1700人の熱気あふれた 第15回全国業者婦人決起集会(続報)
消費税増税も改憲も反対 業者婦人の怒りが爆発
「消費税増税も憲法改悪も許さない」「私たちの働き分を認めて」と声を上げた全婦協の第15回全国業者婦人決起集会(10月26日)。東京・日比谷野外音楽堂に全国から1700人が集いました。集会に先立ち地元国会議員への要請行動や省庁交渉、日本共産党国会議員団との懇談、財務省前の抗議行動、街頭宣伝など多彩な行動を展開。業者婦人の願いに背を向ける安倍政権を一日も早く退陣に追い込もうと誓い合いました。
56条廃止、早急に結論を 財務省要請 副大臣「しっかり検討」
うえの財務副大臣(左)に要請書を手渡す井賀久恵全婦協副会長
財務省では、井賀久恵全婦協副会長ら10人が参加し、所得税法第56条の廃止や消費税10%・インボイス導入中止などを要請。
井賀副会長は「56条の廃止・見直しを求める意見書は、10月に採択された香川県議会を含め、全国489自治体に広がっている。いつまでも“検討”ではなく、早急に結論を出してほしい」と訴えました。
応対したうえの賢一郎財務副大臣(自民党)は「これまでの国会審議の延長線上に議論し、何らかの見直し等をしっかり検討していきたい」と表明。当初、56条を廃止すると、白色記帳者が「恣意的な所得移動(分割)」をする懸念があるかのような議論を蒸し返しましたが、猛抗議に「発言は取り消させていただく」と撤回しました。
消費税に関わって「インボイスが導入されると、取引から排除される小規模な免税事業者はつぶれてしまう。インボイスはやめてほしい」との声に、うえの副大臣は「実家が荒物屋。90歳の父親が細々とやっており、零細事業者の大変さ、心配はよく分かる。時間を掛けて丁寧に検討したい」と述べました。
要請には、日本共産党の大門実紀史参議院議員、宮本岳志、宮本徹の両衆議院議員が同席しました。
免税業者排除するインボイスやめよ 経産省・中小企業庁要請
中小企業庁には、消費税増税と併せて導入される複数税率(軽減税率)やインボイス(適格請求書等保存)方式をやめることなどを要求=写真。参加者から「線引きがあいまいな複数税率やインボイスはとんでもない」「インボイス制度になれば取引から閉め出される」などの声が上がり、庁側は「インボイス制度は相当な中小企業者への負担になる。調査し、解決策を講じたい」と回答しました。
小規模企業持続化補助金の問題では3回連続で不採択となった参加者が「私の民商で20人以上が申請したが、全員が不採択になり、やる気をなくしている。せめて不採択の理由開示を」と求めたことに対して庁側は「皆さんが使いやすいようにしたい」と回答しました。
河井千代恵全婦協会計が「中企庁として毎年、業者婦人の実態調査をしてほしい」と訴えると、庁側は全国業者婦人実態調査報告集を受け取り「小規模事業者の実態把握は、今後も深掘りする余地がある。(報告集は)研究する」と答えました。
経済産業省交渉では、福島の参加者が原発事故以降、今も続く困難を口々に語り、被害の完全賠償と原発を再稼働しないことを強く求めました。
国保証交付徹底を 就学援助拡充して 厚労省と文科省要請
厚生労働省には、国民健康保険(国保)の正規の保険証を交付することや出産手当・傷病手当の給付、国保の都道府県化を延期すること、払いきれない社会保険料問題の相談に応じることなどを求めました。
社会保険料を払い切れない問題では、「ただちに差し押さえをせず、話し合うことから始めるように指導している」と答えました。
一方、「国保制度は生存権を保障した社会保障の一環で、相互扶助ではない」との追及に対して、担当者は「確認する」と答え、国保制度が「社会保障の向上に寄与することを目的とする」(国保法1条)ことを理解していない実態が明らかになりました。
文部科学省には義務教育の無償化や就学援助制度の徹底・拡充、学校給食の無償化、食材の地元購入の推進などを要望。就学援助制度については「経済的に困窮している子どもたちは引き続き支援を強める。新入学の学用品費の予算を倍加し、(入学前など)必要な時期に渡せるように努力している」と答えがありました。
また、学校給食については、2016(平成28)年から給食の食材で地場産品の活用を進めていることを明らかにしました。
参加者は「子どもの7人に1人が貧困といわれている。就学援助制度の内容を拡充させ、手続きも簡素化してほしい」「地域で子ども食堂に取り組んでいる。基礎体力をつけるには食事が大切。学校給食を充実してほしい」と訴えました。
要求実現へ共同誓い合う 共産党議員団と懇談
350人が参加し、立ち見も多数に。熱気に包まれた議員懇談会
参加者は業者婦人の実態や地域での活動を口々に発言しました
議員懇談には27都道府県から350人が参加。日本共産党の衆参国会議員10人と懇談し、所得税法第56条や保育園の入所問題、基地ノーの思いなどを訴えました。
衆議院からは直前に行われた選挙で再選を果たした本村伸子、宮本徹、宮本岳志、田村貴昭の各議員が駆け付けてあいさつ。田村議員は「選挙期間中に商店街で『増税はごめん』の声をたくさん聞いた」と話し、「56条はなくてもよか。増税絶対ゆるさんばい」と力を込めました。
参議院からは、岩渕友、吉良よし子、山添拓、辰巳孝太郎、井上哲士、大門実紀史の各議員が参加しました。井上参院議員は「安倍政権はお友達のためなら何でも忖度する『全自動忖度機』。選挙中もモリカケ疑惑を説明せず、臨時国会を開く気もないなんて許せない。まともに論戦できない表れだ」と厳しく批判。山添議員は「再来年の増税までにもう一度国政選挙のチャンスがある。力を合わせて要求実現を」と呼び掛けました。
56条問題を国会で取り上げてきた大門実紀史参院議員は「積み上げてきたたたかいの成果で、『否定する論理はない』との見方になっている。地域で他党を巻き込んで自治体請願を勝ち取り、味方を増やしていこう」と激励しました。
参加した業者婦人は多彩な問題意識を発言。「一緒に働く娘が事故にあった時、56条で働き分が認められないため、適正な保険金が受けられなかった。子どもが生まれても、自営業は、保育所にも入れない。京都市は『待機児ゼロ』と言っているが事実と異なる」(京都)、「米軍基地があるゆえに、女性や子どもの悲しみ、苦しみが続いている。もう我慢できない。オールジャパンでこの問題に取り組み、沖縄のことを忘れないで」(沖縄)と訴えました。
吉良よし子参院議員は「私も2歳の子を育てているが、保育園に入れなかった。自営業だから、勤め人だからなどと枠を設けること自体が過ち」と指摘。井上参院議員は「沖縄の基地問題は日本の民主主義に関わること。国は、繰り返し示された『基地ノ-』の民意を無視し、オスプレイが落ちても原因を究明せず、飛行再開を許している。日本の空全体がアメリカの飛行訓練の場になる状況を変えていきたい」と力を込めました。
所得税法第56条廃止の請願 署名携え実態を訴えて
紙智子参院議員を訪れ、秘書に署名を託した北海道の参加者
全国から集まった業者婦人は、地元選出の議員を訪ね、実態を直接訴え。所得税法第56条廃止の請願書の紹介議員になってもらうよう要請しました。
北海道・札幌東部民商婦人部の小名玲子副部長ら5人は、民進党の鉢呂吉雄、自民党の橋本聖子、日本共産党の紙智子の各参院議員を訪問。北海道では所得税法第56条廃止の自治体採択があと1自治体で過半数になることもあり、力を込めて実態を訴えると、自民党議員の秘書も「気持ちはよく分かる。国連の勧告も出ているし、政府の動きを注視したい」と対応。「消費税の増税はやめてほしい。街が死んでしまう」と話すと、「富める者ばかりが富むのは良くない」(民進党議員秘書)などの声が出されました。
共産党の紙議員は秘書が議員室で応対し、1000人分の署名を受け取り、「ともに頑張りましょう」と激励しました。
初めて議員要請に参加した旭川民商の橋さんは「議員室で直接、思いを届けられたことに感動。何度も積み重ねてきた要請行動の歴史を感じた。政治家にはぜひ口だけでなく行動してほしい」と話していました。
新潟県婦協の渡辺照子会長ら7人は、昨年夏の参議院選挙で野党統一候補としてたたかった森ゆう子議員と懇談。市民と野党共闘をさらに前進させ、安倍政権を退陣に追い込もうとの思いを一つにしました。
国税長官を調査せよ 財務省前で抗議行動
森友・加計学園疑惑の究明、安倍政権退陣などを求めて250人が結集した財務省前の抗議行動
「中小業者より先に国税庁長官を調査しろ」「財務省は疑惑を隠ぺいするな」-。財務省前抗議には約250人が集まり、安倍晋三首相による「国政私物化」と「財務省高官の忖度」に業者婦人の怒りが爆発しました。
全婦協の井賀久恵副会長は「疑惑隠しに終始した佐川宣寿前理財局長が国税庁長官に昇任するなど許されない」と訴え、「商売人の帳簿保存義務は最長で7年間。資料を捨てたなどの言い訳は通用しない」と罷免を要求しました。
「商店、飲食店、町工場のお母さんらが地域、命を守りたいと仕事に励み税金を払っている」と訴えた藤江由美子・決起集会実行委員長は「近畿財務局は8億円以上も国有地を値引きした。怒りを抑えられない」と抗議しました。
京都の参加者は「業者婦人の1年間の労働対価はわずか86万円。金融機関から借り入れもできず消費税が10%になれば廃業に追い込まれる。森友疑惑は納得できない」と訴え。
愛知の参加者は「消費税8%でも転嫁できない事業所が多い。元請けからも下請けからもたたかれる状況」と語り、大阪の参加者は「あまりにひどい疑惑隠し。はらわたが煮えくり返る思い」と怒りをぶつけました。
手製のプラカードを持参した広島北民商婦人部の片山さんは「入院した時も、税務職員は『調査に関係ない』と言い放ち推計課税した」と訴え、税務行政の改善を要望しました。
熊本地震で家が全壊した熊本民商婦人部の守島さんは「いまだ仮設住宅暮らし。医療費免除が打ち切られ、食費を切り詰める日々」と語り、増税ではなく、支援策拡充を求めました。
増税中止署名に反響 上野・新橋駅前で宣伝
136人が参加し、消費税増税中止や憲法守れ署名への協力を呼び掛けた上野駅前宣伝
JR上野駅前の宣伝行動には136人が参加。宣伝カー上から、消費税廃止や憲法守れ署名への協力を呼び掛けました。
宮城の石巻民商の中野さんは「被災から6年7カ月たった今でも、仮設生活を余儀なくされている人は多く復興はまだまだ進んでいない。熊本の地震や台風被害、豪雨被害など多くの国民が苦しんでいるのに増税など絶対に許せません」と力強く訴えました。
通行者と対話しながら、次々と署名を集めていた埼玉・本庄民商の関根さんは「『なんで自民党があんなに勝ったの? おかしいわよ』と怒っている人が多かった。民意がゆがめられていることを感じた。増税は死活問題。なんとしても中止させなければ」と話します。1時間の行動で192人分の消費税増税中止署名などが寄せられました。
JR新橋駅前の宣伝にも約200人が参加、82人分の署名が集まりました。
参加して良かった
税のこともっと学びたい 滋賀・大津高島民商 池端さん
子育てが一段落し、初めて婦人部の活動に参加しました。若い人も多くて活気があったので少し驚きました。「たたかいの交流」で気になったのは基地問題。住む地域にも自衛隊基地があるので、騒音問題や生活への影響は人ごとに思えませんでした。また、倉敷民商の禰屋さんの話にも心を打たれました。
今は母が主に経理をしていますが、私も事業に深く関わりたいと思っています。所得税法第56条の問題や消費税のことなどは、これから事業を続けていく上で学ばなくてはいけないこと。小中高の子どもたちに、学んだことをしっかり話して一緒に考えたいです。
力を合わせるのが大事 宮崎民商 永峰さん
「業者婦人の集まりがあるんだけど…」と誘われて、「行きたい!」と即決しました。父親の建設業を継ぎたくて現場に出るようになって2年ですが、私たちの業界では若手の人手不足が深刻な問題。全国の人たちがどんな問題を抱えて、改善のためにどんな活動をしているのか興味がありました。
話を聞いて、婦人部の皆さんがいろいろな問題に向き合い、力を合わせていることに驚きました。地域のことをよく考えているんだなあと。特に沖縄の若い人たちの発言は刺激になりました。みんなで力を合わせる業者運動を、地元でもっと発展させたいです。
全国商工新聞(2017年11月13日付) |