全婦協40年のあゆみを力に 業者婦人の願いかなえて
全商連婦人部協議会(全婦協)は12月に、創立40周年を迎えます。消費税増税で暮らしや営業が厳しさを増すとともに、集団的自衛権行使を容認する閣議決定強行など、平和が脅かされるいま、「なんでも話せて苦労を分かち合える」婦人部の存在はますます重要になっています。全婦協結成「三つの意義」(別項)を踏まえ、切実な要求実現に力を合わせてきた歴史をたどります。
一人ひとりの思いを集め要求実現と地位向上へ
「業者婦人の施策の充実を求める」請願の国会採択を喜ぶ業者婦人と国会議員(1999年)
「税務調査のとき、今でも胸がドキドキしてノドがかわいちゃう。でも主人がいないときは絶対上にもあげないし、何も言わないの」「前はひどかったわね。帳簿を左に持って、右で洗たくものをつかんで『これはどこについてますか』って一つ一つつきあわせて調べるんですものね」(全国商工新聞1954年2月22日号)-今から60年前、東京・荒川民商のクリーニング業者の婦人が集まったときのおしゃべりです。地域で連絡網を作って一緒に税務署交渉に行き、「店を守っている私たちの言い分も聞いてほしい」と集まるなかで、各地の民商に婦人部が生まれていきました。
そして1974年12月3日、生活費や子育て、介護の問題など、業者婦人の多彩な要求に応えて運動する、日本で唯一の民主的な業者婦人の全国組織として全婦協が結成されました。それ以来、結成「三つの意義」の一つ、「業者婦人の要求実現と、社会的・経済的地位向上に役割を果たす」に基づき、生きる道を切り開いてきました。
困難の原因探る
バブル経済が崩壊し、出口の見えない不況が日本中を襲った90年、全婦協は暮らしと営業を数字でつかみ、苦しみの原因を明らかにする「暮らしと営業の見直し運動」を提起。学習会などで、売り上げから仕入れ、経費を差し引くと自分の働き分(自家労賃)が取れないことや税制上、社会保障上も業者婦人が権利を認められていない矛盾が浮き彫りになっていきました。
一人ひとりの思いを集める「言いたい一言」運動は、大変な暮らしの原因を突き止め、業者婦人の怒りを結集。「早く仕事を仕上げるようにしたら、単価を下げられる。業者に人権はないのか」「お得意さんに『消費税なんとかして』と言われたらもらえんもん」などの切実な声は、大企業の横暴を告発し、内外から大きな反響を呼びました。
99年には、40万人分の署名を積み上げ、「業者婦人の施策の充実を求める」請願が国会で採択。「男女参画プラン」に「家族従業者への実態把握」などが盛り込まれるなど、政府を動かしました。
国連でも話題に
また、憲法で定められた基本的人権を認めない所得税法第56条の問題も明らかに。各地の婦人部員の粘り強い働きかけにより、理解が徐々に広がり、現在では387自治体が意見書を採択。09年には、国連女性差別撤廃委員会でも話題になりました。今年8月に静岡県婦協が行なった県との懇談では「人権問題であるとともに、地域産業を支える中小業者の営業に対する問題だ」と担当者が発言するなど、新たな広がりを見せています。
「みんなで領収書を見ながら話していると、消費税や庶民いじめの政治に腹が立って」と話すのは、領収書整理会を月に1回開いている茨城・水戸民商婦人部長のSさん=建築防水。消費税が上がったあとの整理会では税率5%と8%で分けて計算し、その負担の重さを実感。「消費税を10%にすると政府もマスコミも当然のように言うのは許せない」と話し合いました。生業で食べられず、パートをしながら記帳する婦人部員も増える中、「だからこそ集まらなきゃ」とSさんは実感、参加しやすいように料理教室なども併せて企画。「ここにくると飾らないでいい。ほっとする」という婦人部員の声があるからです。
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全婦協結成三つの意義=(1)業者婦人の要求実現と社会的・経済的地位向上に役割を果たす(2)民商・全商連運動の質・量を高める(3)政治を革新し、平和で豊かな日本の建設をめざす国民の力を強める
第二次世界大戦が終わり、食料や生活物資の不足や、物価の上昇など、中小業者・国民の生活に苦難と重税の嵐が吹き荒れるなか、業者婦人たちは、夫の留守中にやってくる税務調査や差し押さえに対し、声をかけ合ってたたかいました。業者婦人の団結が民商運動の発展とともに強まり、原水爆禁止や母親大会の運動、アメリカ追従の政治に反対し日米安保条約阻止の運動に立ち上がるなか、全婦協が結成。以後40年間、その意義に基づき、運動を大きく発展させてきました。
全国商工新聞(2014年10月6日付) |