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消費税増税は参院選の大争点 |
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安倍首相はテレビ番組で「私たちは秋に抜本的な(税制)改正をおこなう。消費税を上げないなんて一言も言っていない」と述べるなど、消費税率の引き上げを決める可能性を示唆しました。「消費税増税のはぐらかしをやめ、国民の審判をあおげ」と主張する2人の業界幹部に話を聞きました。
自民大敗で、増税なしに
長野県クリーニング生活衛生同業組合理事長 加藤文人(59)さん
消費税は大変だ
消費税の増税には絶対反対です。私たちの組合員のなかでも、消費税の免税点が下がり売り上げ1500万円くらいの人が一番苦しいと言っています。私たちは地域密着でやっていますから、親の代から孫の代までお店を愛してもらっています。だから消費税をお客さんからもらえない所も多いんです。消費税を払うために銀行から金を借りている人もたくさんいます。消費税はこのままいけば8%、次は10%になるのではないでしょうか。増税し
たいなら以前あった物品税のようなものにし、ぜいたく品にかければいいんです。
先日、長野市で開かれた「消費税と税制を考える各界懇談会」に参加して訴えたんです。われわれクリーニング業界は、パパママショップが約7割、売り上げ1000万円以下が27%、年齢的にも60代が一番多く、後継者がいるのは5割以下。このままいけばクリーニング業界は衰退の一途です。組合でも必死に立て直し策を講じていますが、消費税増税はわが業界にとっても大きな打撃になることは間違いありません。
低価格競争で
クリーニング業界は今、低価格競争になっています。価格は長年据え置くか、逆に下げています。当然、売り上げも下がる。
安さだけを売りにする低価格競争で、汚れ落としやアイロンがけなど、クリーニング業界全体がお客さんにこんな程度と思われてしまっているのではないかという危機感があります。
長野県松川村のバス会社が2月、高速道路で大きな事故を起こしたのを覚えていますか。あの会社はつぶれてしまいましたが、規制緩和でバス会社が乱立し、運賃をたたかれるだけたたかれて、本来一人8000円でも大変なのに、5000円でやって運転手は睡眠時間もとれなかった。その辺のバス会社はみんな明日はわが身だと言っています。耐震偽装の姉歯問題だってそうでしょう。安ければ安全なんかどうでもいい。大店法を規制緩和して、郊外にどんどんスーパーができて、酒屋も商店もなくなってしまった。
小泉さんになってから人の心が変わりましたね。アメリカ追随、大企業には規制緩和、国内では価格競争…、ようするになんでも金の社会になりました。
われわれの業界は、機械やノウハウの共有化を推進するとともに、品質アップのためのクリーニング研修制度を進めています。地域密着だからこそできる防犯パトロールも積極的に引き受けて頑張っています。われわれが生き残っていくにはこの方向しかないと思います。だからこれ以上、増税だ、規制緩和だと中小業者をいじめないでほしいと言いたいんです。
私はこの間、ラジオを聴いていて腹が立ったことがありました。経団連会長でキヤノンの御手洗社長が、社員に「グローバル化でわがキヤノンがつぶれたらどうしますか。キヤノンがあるから皆さんはご飯が食べられる」と話しているのを聞いて、まったく逆じゃないかと。大企業やこの国は国民を大事にしていない、粗末に扱っています。年金問題だってそうじゃないですか。このままではアメリカの植民地になってしまうのではないか。
政権つぶす好機
いま政権をつぶすチャンスです。消費税を増税させないために、野党に過半数をぜひとってほしい。おそらく自民党が大敗したら、増税はおいそれとは言い出せないでしょう。
長野県クリーニング生活衛生同業組合
「生活衛生関係営業の適正化及び振興に関する法律」に基づき、長野県内のクリーニング店オーナーを組織。組合員数215人。全国クリーニング生活衛生同業組合連合会は会員1万4000人。
世論動かし、全国騒然に
全国建設労働組合総連合会書記長 佐藤正明(64)さん
私たち全建総連は6月7日、都内で中央総決起集会を開き、全国から5400人が参加して参院選を前に消費税増税反対、大衆増税反対をアピールしました。全建総連が増税反対だけの要求を掲げて集会を開いたのは消費税導入以来です。この間の毎年の増税、そして免税点が1000万円に引き下がり、ほとんどの建築業者が課税業者になり、「もうこれ以上の負担には耐えられない」と、昨年1月から全国キャラバン宣伝行動にとりくんできました。
増税隠しをやめよ
消費税は最悪の不公平な税金、取りやすいところから取る税金です。ですから導入時には内閣が吹っ飛びました。政府は消費税増税を参院選の争点にしたくない。だったら私たちの側が積極的に争点に引き上げなくてはいけません。世論を喚起し、全国騒然となるような運動をつくりたい。
外注化で無権利に
消費税が導入されて、アウトソーシング、外注化がまん延してしまいました。職人を手放して外注扱いにすれば、消費税が節約できるからです。
労働者の権利、労働運動の面から見ても消費税は大きな問題です。偽装請負が横行し、生産手段もない、自分で意思決定すらできない「事業主」が大量に発生しています。事故やけがが起きてもすべて自己責任、全くの無権利状態です。しかし、ゼネコンは外国に行けば、直接雇用でやっているんです。
まさになんでもあり。強きを助け、弱きをくじく仕組みです。
応能負担の原則
先日、「骨太方針」が出されましたね。消費税、所得税、法人税を抜本的に見直すと言っています。要は、法人税の実効税率を30%に引き下げて、株などの金融資産課税は減税したままです。
弱肉強食が進めば、日本の将来は豊かになるのでしょうか。とんでもありません。1日1万2000円前後の手間賃で、せいぜい1カ月25万円。そこから経費も出して、まともな生活ができるでしょうか。
今の税制のあり方は、所得の低いものから税金をむしりとって、大企業や金持ちを優遇し、弱肉強食、格差拡大をむしろ拡大・助長しています。
担税力のある人が負担するという「応能負担の原則」、税制の考え方の基本に立ち戻るときです。
国民の審判を
自民党は増税隠しをやめて、堂々と国民の前で審判を受けるべきです。
年金記録漏れも全くひどいものです。「100年安心の年金」と言ってこの間、「改正」したばかりではないですか。
そしてその裏に隠れているのが憲法の問題です。
重要な参院選
そういう意味で、今度の参院選は、増税、貧困と格差、日本と世界の平和の問題、環境の問題も含め、建設労働者だけでなく、国民生活すべてがかかった、非常に重要な選挙なのだということを国民や組合員に訴えていきたいと思っています。
全国建設労働組合総連合(全建総連) 全国の建設労働者、職人からなる都道府県ごとに組織された53の組合の連合体。日本の労働組合のなかで4番目の規模で、組合員数70万8000人。 |
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