遠い回復、先行きに不安 全商連2010年下期営業動向調査
中小業者の景況は回復感が弱く、長期不況が続いている-。全国商工団体連合会(全商連)付属・中小商工業研究所の2010年下期「営業動向調査」の結果がまとまりました。
自由回答「ひとこと」欄には、進行する円高・デフレ影響への先行き不安の声が寄せられています。調査は、8月下旬から10月上旬にかけて、全国の民主商工会(民商)会員1420人を対象に行い、701人から回答が寄せられました。
「打つ手なし。じっとガマンをしているが、その向こうに何があるのか分からない」(金属製品)、「『景気は踊り場』などの発表と現実の実感との差はなんなのか」(大衆酒場・スナック)、「よく商売を続けているなと、ある意味(自分を)褒めてやりたい」(総合建築)-。「ひとこと」欄に書かれた中小業者の景況は、依然としてはるか水面下にあることを浮き彫りにしています。
経営判断DI(総合的にみた今期の経営が「良い」「やや良い」割合から同「やや悪い」「悪い」割合を引いた数値)は、マイナス幅が前回より3・7ポイント縮小し、▲70.8となりました。3期連続のマイナス幅の縮小ですが、「良い」「やや良い」との回答はわずか6%。「やや悪い」「悪い」が76.8%と圧倒的多数派で、「業況が持ち直した」と言える状態ではないことを示しています。
売上・利益も大きく低水準
売上DI、利益DIについても同様に、前回調査からマイナス幅の縮小を見せましたが、売上DI▲62.0、利益DI▲66.7と、いずれも大きく低水準です。単価・マージンDIは、前期▲41.2に対し今期▲40.8とほぼ横ばいで、リーマン・ショック以降の低水準で推移。資金繰り状況では、「窮屈」「見通しが立たない」との回答は微減となりましたが、「余裕ができた」と回答した人は横ばいの1.7%で、改善は見られませんでした。
業種別には、とりわけ宿泊・飲食業で経営判断、売上、利益、単価DIが悪化を示し、リーマン・ショックを契機に急落した2009年上期の水準にまで落ち込む深刻な状況が示されました。
次期経営の見通しは、「悪くなる」との回答が59.3%、「良くなる」はわずかに7.0%です。さらに、売上が「増えた」と回答した人でも、次期は「悪くなる」が「良くなる」を10%以上上回る34.9%です。
先行き不安について、「ひとこと」欄に寄せられた声は「急激な円高や長期の不況で、取引先の中小企業が倒産や整理され、長期的に暗い展望」(設備工事)、「円高を理由で単価の値下げをよく言われる」(一般機械)、「円高は値が下がりこたえる。次の二番底が来たらどうしよう」(廃棄物処理・修理・整備)、「デフレが全然直らない。先行きの見通しが悪い」(飲食料品小売)、「履物業界では、産業の空洞化が進んでいる。デフレのため販売価格への転嫁は難しい」(化学製品)、「価格競争が激化。大手企業はそれを利用してコストダウンを推進。ここにきて海外移転も増加」(電気機器)などです。
調査時の1ドル86〜83円から、円高はさらに進行しています。円高の是正のためには内需中心の経済政策へ転換を図ること、大企業の大もうけを還元させ、下請けいじめを是正させることが求められます。
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