なるほど経済(36) 問われるアベノミクス
安倍首相は11月21日、自らの政権を延命するために国会を解散し、14日に衆議院選挙が行われることになりました。今回の突然の総選挙で問われるものは何か、アベノミクス=安倍内閣の経済政策は、日本経済に何をもたらすか、あらためてその意味を考えてみましょう。
進む景気後退と格差拡大 日本経済を深刻な危機に
GDP2期連続マイナスの意味
安倍首相は「消費税の10%への増税延期」と「アベノミクスへの国民の信」を問うのが解散・総選挙の大義だと主張しています。
しかし、今回の総選挙で問われるのは、消費税増税やアベノミクスだけでなく、秘密保護法や集団的自衛権、原発再稼働など、国民の反対の声を無視して安倍政権が強行してきた2年間の政治路線そのものです。
安倍首相は、4月の消費税増税のためにGDP(国内総生産)実質成長率が2期連続でマイナスになった、それで次の増税は延期するなどと言います。
しかし、第一に、4月からの増税に対し、国民があれだけ反対して景気後退の懸念の声を上げたのに、「影響は軽い」と強行した安倍内閣の責任はどうなるのか。
第二に、GDPの2期連続マイナスは、確かに増税の影響は大きいが、それだけが原因ではありません。安倍内閣の経済政策そのものが原因です。
第三に、増税延期を掲げながら、18カ月後には「必ず実行する」というわけですから、増税路線の押し付けはより鮮明です。
安倍首相の経済政策=アベノミクスについて言えば、当面の景気後退の様相が、その誤りを証明しています。この2年間に「景気の二極化」が進み、大企業や大資産家が利益を大幅に増やしているのに対して、多くの労働者・中小業者・農民などの暮らしはいっそう悪化しています。
「四つの崖」へと向かう危険性も
しかし、アベノミクスの評価については、国民の暮らしや経営に対する当面の災厄だけではありません。日本経済を長期にわたって深刻な危機に陥れる恐れがあります。
アベノミクスのもたらす経済的な危機=「日本経済の崖」(崖から落下するように日本経済が悪化するというたとえ)は、少なくとも、次の四つの方向から、次第に差し迫りつつあります。
「第1の崖」は、実体経済の新たな景気後退が始まり、これまで日本ではあまり経験しなかったような大不況に落ち込む危険です。「デフレ」脱却どころか、まさしく日本経済は、不況下の物価上昇、最悪のスタグフレーションに入り込む危険が迫っています。
「第2の崖」は、アベノミクスの第1の矢、「異次元の金融緩和」の下で内外の資金が流入して株価を押し上げてきた「ミニ・バブル」がはじける時、日本の金融市場が大きく揺れ動き、最悪の場合は、日本で金融パニックが起こる危険です。
「ミニ・バブル」の破綻は、いつ、どのようなきっかけで起こるか、どのような規模で起こるか、それをあらかじめ予測することはできません。しかし、バブルはいつか必ずはじける時がきます。
「第3の崖」は、日本経済の基礎的条件である国際収支、財政収支、家計収支が同時的に赤字になり、日本経済の国家的信頼が大きく下落する危険です。そうなれば、国債の暴落、長期金利の暴騰、円レートの暴落、株価の暴落など、金融市場の危機的な混乱が起こりかねません。
国民にとって警戒すべきことは、こうしたパニックを逆手にとって、支配層が大増税、福祉大削減、労働条件大幅切り下げなどの反動政策を、一挙に強行してくることです。
「第4の崖」は、「集団的自衛権」の行使容認などの安倍内閣の軍国主義復活路線が、アジア諸国、世界各国との対立を深めており、それは日本経済の行方にとっても、まさに大きな「崖」になるという危険です。
目前の総選挙を倒閣の突破口に
8月に消費税増税後の4-6月期のGDP成長率が大幅マイナスになった時、私は、本欄で「GDPの落ち込み」の意味について解明し、最後に次のように述べておきました。少し長くなりますが、あらためて引用しておきましょう。
安倍内閣は、来年の通常国会では「集団的自衛権」を実行する法案審議も強行しようとしています。政治的には、安倍内閣批判の声は、これからますます高まっていくでしょう。
安倍内閣は、アベノミクスへの国民の「期待」が崩れて、国民の間で「安倍内閣打倒」の声が広がることを強く恐れています。(中略)
今秋から来春にかけては、戦後の日本の歴史を画するような国民的たたかいの時期になりそうです。
目前に迫った総選挙は、安倍内閣を包囲するたたかいの跳躍台であり、同時に来年に向けての長期的たたかいの突破口にしなければなりません。
全国商工新聞(2014年12月8日付) |