全国業者婦人実態調査A【暮らし・健康】=全婦協
公的負担が貧困の原因
全商連婦人部協議会(全婦協)がまとめた「全国業者婦人の実態調査」。「暮らしと健康」の章では、都留文科大学の後藤道夫名誉教授が「家計を圧迫しているもの」「国民年金」「健康問題」「子ども」「介護問題」などのテーマで分析。介護や子育てに奮闘しながら商売を担う業者婦人の実態と、社会保障の脆弱さが明らかになっています。
売り上げ低く 副業でしのぐ
事業主では売上300万円未満が79・2%となり、「営業収入だけでは生活できない」と答えた人は全体の約半数に上ります。事業主、家族従業者の半数以上が家業以外に就業し、「家業よりも家業以外の時間が長い」との回答もここ6年間は増加しています。
苦しい家計を圧迫しているのは「各種税金」が5割超。「国保・年金」と答えた人も46・9%に上りました。国保料を「苦しいが払っている」という人が増えている状況について、後藤名誉教授は「ギリギリの生活費に保険料が食い込んでいる。公租公課による貧困、極貧がつくられている状態」と指摘します。
公的年金加入では国民年金が多数ですが、年金に入っていない人も8・5%おり、保険料を滞納している人と免除申請を加えると18・5%に上ります。将来、無年金あるいは非常に低い年金になる可能性が高く、大きな不安要素です。
就学援助世帯 国平均上回る
小中学生がいる世帯の26%が就学援助を受給。全国平均値15・4%(13年文部科学省調査)を大きく上回っています。これは運動の成果でもありますが、子育て中の業者婦人の経済状況が他階層と比べて悪いことを物語っています。就学援助を憲法に基づいた権利として定着させ、安心して活用できるよう、旺盛な運動が必要です。
家族に介護が必要な人がいる割合は18・4%で、5人に1人。「心配事」の問いには、「仕事・家事への影響」(33・4%)、「介護に関わる諸経費がかかる、増えた」(26・6%)が増え、金銭面の負担増も明らかに。「介護支援に関わる要望」では、公的介護施設の増設、介護保険給付の限度額引き上げが増加しています。
ひとこと欄でも子育てや介護の悩みは切実。「子ども手当や扶養控除がなくなり、とても大変。保育園料は高く、2人子どもがいるとつらい」(兵庫・生活関連サービス)、「働いて子育てをし、老人介護もしろ、では人間扱いされていると思えない。新国立競技場に3000億円出すぐらいなら、介護施設及び、介護職の人に出してほしい」(徳島・製造販売)などと悲痛な声が上がっています。
家族従業者の社会保障弱い
後藤名誉教授は、国保に傷病手当・出産手当がないことや憲法違反の短期保険証の発行など、小規模事業者とその家族従業者に対する社会保障制度があまりにも弱いことを指摘。「国民健康保険、介護保険、国民年金が、最低生活を保障するべく設計されておらず、保険料が低所得の業者を貧困へと引きずり込む結果を生んでいる。生活を勤労報酬と社会保障で安定させるという観点が求められている」と提起しています。
全国商工新聞(2016年4月25日付) |