納税者の権利憲章(第2次案)
全商連第3回常任理事会は「納税者の権利憲章」(第2次案)を確認しました。
基本原則
日本国憲法は、「国民こそが主人公」であることを宣言し(前文)、すべての国民は個人として尊重される(11条、13条)とする憲法原則は、租税国家である我が国の税制・税務行政の分野においてこそ、貫かれるべきであり、国は積極的に国民に保障しなければなりません。
憲法30条は「国民は、法律の定めるところにより、納税の義務を負ふ」とし、84条で「あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律に定める条件によることを必要とする」と租税法律主義を規定しています。税法は、課税団体、納税義務者、課税物件、課税標準、税率などを実体的に規定しています。それは、納付・徴収等についても、法律によらなければ租税を課してはならないということです。
また、申告納税制度を基本とするわが国の納税制度の下では、国民は税額を申告により決定する自主申告権を有しています(前文、13条、14条、国税通則法16条)。
現代税法は本来、課税権の限界を明示し、課税の領域で国民の財産権を保障するものでなくてはなりません。
憲法31条では「適正手続き」の保障を規定し、税務行政においても徴収においても憲法に基づく法規定が厳格に行われるように要請しています。しかし、事前通知や調査理由の開示、処分に当たっての理由付記などの手続き規定が存在していません。このような質問検査権の規定は、租税法律主義を著しく侵害し、適正手続きの保障に反するものです。(13条、31条、34条、35条)
憲法は、国が国民の「健康で文化的な最低限度の生活」を保障することを求め(25条)、「幸福追求権」(13条)、「法の下の平等」(14条)、「財産権の保障」(29条)に基づき、税金は能力に応じて公平に負担することや、生活費非課税を要請しています。生活費にかかる税金は、生存権と財産権を侵害し、憲法原則に違反していると言わざるを得ません。
憲法98条は、憲法を「国の最高法規」と定め、憲法に反する行為は、「全部又は一部、その効力を有しない」と規定しています。さらに税務の執行にあたる公務員は「憲法遵守義務」(99条)に基づき、憲法原則を厳守しなければなりません。
憲法原則は地方税・社会保険料についても適応されます(92条・地方自治法1条)。
こうした規定は、イギリスのマグナカルタやフランス革命の人権宣言でも明らかにされたものであり、今日まで世界的規模で発展させられてきたものです。
憲法の保障するこれらの原則は、あらゆる機会を通じて国民に保障されるべきであり、侵すことのできない納税者の権利として確立されなければなりません。
〈納税者の基本的権利〉
1 納税者は、適正な手続きによらなければ租税を課されることはなく、適正な手続きによらなければ租税債務の履行を強制されることのない権利を有する。
2 すべての国民は基本的人権を保障され、誠実な納税者として尊重される。
3 申告納税制度の原則は、あらゆる納税者に保障される。
4 国民のプライバシーは、国及び地方自治体等の干渉から最大に保護される。
納税者が求める場合、納税者固有の情報は本人に全面的に公開される。
5 納税者の権利を確立するために、税務職員の民主的な諸権利は保障され、課税、徴収のノルマによる勤務評定は禁止される。
〈税務調査における適正手続き〉
6 納税者は、税務調査に当たって税務職員に質問検査に応じるように求められた場合、常に丁重、かつ配慮ある取り扱いを受ける。
税務調査に当たって、税務職員は納税者に次のことを保障しなければならない。
(1) 税務職員は、納税者に対して質問検査をする必要がある場合には、納税者の都合を尊重し、必ず口頭及び文書で事前に通知する義務がある。事前通知なく行われた調査はそれだけで無効である。
(2) 税務職員は、税務調査等に当たり、合理性のある調査理由を具体的に説明しなければならない。
(3) 反面調査は、客観的に正当な理由がある場合に限られる。本人調査を尽くし、事前に承諾を得なければならない。
7 税務調査等に当たり、税務職員は納税者へ「誰でもわかる文書」で権利を告知しなければならない。権利の告知なく行われた調査はそれだけで無効である。税務職員は、これらの諸権利を保障する義務がある。
8 税務調査の公正を期すために、納税者が求めた場合、第三者の立ち会い及び、調査内容の記録や録画・録音が認められる。
9 課税処分は、実額課税が原則であり、推計課税は制限される。制裁的条項は制限されなければならない。
10 課税処分に当たっては、事前にその理由を十分知らされるとともに、聴聞、反論の機会も保障される。
〈租税徴収における納税者の権利〉
11 徴収に当たっては納税者の権利と適正手続きが保障される。
12 徴収に当たっては、生活再建と事業再生支援に役立つよう配慮しなければならない。
13 納税緩和制度は中小企業・中小業者の事業継続や取引慣行に配慮し、すみやかに適用される。
生存権的な財産の処分、売掛金の差し押さえは禁止される。
〈不服審査、訴訟における権利救済〉
14 異議申し立て及び審査請求は権利救済であり、国税庁とは独立した機関で審査される。国税不服審判所は内閣府に設置し、職員は税務職員とは独立して審査にあたる。
権利救済機関の審査を経るか、直接訴訟で争うかは納税者の選択に委ねられる。
15 納税者は不服審査や訴訟で争っている場合、税額は不納付のままで公平な審査を受けることができる。その間、延滞税・延滞金は課されない。
16 納税者は公正な裁判を受ける権利があり、裁判は総額主義ではなく争点主義で行われる。
17 納税者オンブズマン(行政監察官・苦情処理担当者)制度を設置する。
納税者オンブズマンの納税者救済命令や勧告は税務当局及び議会で尊重される。
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