全国商工新聞 第3348号2019年2月11日付
子どもたちが安心して学べるよう就学援助制度の拡充が必要です(写真と本文は関係ありません)
入学、進学など、子どもたちが新しいステージに立つ季節がやってきます。成長を喜ぶ一方で、制服や通学用品など、教育費負担の大きさに悩む家庭も多いのでは。子どもたちが安心して学校で学び、過ごせるよう、憲法26条「義務教育の無償」によってつくられた「就学援助」制度を活用しましょう。全国の民主商工会(民商)婦人部では、制度拡充と活用の運動を進めています。
学校教育法第19条では、「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」と定めています。
文部科学省(文科省)の調査(2015年)では、146万人を超える児童生徒が就学援助の支給を受けており、6人に1人(15.23%)に上ります。
(1)生活保護を受給している(要保護者)(2)生活保護者に準ずる程度に困窮している(準要保護者)-世帯です。要保護者への補助は、国と自治体が半分ずつ、準要保護者の認定と補助は各市町村が行います。
準要保護者の認定基準は、全国の7割強の自治体が生活保護基準額に一定数値(1.2倍など)を掛けたものとしています。
安倍政権による2013年からの生活保護削減に連動し、就学援助制度の認定基準が引き下げられている自治体も出ています。文科省は、「影響が生じる場合、認定基準などを見直し、再認定を行うなど、対応する」としていますが、注視が必要です。
東京都世田谷区では、2019年度の制度拡充案として「所得基準を生活保護基準の1.24倍(給与所得545万円)から、約1.4倍(同590万円)に引き上げる」との方向を打ち出しています。
学用品費、体育実技用具費、新入学児童生徒学用品費等などは表のとおり。今年から「卒業アルバム代」が新設され、「新入学児童生徒学用品費等」が昨年度より1万円増額されています。
教育委員会または子どもの通う学校で申請書を受け取り、提出します。随時申し込みが可能で、手続きが簡単な自治体もあれば、申し込み期限があったり、所得課税証明書などの書類が必要な場合もあります。マイナンバーの提出を求める自治体もありますが、提出しなくても不利益はありません(下に別項)。
教育委員会から保護者の口座に振り込まれます。入学準備金に関しては、3月支給の自治体が増えています(図)。各地の民商婦人部や地域の女性団体が改善を求めてきた成果です。
文科省の調査(昨年7月)では、新小学1年生に対する入学準備金の入学前支給を「2017年度に実施」「18年度から実施を予定、検討」とした市町村は、1766自治体中1285自治体と、72.8%に上ります。「19年度から実施を予定または検討」「時期未定だが検討中」の市町村12.4%を加えると、85%を超える自治体で、小学校入学前の支給が実現します(中学校では86.6%)。
「マイナンバー(個人番号)を記載・提出しなくても、申請は受け付ける」-。就学援助の申請書に個人番号の記載を求める自治体の対応について、日本共産党の吉良よし子参院議員が文部科学省に確認したところ、「記載がなくても不利益はない」との回答を得ました。
文部科学省は「マイナンバーの記載がなくても申請できるし、受け付ける。生活保護の関係から記載を求められることがあるかもしれないが、記載がないからと言って、受け付けないということはあってはならない」としました。
条例で「就学援助は個人番号を利用する事務」として番号記入を定めている自治体があることについては、「条例があるからといって、番号の記載がないことを理由に申請を受け付けないことがあってはならない」と回答。また、学校に個人番号の記載された申請書を提出することは、管理上の課題があるとの認識を示しました。
個人番号の記載については、2016年の導入以降、申請書類への記入(世帯全員分の場合も)や、番号確認のための書類(マイナンバーカードや通知カード、免許証や住民票など)の提示・提出を求める動きが強まっていました。
子どもたちのプライバシーを守り、より多くの人が活用できる制度にするため、個人番号を提出しなくても申請を受理させるよう運動を広げる必要があります。