり」を強めます。全会員加入へ、入会時の同時加入や未加入者への働きかけを強め、すべての民商・共済会が会員加入率80%を早期に達成します。保険業法やTPPによる自主共済への不当な干渉を許さず、「より民商らしい共済」を追求します。
全婦協はこの間、戦争法廃止や消費税増税中止で、女性の感性も生かして運動発展に貢献するとともに、所得税法第56条の廃止では、自治体請願採択を広げ、国連女性差別撤廃委員会による日本政府への勧告も引き出して、粘り強くたたかってきました。
暮らしと商売を守り家族も支えて頑張る業者婦人を励ますとともに、あふれる胸の内を語り合って力と心をひとつにできるよう、強く大きな婦人部建設を援助します。
業者婦人実態調査や婦人部組織調査の結果報告を、婦人部の要求運動と組織建設に生かします。戦争法廃止や女性の地位向上をめざす市民運動の広がりも視野に入れた取り組みを応援します。
第14回全国業者青年交流会の成功を力にして、業者青年に魅力ある民商建設と青年部の拡大・強化を援助します。「18歳選挙権」も実施され、青年世代の政治への関心が高まる中で、民商青年部が戦争法廃止や大阪都構想阻止、憲法擁護の青年運動の一翼を担っていることは重要です。より若い世代との結びつきを強めつつ、独立自営の道を選んだ若者たちを民商の仲間に迎え入れていくためにも、民商青年部・全青協の建設が欠かせません。
読者・会員の拡大や共済加入とともに、10月の全婦協総会に向けた10万人婦人部建設、11月の全青協総会を結節点にした1万1000人青年部建設をめざして、総合力発揮への拡大に取り組みます。
五、財政活動の改善・強化
「基本調査」結果は、商工新聞紙代、会費、共済会費いずれも多額の未収が残されており、その克服とともに、未収を生まない組織づくり、請負活動の克服などが焦眉の課題であることを示しています。
すべての民商・県連で「基本調査」から実態をリアルに認識し討議を深め、役員と事務局が団結して財政活動の改善に取り組みます。
全会員訪問を強め、会費を払えない会員に心を寄せて仲間意識を高め、助け合いを強めます。
同時に、民商の財政は会費と商工新聞紙代が中心であり、一人ひとりの支え合いによって運営していること、県連、全商連は連合会組織として、加盟している民商の拠出によって成り立っているなど、財政活動の重要性を多くの会員に知らせます。
「財政活動の5点改善」を堅持し、「15日集金」など月サイクルの活動を確立し、未収を生まない組織づくりを進めます。
旺盛な要求実現活動と組織建設を強めるため、積極的な財政計画を立て運動募金を訴えます。
(以下略)
全国商工新聞(2016年9月12日付) |