全中連が7省庁と交渉・新政権に要求実現迫る
「中小企業予算を増やして」「地方税の強権的な徴収はやめよ」―。全国中小業者団体連絡会(全中連)は2日、新政権誕生後、初の政府要請に取り組み、金融庁、中小企業庁など7省庁と交渉。厳しい経営状況を訴え、金融機関の貸し渋り、貸しはがし、地方税の強権的な徴収行政、国民健康保険制度の改善などを迫りました。
下代法の運用改善を=中企庁
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貸し渋り、貸しはがしや下請けいじめをやめさせるための指導を求めた中小企業庁との交渉 |
中小企業庁との交渉では、貸し渋り、貸しはがしの是正、不公正な取引を禁止するための法整備、「下請中小企業振興法」に基づく監督強化、中小企業予算の増加などを要望。「下請代金遅延等防止法」の運用について「違反行為の申告者には希望があれば審査結果を知らせる。審査期間は原則1年となっているが、事案により必要があればさかのぼる」と表明しました。
また、「日本経済を支えている中小企業に激しい波が襲っている。景況調査では上向いているが、経営状況がよくなっているという声は聞かれず、数字だけでは判断できないと思っている。中小企業施策が重要」との認識を示しました。
貸し渋り、貸しはがしに関連して「融資が実行できない場合はその理由を示し、経営相談にも親身になって相談に乗る必要がある」「人間の尊厳を踏みにじるような取り立てはよくない」と回答しました。
参加者からは「試作品作りへの助成制度があっても活用できない。機械メーカーを助けるだけ。これから年末に向けてすさまじい勢いで倒産・廃業に追い込まれるような状況。町工場への直接支援は緊急切実」「不公正な取引への被害救済を申し立てても、審査結果が申告者に報告されず、『損害金額』が返済されているかどうかも確認されていない。運用の強化を」などと訴えました。
返済猶予法を=金融庁
金融庁交渉では、亀井金融担当相が11月の臨時国会に返済猶予法案を提出するとしていることに触れ、「実現に向け努力してほしい」と強く要望。貸し渋り・貸しはがしの防止と返済凍結については大臣、副大臣、政務官の指示の下で「政務官をトップにしたグループで対応策を検討中」と回答しました。
参加者は貸し渋り・貸しはがし、条件変更に応じない金融機関への指導や金融検査マニュアル(中小企業編)の改定など、金融行政の見直しなどを求めました。
また、制度融資で返済据え置き期間を2年間としたにもかかわらず、応じない金融機関があることを指摘。指導を求めるとともに、過去に免責を受けたとしても融資は可能であることを「運用事例集」に明記するよう訴えました。中小業者への融資を増やすために、「どうすれば融資可能なのか」という姿勢に金融機関が立つように指導することを要望しました。
公契約法制定を=国交省
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国交省に建設業者の仕事の確保を、と訴える菊池大輔全商連副会長 |
国土交通省には公契約法の早期制定、建設業者の仕事確保、耐震補強・太陽光パネル工事など省エネ改修工事への助成などを求めました。
山形県内の建設業者は「設計労務単価が12年連続して下落し、建設に携わる技術者も激減している」と実態を告発。公契約法の制定とともに、「建設業が持続可能となるような労務単価基準の見直し」を要望。また同県内の5自治体で広がっている“建築祝い金制度”(地元大工に発注した場合、自治体が祝い金を施工主に支給するもの)が予算の30倍もの経済効果を広げているとし、国も具体的な仕事おこしの知恵を絞ってほしいと求めました。
埼玉県内の設計士は太陽光パネルの設置をメーカー仕様で行った場合、屋根に穴を開けるため雨漏りなどの被害が出ることを指摘しました。その補償は取り付け業者に回ってくるとし、消費者を保護する立場からもメーカーへの指導を行うよう要望。耐震補強改修工事でも入札価格が低く、仕事を受けるほど赤字になるとし、実態調査を行うよう要望しました。
滞納者の実情見よ=総務省
総務省では、地方税の強権的な徴収行政について、納税者の権利を守る立場で各自治体に適切な「助言と情報提供をすること」などを要求しました。
参加者は、滞納者の実情を把握することなく、機械的かつ強権的に差し押さえ処分が進められている実態を次つぎと訴え。埼玉の参加者は徴収猶予申請が不許可になった直後に業者が自殺したことを告発しました。
「各自治体は地方税の徴収において、納税者の実情を100%把握することに努力をするべきだ」と回答。「徴収猶予」や「滞納処分の停止」など納税緩和措置の徹底と滞納者に対して機械的な処分をするべきではないとの考えを示しました。
全国各地で設立されている「地方税整理回収機構」については、地方税滞納問題を抱える自治体が増加する中で、処分の実施や情報交換などを自治体間で共同し解決することは「問題ない」と回答。法的権限がない任意組織の機構が納税者と接触していることについては、「問題がないか調べる」と答えました。
滞納処分のノルマ問題については「調査する」と約束しました。
また、日本郵政と日本通運の事業を統合する計画で、日本通運との請負契約を解除された問題で、下請け事業者の地位保全などを求めました。総務省は「所管は日本郵政の部分だけ」とことわりつつも、「実態を調べる」と回答しました。
強権的徴税やめよ=国税庁
国税庁では、払いきれない税金の金策に走り回る納税者に対して、強権的に徴税を迫る国税当局の実態を告発し、是正を求めました。
また、収支内訳書の未提出を理由に所得税の還付を保留している案件(京都)や、夫婦の寝室から子ども部屋までのぞいて回った税務調査(福岡)などに抗議しました。
長官官房総務課調整室の福居英雄課長補佐は、個別の事案は関係課に伝えることを約束。滞納処分については「個々の実情をよく把握し、納税緩和措置は適用要件に認められる事実があるか把握する」ことを改めて確認しました。
国保料(税)減免を=厚労省
厚生労働省交渉では、国保料(税)が高すぎて払えない実態などを告発。「国保料滞納で差し押さえを受け、融資が受けられず商売を続けられない業者がいる。差し押さえを解除するよう指導を」「経営悪化を理由にした国保料減免を全自治体で実施して」などと訴えました。
また、10月より年金から国保料や住民税の天引きを始めた問題で、天引きは選択制にするよう求めました。
交渉では(1)社会保障費の予算を増やすとともに、生活保護の母子・老齢加算の復活、障害者自立支援法を廃止(2)後期高齢者医療制度の廃止(3)国保料(税)減免の拡充や、資格証明書発行の中止、窓口で払う医療費の一部負担金減免の実施(4)最低保障年金制度の創設‐などを求める要望書を提出しました。
納税者権利憲章を=財務省
財務省では、(株)政策金融公庫が本来の役割を発揮し、積極的な融資姿勢をとるよう指導を要請。東京や熊本の参加者が「融資相談に行くと『うちは普通の銀行』と言われて門前払いされる」などの実態を告発。「審査内容を一つ一つ把握することはしていないが、実情は分かった。訴えがあったことは公庫に伝える」と答えました。
納税者権利憲章制定については、当初「すでに税法により保護が図られている」としましたが、民主党が公約に掲げ、藤井財務相が制定に意欲的であることを指摘すると「大臣と議論し、指示があれば従う」などと回答しました。
また、「納税者番号制は導入しないこと」「所得税法第56条を廃止すること」「消費税免税点を引き上げること」を求めました。
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