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大企業・大資産家優遇税制の実態―上
国策で大もうけの大企業、社会的還元の責務果たせ
富山泰一税理士に聞く

大企業・大資産家優遇税制の実態―下はこちら

 麻生首相は10月30日、3年後の消費税引き上げを宣言し、証券優遇税制の継続など、さらなる大金持ち優遇を打ち出しました。「逆立ち税制を放置して消費税増税なんてとんでもない」と批判するのは不公平な税制をただす会事務局長で税理士の富山泰一さん。大資産家・高額所得者減税の驚くべき実態を試算しました。
◇  ◇

 麻生政権は選挙目当ての景気高揚策として国民受けを狙った「給付金」を出してきました。その一方で、社会保障財源として消費税増税を3年後にと明言しました。ナショナルミニマムの充実を要求する国民に対し財源がない、充実するには消費税の増税が必要だというのです。わずかばかりのつかみ金で大きな税収を得ようとしているのは、まさに「エビでタイを釣る」何物でもありません。

▽なぜ財政赤字が拡大したのか
 今考えなければならないのは、なぜ財政赤字になったのかの原因を検証することです。それをせず対処療法的な政策を繰り返してはまた失敗します。財源不足に至った原因を私は三つの点をあげて検討したいと思います。
 第1は、政府の経済政策の失敗です。自公政権の「三つの経済失政」を上げることができます。一つは97年の消費税などの増税策です。二つには社会保障の連続的な改悪です。三つには大企業のリストラを応援する政治です。
 第2は、税収が少なかったことです。いざなぎ景気を超える長期の景気高揚が続きながら、税収は落ちこみました。その原因は、もうかっている企業や高額所得者から税金を取らず、逆にその層への減税策を続たことが税収不足を生じさせたのです。
 第3は、もうかっている企業がその利益を分配せず一人占めできるように、規制緩和などの仕組みを政府が推進してきたことです。
 非正規雇用の拡大など低い賃金で働かせる労務政策や、経費高で苦しんでいる下請け事業者への大幅な単価切り下げなど、景気高揚に逆行する事態が広がりました。

▽0・28%の大企業が64%の利益を独占
 消費税導入以降、05年までの間に大企業の内部留保増加額(蓄積)は109兆3000億円に。全法人数のわずか0・28%の大企業が64%の利益を享受(独占)しています(表1)。アメリカは全人口のうち1%の高所得者が90%の利益を享受していると、マイケルムーア監督の映画「華氏911」に出てきますが、すでに日本も同じレベルになっています。

 内部留保(蓄積)を増加させた要因の一つは法人税率の引き下げであり、二つには租税特別措置の温存・拡大です。これらの減税策は利益の多いものほど利用できるものです。現行法人税率は30%ですが、大企業の大半を組織する連結法人は実質税率が11・9%と約3分の1になります。大企業・大金持ちへの優遇をやめるだけで約21兆円もの増収が見込まれています(表2)。

▽企業の税・社会保障負担は最低ランク
 財界・大企業は「日本の法人税は高い」と言っています。これは低い国の法人税率だけの比較です。税・社会保障負担を合わせた「国民負担率」で見ると、OECD諸国で日本は最低ランクです。27カ国中日本は下から5番目で37・7%(06年)、最も高い国はデンマークの72・7%、2位はスウェーデンの71%です。この数字は国民全体の対国民所得比であり、高収益・高額所得者等が多額の負担をしない限り出てこない数値です。企業の税・社会保障負担の国際比較を見ても日本は最低にいます(表3)。
 少なくとも国の施策で大もうけしている大企業・高額所得者・資産家は、国から受けている大サービスへの受益に対し、それに対応する税金などを支払うべきであり、社会的還元を行う責務があるのです。そのことが消費支出を増加させ、景気を安定的に持続させることにつながります。

   
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