全商連第51回総会方針(案)下/用語解説
四、大増税路線を打ち破り、民主的な税制・税務行政を
▼改悪国税通則法
2011年12月、国税通則法が改悪(施行は13年1月)されました。帳簿などの「提示・提出」「留め置き」、修正申告の勧奨、さらには事前通知の例外規定、更正決定などの期限延長や再調査が盛り込まれるなど、課税庁の権限が格段に強化されるものになっています。
しかし、私たちの運動で「(帳簿書類の提示・提出は)本人の承諾を得て。罰則をもって強制しない」などの国会答弁をかちとってきました。
▼事前通知
国税通則法(第74条の9)は、調査を開始する日時、場所、目的、対象となる税目、期間、帳簿書類その他の物件など11項目を事前通知することとしました。一つでも欠けると適正手続きに違反し無効です。
書面による事前通知を求めるとともに、口頭の場合でも調査当日は事前通知通りかどうか確認することが大切です。
また、常識的な日時、場所などの変更は十分可能です。
例外規定(第74条の10)で事前通知がない場合は、理由開示を求めましょう。
▼お尋ね文書の乱発
国税庁は、実地の調査以外は事前通知が不要とし、納税者に来署を迫るお尋ね・呼び出し文書を乱発しています。「行政指導」と明記しながら、「応じない場合は調査を実施する場合があり」などと脅し、帳簿や印鑑を持参させて修正申告を迫る事例や、さらには「調査する」ので来署せよと呼び出すなどの事例が相次いでいます。行政手続法や国税通則法にも違反するもので、従う必要はありません。
▼納税緩和措置
納税緩和措置は納税者の権利、営業と生活を守るため、税金や国保料(税)などの支払いが困難なときに、法律に基づいて納税や滞納処分を緩和する制度です。(1)納税の猶予(2)換価の猶予(3)滞納処分の停止があります。
納税の猶予が認められると、最長2年間の納税が猶予され、差し押さえの解除申請ができ、延滞税が減額・免除されます。換価の猶予が認められると、最長2年間の猶予期間の延滞税が半分免除となり、差し押さえられている財産は公売にかけられません。
納税不能のときは、「滞納処分の執行停止」を求めることができます。執行停止が認められると、3年後には滞納が消滅します。
▼児童手当の差し押さえは違法
差し押さえ禁止財産である児童手当を差し押さえた鳥取県に対し、鳥取地裁は2013年3月29日、県税の滞納分に充当したのは「正義に反する」と断罪。広島高裁も同年11月27日に違法と認定し、県が上告を断念したことで判決が確定しました。
その後、県知事が謝罪し、滞納整理マニュアルの見直しが行われました。(1)預金の差し押さえを執行するときに預金履歴を原則3カ月確認する(2)差し押さえ禁止財産を含む場合は、その金額を控除して差し押さえをするなどの内容です。
▼「納税者の権利憲章」(第2次案)
「納税者の権利憲章」は、憲法に基づき、課税・納税手続きにおける納税者の権利を、制度的に保障するための基本法ともいえるものです。
全商連は2010年11月28日、「納税者の権利憲章」(第2次案)を提案しました。1977年に発表した第1次案(13項目)をさらに発展させ、この間の情勢の変化にも対応しつつ、調査と徴収、不服審査から裁判にいたるまでの税務行政のあらゆる場面に適正手続きを貫き、人権を保障し、強権的な徴税行政に歯止めをかけることを求めています。
▼生活費非課税、応能負担原則を貫く税制
税金は能力に応じて負担し、支払った税金は全額、社会保障や福祉に使われるべきです。実際に税負担を受け持つことができる能力(=担税力)の少ない勤労者、中小企業には軽く、大資産家や大株主、大企業には重く、課税すべきです。また、憲法25条に基づき、健康で文化的な最低限度の生活を保障するため、最低生活費には課税すべきではありません。
担税力に関わりなく、生活必需品にも課税する消費税はやめ、所得税、法人税など、直接税の税収を増やすべきです。
▼所得税法第56条
労働の対価は経費であり、働き手が親族であっても変わりはありません。しかし、所得税法第56条は、個人事業主による配偶者と親族への対価の支払いを税法上、必要経費から排除しています。個人事業主の所得から控除される働き分は、配偶者が年間86万円、家族が同50万円と低額で、家族従業者の社会的・経済的自立を妨げ、後継者不足に拍車をかけています。
▼自家労賃
中小業者の営業は、その大部分が事業主や家族従業者の労働によって維持されており、その所得のほとんどが勤労所得=自家労賃によって成り立っているのが実情です。税制上、事業主自身の自家労賃が勤労所得控除として認められておらず、中小業者への重税と低工賃などの不公正取引の原因となっています。また医療・年金などの社会保障の面でも差別給付と過重負担といった問題を生じさせています。
▼記帳義務化
所得税法の「改正」により、2014年1月からすべての事業者に記帳が義務化されました。しかし、記帳義務違反そのものについては罰則を付けさせず、単なる訓示規定とさせました。
記帳は自らの経営を守るために必要であり、業種や実態に即した記帳を認めさせることが大切です。推計による更正処分や帳簿などの保存がないことで消費税の仕入れ税額控除を否認される恐れもあるだけに自主記帳・自主計算の強化が求められています。
▼マイナンバー(個人番号)制度
マイナンバー制度(「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」)は、2015年の秋口に、番号の通知が開始され、16年1月から、社会保障・税・災害対策の3分野でマイナンバーの利用が始まります。個人番号は総務省、法人番号は国税庁が管理し、法人番号は公開されます。
社会保障・税制度の効率性・透明性が高まるとしていますが、成りすまし事件など情報漏えい被害が懸念されます。
▼社会保障制度改革推進法
2012年8月、消費税増税法案と一緒に成立しました。自助、共助が強調され、憲法25条で定められた社会保障・社会福祉に対する国の義務を否定し、公的責任を投げ捨てるものです。
この推進法に基づき、社会保障改革推進プログラム法を制定し、医療では高齢者の窓口負担増、介護では軽度者の除外や特養の入所制限、年金では支給開始年齢の引き上げ、少子化対策など、社会保障制度の大改悪を推進しようとしています。
五、憲法を生かし、平和・民主主義を守る運動を
▼従軍「慰安婦」問題
第2次世界大戦時、軍の統制・監督下で行われた女性の人権を侵害する「性奴隷制度」問題です。安倍内閣発足で日本軍「慰安婦」について政府の見解を明らかにした河野洋平官房長官談話(1993年8月4日)を攻撃するキャンペーンが行われています。日本政府は世界中から厳しい批判を浴び、国連人権委員会や国連女性差別撤廃委員会などから再三、解決を促す勧告を受けています。事実の徹底解明、被害者に対する公式謝罪・補償、正しい歴史教育などが求められています。
▼国家安全保障会議
安倍政権は外交・安保政策の「司令塔」となる国家安全保障会議法を成立させました。さらに集団的自衛権行使を現実のものにする「国家安全保障基本法」を成立させることを狙っています。安倍政権は「国家安全保障戦略」の基本理念として「積極的平和主義」を据えました。その内容は、集団的自衛権行使の容認を志向していることは明らかです。
まず、解釈改憲で集団的自衛権行使を容認し、明文改憲で憲法9条そのものを葬り去る。これが安倍政権の描く「改憲スケジュール」です。
▼武器輸出三原則
日本政府の武器輸出規制の原則。(1)共産圏(2)国連決議で武器禁輸となっている国(3)国際紛争の当事国またはその恐れのある国に輸出しないことをいいます。1976年、三木内閣によって事実上武器の輸出を全面的に禁止することを政府の統一見解として示してきました。ところが安倍内閣は今年3月、この原則を撤廃し、武器輸出を推進する「防衛装備移転三原則」を閣議決定。日本が「死の商人」国家になる重大な危険をはらんでいます。
▼教育「再生」
安倍内閣は、道徳の教科化や教育委員会制度の改悪など、教育への政治支配を強め、「戦争する国」を支える人材育成をめざしています。(1)教科書検定制度を改悪し、国民の思想を教科書で統制する「思想統制」(2)全国学力テストで学校別結果を公表・競争をあおりたてる「教育統制」(3)道徳の教科化を進める「人格統制」(4)教職員を減らすことを進める「財政統制」(5)教育委員会制度改悪の「行政統制」の五つの問題点が指摘されています。
▼政党助成金
小選挙区制とセットで導入されたもので、国民1人当たり250円で算出された助成金が、政党の議席数に基づいて配分されます。総額は年間約320億円。制度導入から20年目を迎え、19年間の支給総額は5996億1360万円に達しました。その間、受け取った政党は32党。うち24党が政策や理念そっちのけの離合集散を繰り返し、解散・消滅しました。日本共産党は「憲法違反の制度」と一貫して受け取っていません。
▼「平和・民主・革新の日本をめざす全国の会(全国革新懇)」
1981年に結成され、(1)日本経済を国民本位に転換し、くらしが豊かになる日本をめざす(2)日本国憲法を生かし、自由と人権、民主主義が発展する日本をめざす(3)日米安保条約をなくし、非核・非同盟・中立の平和な日本をめざす|という三つの共同目標に基づいて、政治革新と国民多数派の形成をめざしています。構成員は450万人・800の組織となっており、草の根から政治革新運動を発展させる重要な存在です。
▼「核抑止力」論
「核兵器があるから、世界の平和が保たれている」という考えです。具体的には、核兵器を使用しようとした場合、自国も相手国から核兵器による破滅的な被害を覚悟しなければならず、最終的には核兵器の使用を思いとどまるために平和が続いているとして、核兵器の保有を合理化します。この考え方では核兵器をなくすことも、新たに核兵器を獲得しようとする国を阻止することもできません。
2013年の国連総会で「いかなる状況においても、核兵器が二度と使用されないことが人類の生存そのものにとって利益である」との共同声明が発表され、日本政府は国民の運動に押されて、初めて賛同しました。
▼NPT(核不拡散条約)再検討会議
1970年に発効した国際条約で、189カ国が加盟しています。世界の圧倒的多数の国が核兵器を持たないと約束する一方で、核兵器を持つ米、英、ロ、仏、中の5カ国も核軍縮・廃絶の交渉義務を負っています。2015年の再検討会議に向けては16カ国が核兵器の使用は国際人道法に抵触するものであり、核兵器禁止が必要との「共同声明」を出しています。
六、道理と団結、共同を貫く強大な民商・全商連を
▼制度学習大綱
継続的な開催が求められる学習会・学校を制度化したもの。新会員に「ようこそ民商へ」と「基本方向」の二つのパンフレットを必ず手渡して「新会員歓迎学習会」を速やかに開くことをはじめ、幹部活動家・役員を対象に「班長学習会」「支部役員学習会」「幹部学校」などを開催します。総合力の発揮につながる学習の強化として、新任役員や共済会・婦人部・青年部の各役員への参加の働きかけも強めています。
事務局員を対象にした制度学習として、「新事務局員研修」「新事務局員学校」「事務局員学校」「事務局長学校」「新事務局長学校」を開催します。
▼機関紙ジャーナリズム
機関紙は目的を持った組織によって運営され、明確なメッセージで、構成員への宣伝・コミュニケーションの役割を果たすとともに、組織外の人々にも活動を伝え共感を広げていく役割を担っています。
全国商工新聞は、「中小業者の大同団結と平和的・民主的日本建設に貢献する」という創刊の精神を受け継いで、国民・中小業者の利益にたった機関紙ジャーナリズムとしての重要な一翼を担っています。
▼基本調査
毎年1回(6月1日時点)集約し、全国の民商・県連の組織建設(民商会員の対象業者比、班・支部の体制や活動、会費・商工新聞の組織集金・配達状況など)や財政活動の現状を明らかにするもの。中小業者をめぐる情勢が激動するなか、基本調査の分析を通じて、「地域にどういう民商をつくるのか」「どうすれば全会員の力を引き出し、新たな前進を図れるのか」の議論を呼びかけています。
▼経済センサス(基礎調査・活動調査)
国内すべての事業所および企業を対象に5年ごとに行われる国の最も基本的な統計調査。目視で確認する従来の事業所・企業統計調査に代わって09年から経済センサスとして実施。商業・法人登記なども踏まえ、より正確になりました。
行政区ごとの民商の対象業者数や、業種ごとの分布の特徴を調べることで、どんな要求を押し出すかなど、地域の多数派結集への活用が始まっています。
全国商工新聞(2014年5月12日付) |