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  トップページ > 中小施策のページ > 政府 > 全国商工新聞 第2928号 5月31日付
 
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2010年中小企業白書の特徴=足立基浩教授


 今回の『中小企業白書』(以下、白書)は、第1部「最近の中小企業の動向」、第2部「中小企業の更なる発展の方策」の2部構成になっている。なお、第1部は「国内制約が高まる中での新たな展開」と「国外の成長機会の取り込み」からなっている。
 以下、2010年版白書の特徴と問題点を述べたい。

◇    ◇

 第1部、第2部において、白書は(1)業況は非製造業で緩やかに回復しているが、精密機械と一般機械で足踏みしている点、また(2)資金繰りDIは持ち直しの動きが見られるが、依然その水準は低い点など、景気がまだまだ足踏み状態であることを認めている。また、それに合わせた政策提言も行っている。高度な分析技術を駆使して、提言を行っている点は評価したいが、以下の面でいくつかの課題が挙げられる。
 まず第1に、中小企業のセーフティーネットについてである。

 変化への対応言及が弱い
 白書ではあまり言及されていないが、急激な市場環境の変化に対する中小企業の対応策、つまり平時におけるセーフティーネットの整備に対する言及が弱い。リーマンショックが結局は金融部門の信用収縮をもたらし、地域金融を逼迫させている現状を見れば、「金融環境の劇的な変化」と「企業の集積の変化」のネガティブな関係性についての分析が必要である。つまり、地方から都市部への人材流出を基本とするスパイラル的衰退について、なぜその現象に歯止めがかからないのか、さらに説明がほしいところである。

 競争力あるものへの支援
 第2は、平成22年度の中小企業施策について、「企業そのものが力をつける」必要性から、中小企業庁は「高度化に関する研究開発に対する支援」などを用意していて、基本的には企業の競争力強化に対する支援が中心となっている。しかし、貸付関連の支援はあるものの、基本的には年々変化の激しさが増すマクロの経済に対し期限付きの策となっている。足腰の強い中小企業育成のためにはセーフティーネットの長期的なシステムの構築も必要である。

 輸出けん引には限界が
 第3は、白書の第2部で触れられている世界貿易の現状(特にアジア)と中小企業のあり方にについてである。白書では国際貿易のメリットを強調しているが、デフレと円高が急速に進む中、輸出けん引型経済には限界がある。海外進出の際にも年々為替のボラティリティー(変動)が増す中、中小企業では対応しきれないさまざまなリスクが多数存在する。さらに、海外進出は国内産業の空洞化を招く可能性も高い。現在必要なのは足腰の強い内需成長策であり、循環型の経済構造のメリット・必要性を今一度確認する必要がある。
 こうした問題に対しては縦割り行政ではなく、他省庁(厚生労働行政)を巻き込んだ中小企業の施策を期待したいし、そうした施策を実施するうえでの組織の課題についても、白書(施策)に盛り込むべきであろう。

   
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