15年下期営業動向調査 消費税増税の影響深刻
先行き不透明感広がる
全商連附属・中小商工業研究所はこのほど、「2015年下期(9月期)営業動向調査」をまとめました。消費税増税の影響とアベノミクス下の消費低迷に伴い、経営に先行き不透明感が広がっている中で、総合経営判断、売上、利益の各DIが軒並み落ち込んでいることが示されています。
消費税8%増税に伴う申告後の初の調査。「経営上困っていること」の問いに対し、「消費税問題」と回答した割合は43.3%と2001年上期以降、初めて4割を超えた前期を上回り、最も高い割合となりました。直近の事業年度の売上高が低い中小業者ほど消費税を価格に転嫁できておらず、消費税が経営を困難にしている状況も浮き彫りになりました。
経営判断DI▲49.6(前期比-1.5)
ひとこと欄には、「消費税分を頂けないところがあり、利益が減っている。仕入れにはしっかり8%かかっているのに…」(美容)、「売り上げを増やしても利益が増えない現状では、消費税はまさに営業破壊税だ」(印刷)、「消費税は経営に重圧。ものづくりの後継者に継承できない」(製造)、「請求書を出すと消費税分の値引きを迫られることがある」(土木)、「経営が赤字なのに消費税は2倍に」(飲食)など、怨嗟の声があふれています。
10%で全く転嫁できず59.0%
総合経営判断DI(「良い」から「悪い」を引いた値)は前期比マイナス1.5ポイントで▲49.6。業種別に見ると金属製品・機械器具製造業、流通・商業、サービスの3業種で悪化。「悪い」「やや悪い」という認識は約6割に上っています。
売上DIは前期比マイナス2.4ポイントで▲38.1、利益DIは前期比マイナス2.9ポイントで▲49.9とそれぞれ悪化している一方、原材料・商品の仕入れ値DIは65.3と前期比でほぼ横ばい。今期も7割近い中小業者が「上がった」と答え、物価上昇に伴う原材料の高騰が中小業者を苦しめていることが示されました。
「税率10%なら廃業」悲痛な声も
消費税の転嫁状況では、「完全転嫁できない」が44.3%、消費税率が10%になった場合の転嫁見通しでは「完全転嫁できない」が59.0%と、消費税が中小業者の経営を圧迫する実態が浮き彫りに。売上高が低いほど転嫁できていない割合が高く、「廃業するしかない」の深刻な声も寄せられています。
消費税率が10%になった場合の経営見通しでは、「売り上げが減る」47.0%(「売り上げが大幅に減る12.0%」を含む)。「利益が減る」32.9%と、10%になれば今まで以上に厳しい経営を強いられることを懸念しています。
全国商工新聞(2015年11月30日付) |