全国商工団体連合会(全商連)は3月26、27日の両日、都内で第49回総会第4回常任理事会を開き、次の決議を採択しました。
2011年3月27日 全商連第4回常任理事会決議
全国の仲間が団結し、被災救援と切実な要求実現、 組織の拡大・強化に全力を
一、はじめに
3月11日発生した東北地方太平洋沖地震は、最悪の震災となっています。日本の統計上に例のないマグニチュード9・0の激震が多くの家屋を倒壊させました。岩手、宮城、福島を中心に太平洋沿岸を襲った大津波は、轟音と土煙をあげながら、地域住民をのみ込み、家も店も車もすべて奪い去りました。さらに老朽化による危険性が指摘されていた福島原発は爆発・破損し、放射能による被害と不安を広げています。「安全神話」を振りまき、原発依存を強めてきた政府と大企業を免罪するわけにはいきません。
最愛の家族を失い、負傷した被災者は未曾有の被害に立ち向かい、懸命に生きようとしています。言い尽くせない被災者の苦難に心を寄せ、生きる希望の灯をともすことが求められています。
被災地支援に逆行し、全産業、地域経済に打撃を与える消費税増税と環太平洋連携協定(TPP)への参加に断固反対します。中小業者の経営を守り、災害に強いまちづくりや外国に依存しない食料主権、エネルギー政策の転換、震災復興を最優先する政治の実現をめざし、政治戦も生かして世論と運動を広げます。
民商・全商連は、どんな状況のなかでも仲間同士助け合って困難を打開してきました。重税反対を掲げ、3・13統一行動に参加して大惨事に巻き込まれた仲間の思いを胸に刻みつつ、60年の歴史に裏打ちされた団結の力を発揮しようではありませんか。被災した中小業者・住民の営業と生活、地域の再建・復興に全力を挙げ、組織拡大と緊急切実な要求実現に力を尽くしましょう。
二、要求運動の原点
1、中小業者の底力を発揮し、被災者救援に全力を
中小業者はあらゆる困難や不測の事態にも対応できる能力と技術を持ち、震災に対する経験を蓄積しています。東日本大震災から一人でも多くの住民と仲間を救うために全国の組織が立ち上がります。
被災者の住宅確保と合わせ、中小業者の店舗・工場への直接支援が緊急切実な課題です。災害や休業への補償制度の確立を強く要求します。被災者の要求を結集し、債務の免除をはじめあらゆる公的支援を拡充するよう国に働きかけます。
福島原発の爆発・放射能漏れ・拡散の責任を徹底追及し、原子力発電に依存したエネルギー政策を自然エネルギー中心へと転換するよう、世論と運動を強めます。
「日本版・小企業憲章」は、震災復興に全力を挙げ、その経験と教訓を踏まえ、第2回理事会以降に提案することとします。
2、TPP参加に反対し、仕事と資金確保の強化を
投機による株価の混乱や異常円高に加え、大震災による甚大な打撃が重なり、危機打開の運動強化は待ったなしです。「中小業者の力で震災復興」を合言葉に、力を合わせて経営の維持・発展をめざします。大企業の資材、燃油の囲い込みを許さず、実態調査にも取り組んで、必要な物資をスムーズに流通・供給させる実効ある措置を国に求めます。
中小企業振興条例や公契約条例の制定など、政策提言活動を強めます。住宅リフォーム助成制度や小規模工事希望者登録制度の創設・改善、中小業者向け官公需の拡大に挑戦し、仕事確保に役立てます。緊急保証の完全復活を要求し、「融資は権利」の立場で、あらゆる金融要求に積極的に応えます。「ゼロ金利」融資や保証料補助など、中小業者の資金調達コストを軽減する制度創設を自治体に要求します。
TPP参加は、関税の撤廃による外資の参入を拡大し、地域経済を破壊します。また、官公需の「地元優先発注」や不況対策融資など、国内産業を守る規制や制度を廃止するものであり断じて許すわけにはいきません。
TPPの危険な内容を解説するリーフレットを作製し、班・支部で学習を強めます。「地域経済を守れ」の大義を掲げ、農林水産関係組織や業界団体、国民各層と協同してシンポジウムや集会などに取り組みます。
3、消費税増税に反対し、納税者の権利を守る大運動を
「震災復興」や「社会保障」などの口実を持ち出し、国民に消費税増税を押し付けようとする政府・マスコミ一体の世論誘導に反撃します。「大企業・大資産家に応分の負担を」「軍事費を削って被災地支援に回せ」の宣伝を強め、「消費税増税阻止!署名・宣伝・拡大の集中行動」(5月9日〜22日)を大きな構えで取り組みます。消費税廃止各界連絡会が計画している5月11日の国会内集会に向け、地域各界連の活動を強化します。
「納税者の権利憲章」(第2次案)を力に、納税者への義務と罰則を強化する国税通則法の改悪を断固阻止します。国会審議の状況を注視し、議員への要請を継続的に進めます。法案審議の状況に応じて、力を集中した国会行動を展開し、情勢の打開を図ります。
消費税増税反対など3項目署名、通則法改悪反対署名、TPP参加反対署名に全会員参加で取り組みます。
4、国保の改悪・負担増を許さず、社会保障の充実を
医療費抑制を目的にした国保の都道府県化や国保料(税)の「旧ただし書き方式」への統一に反対し、全加入者への正規保険証の交付、国保料(税)の引き下げ、強権的な徴収行政の是正を要求します。
仙台高裁は、医療費一部負担金の減免の適用を「収入が2分の1以上減少した場合」に限定する画一的な基準を違法と断罪しました。この判決を力に、一部負担金減免制度の改善と適用拡大を自治体に迫ります。70〜74歳の窓口負担の2倍化、低所得者への保険料のアップを狙う新高齢者医療制度を許さず、後期高齢者医療制度の即時廃止を迫ります。
5、平和、民主主義の擁護・発展を
政府・民主党がめざす国会議員定数削減は欺まんに満ちています。衆院比例定数の80削減で節約できる予算は60億円弱にすぎません。本当に身を削るというなら、年間320億円もの政党助成金こそ削減すべきです。「削られるのは民意」という本質を大いに知らせ、議員定数削減反対の共同を広げます。
原発事故の恐ろしさが明白になるなか、核兵器廃絶とともに「原子力行政の抜本的見直し」を掲げる原水爆禁止運動の発展・強化が求められています。この運動の先駆けとなってきた民商・全商連の歴史と運動を学び合い、新しく提起された「核兵器全面禁止のアピール」署名を推進しつつ、平和行進や原水爆禁止世界大会への参加を強めます。沖縄・辺野古への新基地押し付けやヘリパッド建設に反対し、米軍基地撤去・安保条約廃棄をめざします。
三、組織建設の重点
1、被災救援と要求実現を保障する組織の拡大・強化を
被災した仲間の救援や多彩な要求実現には、それを保障する強大な民商・全商連の建設が欠かせません。「団結こそ何ものにも勝る宝」とし、幾多の困難・障害を乗り越えてきた60年の歴史を生かし、被災支援と結んで、要求運動と組織建設を一体的に推進します。
「読み、増やし、配達し、集金し、通信を送る」商工新聞中心の活動で、被災地と全国の連帯の絆を強めます。「あったか民商」の救援活動はもとより、交渉・要請や宣伝・対話、会議での意思統一に商工新聞を思い切って生かします。荷を分かち合って配達・集金活動を進め、会員・読者のコミュニティーを培い、結びつきを強め、民商・全商連全体の運動・組織・財政を支えるようにします。すべての民商が通信・ニュースを全商連に送付し、全国の仲間に奮闘を発信します。
商工新聞前面の持続拡大は、(1)多くの会員が参加しやすく、(2)対話運動にもつながり、(3)組織の活動改善を促し、(4)会員拡大の条件を広げます。
「困ったときには力になるのが民商」「増やしてこそ民商」の気概を発揮し、全国会長会議(5月21、22日)を拡大運動の高揚のなかで迎えます。
4月から7月末まで、商工新聞宣伝紙を1部10円にします。
2、60周年めざし、「目標と計画」の確立を
第49回総会以降、多くの民商が60周年をめざす「目標と計画」を持つことで、「地域にどんな民商をつくるのか」という探求と創造を進めてきました。
年度末での全国増勢を実現することはできませんでしたが、すべての会員が要求運動や助け合いの組織活動を通じて、民商運動の「値打ち」を確信にし新たな前進の展望を切り開きます。
県連や民商の総会で、11月の60周年記念集会・式典を展望した「目標と計画」を方針にきちんと位置づけるようにします。記念リーフを生かし、「商売・人生・民商」を語り合う大運動に取り組みます。日常的な自主計算活動と相談の担い手づくりを系統的に進めます。新会員歓迎学習会でパンフ「ようこそ民商へ」を読み合わせ、紹介運動を広げます。
民商・全商連が、歴史的に探求してきた財政活動の基本や事務局活動のあり方について、機関会議や事務局会議で学び合う機会を設け、拡大を基点にした活動の改善・強化を進めます。
3、地域に根ざす班・支部活動に沿って総合力の発揮を
苦難に直面している会員やその家族を励ますためにも、班・支部を基礎に全会員参加の運動を追求するとともに、婦人部、青年部、共済会の諸活動を通じた総合力の発揮が求められています。
婦人部は、所得税法第56条廃止や国税通則法の改悪阻止に力を発揮するとともに、「一人ぼっちの業者婦人」をなくそうと奮闘しています。青年部は、大きな構えで「全国業者青年実態調査」活動を推進し、業者二世や青年事業主に働きかけています。共済会は「お元気ですか」の声かけで、助け合いの制度充実を知らせ、いのちと健康を守る多彩な活動に取り組んでいます。
これらの諸活動は、切実な要求実現の運動であると同時に、会員・家族を激励する仲間づくりの取り組みです。一人の犠牲者も出さないよう、地域に根ざす班・支部に沿って相乗的に進めます。
民商と婦人部、青年部、共済会の役員との懇談を強めます。また会員とその配偶者を無条件加入にしている助け合い共済の意義に立ち返って、婦人部と共済会の連携も推進します。総合力を発揮するなかで、業者青年に魅力ある民商建設を強め、運動の継承・発展を図ります。
全国商工新聞(2011年4月4日付)
|