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家族従業者への差別規定(所得税法第56条)は廃止せよ
「給与は経費」は世界の流れ
全婦協がシンポ 専門家、農民、労働者など167人
「私の働き分を認めてほしい」‐全商連婦人部協議会(全婦協)は8月23日、都内で「所得税法第56条」を考えるシンポジウムを開催。全国の民主商工会(民商)婦人部などから167人が集まり、56条廃止に向けた展望を探りました。全婦協結成以来30年以上に及ぶ56条廃止を求める運動は、高知県議会はじめ全国の13自治体(採択後に合併した自治体を除く)で請願を採択、国に意見書を送付するなど、新たな展開を迎えています。
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学んで展望を持ち、笑顔を見せる参加者 |
シンポジウムは、大石邦子全婦協会長、堀江ゆり婦団連会長、大西玲子全労連女性部事務局長、浦野弘明税理士・立正大学教授の4人がパネリストとして参加。労働者や女性団体、税の専門家などさまざまな立場から報告しました。
大石さんは、全婦協が取り組んだ全国業者婦人の実態調査の結果から、業者婦人の営業と生活の深刻な実態にふれ、「営業だけでは生活できない」の回答が6割以上に上り、「貯金の取り崩しや年金、パートやアルバイト収入で生活を支えている」と報告。
「ある縫製業の婦人は、1日11時間労働し、合間に家事をしている。休日は年間で12日だけ。夫婦合わせて7720時間も働くが、時給は281円」と紹介し、「私たち業者婦人の働き分が認められない根源に56条がある。全国15税理士会のうち8税理士会で、56条廃止の意見書が出された(下図参照)。それらの追い風も受けながら、廃止を求める署名運動を進めていこう」と呼びかけました。
婦団連も賛同
「56条問題は、業者婦人の人権を守る運動。その点で共闘できる」と強調した堀江さんは「世界では家族の給料を経費に認めることが主流。国連の女性の地位向上委員会に向けて、幅広い女性団体でつくる日本女性監視機構のNGOレポートでも56条問題を取り上げた」と報告。「男女平等や男女共同参画の視点で運動を進めれば、幅広い層から賛同を得られる。今回のシンポは、世論を広げる絶好の機会。婦団連も頑張る」と表明しました。
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労働者や女性団体などいろいろな立場から報告した4人のパネリスト(右から大西さん、堀江さん、大石さん、浦野さん) |
女性労働者も
大西さんは、女性労働者の実情について報告し、女性の2人に1人は非正規雇用であり、その根源には男性優位・女性への不平等があると告発。「女性団体の共同、女性と男性の共同で運動に展望が開ける」と指摘しました。
立法運動を提起
浦野さんは、56条問題廃止の展望にも触れながら報告。白色申告で経費を認めない一方、青色申告では必要経費を認める(57条)のは制度上の差別であり、憲法の平等違反といえると指摘。無認可保育所に対する消費税課税を是正させたたたかいの教訓を紹介しながら、各関係省庁に実態を示し、道理を説いていく粘り強い運動が大切であることを強調しました。また、第72回国会(会期73〜74年)で所得税法第56条廃止を衆議院大蔵委員会で決議していたことを明らかにすると、驚きの声が上がりました。
さらに考案した56条廃止の条文を披露し、「憲法第84条には、租税の変更は法律の定めによるとある。56条廃止は立法運動だ」とたたかいの方向を提示。「憲法の根本的使命は国民の自由と権利を守る点にある。声を上げ、現状を変えよう」と訴えました。
熱い会場発言が
会場からも発言が相次ぎました。
高知県連婦人部協議会(県婦協)の田村成子会長は、昨年10月に高知県議会が56条廃止の請願書を採択し、国へ意見書を提出した経過を報告。56条廃止を求める署名の申し入れでは農協や商工会とも対話になり、賛同もしてくれたことを力強く発言し、場内を盛り上げました。
青森県婦協の田嶋百合子会長は、県会議員らと学習会を重ねるなかで、問題への理解を深め、共闘の輪を広げた取り組みを紹介しました。
農民連女性部の藤原麻子さんは「農業に従事する女性も同じ状況にある。手をつないで連帯したい」と表明しました。
閉会あいさつした北島千代子副会長は「学んで展望を持った皆さんの顔がキラキラ輝いて見える。地域に帰って学んだことを伝え、56条廃止に向けた運動を強めよう」と訴えました。
参加者の声
怒りを感じる
岩手・盛岡民商=理容=
56条問題は業者婦人の人権を認めない差別。怒りを感じます。支部役員会や民商で、56条の話をしてほしいと言われ、すすんで講師もしています。理容組合でも、この問題を知ってほしいと思い、働きかけているところです。
勇気をもらった
静岡・浜北民商=鉄工=
高知県の奮闘や成果を商工新聞で知って、もっと勉強したいと思って参加しました。あらためて56条は廃止しかないと思います。全国の奮闘に勇気をもらいました。
時給280円しか
神奈川・厚木民商=金型製造=
夫婦2人と従業員1人で働いています。機械を動かすと24時間監視しなければならない仕事も。確定申告時に時給を計算してみたら280円しかありませんでした。業者婦人の働き分を認めてほしい。
所得税法第56条問題
「配偶者とその親族が事業に従事したとき、対価の支払いは必要経費に算入しない」(条文要旨)。家族が従業した場合は、その給料は税法上では必要経費に認められず、すべて事業主の所得に合算されるということです。事業主の所得から控除される働き分は、配偶者が年間86万円、家族が50万円と低額で、住宅ローンが組めないなど、事業継承の障害にもなっています。明治時代の家父長制度を引き継ぐ人権を認めない時代遅れの悪法。国民健康保険に傷病手当や出産手当が支給されない根拠の一つともなっています。 |
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