【声明】
全国商工団体連合会は2月22日、以下の声明を発表しました。
消費税と「軽減税率」の中小業者・地域経済に与える影響を十分に検証し、「所得税法等の一部を改正する法律案」の廃案を求める
2016年2月22日 全国商工団体連合会 会長 国分 稔
第190国会で「所得税法等の一部を改正する法律案」の審議が始まり、2017年4月予定の消費税10%への増税と同時に、一部の品目を現行税率の8%に据え置く「軽減税率(複数税率)」を導入することが議論されている。しかし、このまま増税がされ複数税率も導入されれば、多くの中小業者は営業存続の危機に直面し、ひいては地域経済にも深刻な影響が出ることが懸念される。制度導入については慎重に慎重を重ねた上に審議し、その影響について十分に検証すべきである。
複数税率制度の一番の問題点は2021(平成33)年4月から、「インボイス(適格請求書)」制度が導入されることである。インボイスは中小業者に膨大な事務負担を要求するだけでなく、複数税率に対応するための新たな設備投資や人件費などの経費増を強要することにもなる。ましてや、消費税を転嫁できずに「損税」となっている中小業者は6割にも上り、「益税」を理由としたインボイス採用には道理がない。そればかりか、インボイスを発行できない約500万事業者と推測される免税事業者は、売り上げ確保を目的にしてあえて課税業者となって消費税負担を覚悟するのか、売り上げ減少を我慢するのかの深刻な選択を迫られ、いずれにせよ廃業を余儀なくされる状況に追い込まれる。
2月15日の衆議院予算委員会では麻生太郎財務相がインボイス制度で業者が商売を続けられなくなる問題で「そういった(廃業の)例がないとは言わない。一つや二つあったとか、百あったとか千あったとか、いろいろ例が出てくる」「別に驚くことはない」と答弁した。中小業者の苦しみを切り捨てる非道な姿勢であり、政府・与党は短時間の審議で法案を成立させることを狙っているが到底容認することはできない。
そもそも消費税は、低所得者ほど負担が重い不公平な最悪の大衆課税である。生活費非課税、応能負担というあるべき税制の原則からすれば「消費税廃止」にこそ、道理がある。今、必要なことは複数税率導入の議論ではなく、消費税率を8%に引き上げた後、経済が大きく低迷している実態を踏まえ、この経済状況で消費税率を10%にした場合の影響を国民目線で真剣に検討することである。また、軽減税率の導入を審議するに当たり、事業所数の6割以上を占める免税業者を取引から排除するようなインボイス制度導入を強行すれば、地域経済への打撃ははかりしれないことを十分に時間をかけて検証すべきである。
「所得税法等の一部を改正する法律案」を廃止にし、消費税増税を中止し、真の景気回復策を講じることを求めるものである。
以上
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