消費税 過半数が転嫁困難 「10%なら廃業」13.7%=2012年上期営業動向調査
全国商工団体連合会(全商連)付属・中小商工業研究所は2012年上期「営業動向調査」を実施しました。過半数の事業者が消費税を完全には転嫁できず、デフレ下で消費税の増税が強行されれば、地域経済を支える中小業者は存続が危ぶまれる実態が明らかになりました。
今期調査では、消費税の特別調査を実施しました。消費税を売り上げ・単価に完全には転嫁できていないと回答した事業者は56.4%に及びました。業種別では、宿泊・飲食業が最も悪く、73.1%が完全には転嫁できず、次いでサービス業が続き、競争が激しい業種ほど転嫁が困難になっています。
また、売り上げが小さい事業者ほど転嫁できない割合が高くなっています(図(1))。売上高「1000万円〜1500万円」では60.0%、「1500万円〜2000万円」では56.0%が転嫁できていないと回答しています。身銭を切って納税せざるを得ない実態が浮き彫りになっています。
消費税が増税された場合の転嫁の見通しについては、73.0%が完全には転嫁できないと予測。税率が10%になった場合の商売への影響は「利益が減る」(33.2%)、「売り上げが減る」(31.6%)、「売り上げが大幅に減る」(16.2%)、「廃業を考えざるを得ない」(13.7%)と、中小業者の経営をつぶしかねない危機的状況が示されています(図(2))。
自由回答欄では、消費税が転嫁できない実態や増税後の先行きの不安が多数を占めました。被災県の中小業者は、「給料を支払うのがやっと。毎日の売り上げも心配で消費税が10%になったら想像もつかないくらい恐ろしい」(宮城・印刷)、「原発問題を早く収束できないと今後の商売が困難。消費税10%は復興の妨げ」(福島・小売)など、経営の存続を危ぶむ声も寄せられました。
経営判断DI(総合的に見た今期の経営が「良い」「やや良い」から「悪い」「やや悪い」を引いた割合)は、▲64.8(前期▲67.5)と若干改善されました。しかし、「悪い」と回答する業者が72.2%、売り上げDI(売り上げが「増えた」から「減った」を引いた割合)は▲50.6(前期▲55.6)、利益DI(利益が「増えた」から「減った」を引いた割合)は▲58.6(前期▲61.0)と、若干の改善傾向に転じているものの、水面下の横ばい状態が続いています。
地域別には、北海道・東北の売り上げDIが14.6ポイント改善していますが、利益DIは1.2ポイントの改善にとどまり、売り上げが改善しながらも利益増に結びついていません。
次期の経営判断DI(「良くなる」から「悪くなる」を引いた割合)は、▲46.2(前期▲45.0)と若干悪化。業種別には、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業、金属製品・機械器具製造業、サービス業でマイナス幅が拡大し、とりわけ宿泊・飲食業では10.9ポイントのマイナス増です。
「経営上困っていること」は(1)仕事・顧客の減少(62.7%)(2)消費税問題(27.1%)(3)低い下請単価(23.1%)(4)超低価格品の横行(21.9%)です。
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〈調査方法〉
2月下旬から3月中旬にかけて、全国の民主商工会(民商)会員1536人を対象に実施し、694人から回答が寄せられました。(有効回答率45.2%)。
全国商工新聞(2012年4月30日付)
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