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「生存権を脅かす地方徴収行政の是正を求める
5・14緊急院内集会」の報告

2010年5月18日

日時 2010年5月14日(金)午前11時〜午後3時
場所 衆院第1議員会館第3会議室
応対者 総務省・自治税務局企画課・企画係長、同 事務官
参加者 61人(17県連、全商連役員、事務局、自治労連、年金者組合、税理士、地方議員、国会議員、同秘書/取材:赤旗、商工新聞)
※国会議員は日本共産党より3氏 佐々木憲昭(衆)、仁比聡平(参)、塩川鉄也(衆)

概要
1、6人が実態告発、中小業者、年金者、失業者など階層を超えて生活困窮が広がるもとで、自治体が広域化などにより徴収を強化し、法令が求める個々の実情把握を行うことなく、生存に関わる財産を機械的に差し押さえ、弱者を死に至らしめる事件さえ起きている深刻な事態を明らかにしました。
2、総務省は告発を受けてなお、「負担の公平から、納めるのが原則で当然。個々の実態把握は、守秘義務に抵触するため困難」との姿勢でしたが、仁比議員が告発された実態について調べて回答するよう追及しました。
3、納税者・住民、地方議員、自治体職員など多様な立場からの発言により、地方徴収行政をめぐる問題は、住民の暮らしと命を守る自治体本来の意義と関わる重要な問題であり、広範な住民と自治体職員の共同の運動が求められることを浮き彫りにしました。

以下、総務省回答について活用できる部分を強調しましたので、現場で役立ててください。

1、実態告発
○千葉・長生村議:村は年金者から年金振込先口座のほぼ全額を差し押さえ、当事者を餓死においやった。アパートを一見すれば生活困窮は明らかであり、本人は度々、納付相談をしていたにも関わらず、村は現状確認をせず、差押を行った。
○熊本・宇城民商:県「地方税徴収特別対策室」が主導し、市町で生活必需品を差し押さえ、ただちに公売する徴収行政が行われている。差押のステッカーを車に貼って滞納者宅を訪れるなど「滞納は悪」とキャンペーン。自殺者も出した。
○埼玉・戸田民商:戸田市は差押の現場写真をチラシに掲載するなど、納税者を威嚇し、徴収猶予の申請にも「家宅捜索をする」「まず給与の差押をする」など威圧的な対応。
○鳥取・県連:県は滞納税に充てるとして、本人の生活実態を把握せず、児童手当の振込みを狙い打ちで差し押さえた。
○北海道・旭川民商:旭川市は市税・国保料の一体徴収のため税務部を新設。納付交渉で「仕事は滞納保険料の徴収。商売が成り立つかは知らない」など暴言、差押を迫る。
○京都・個タク協組:京都市は、国保料の分納を求める相談者の訴えに、「毎月2万円以上の納付がなければ話にならない」とし、払えない実情をまったく聞かない。徴収猶予の申請書を求めても渡さない。

2、総務省の回答、質疑・応答(太字・下線部分が活用できる部分)
回答「孤独死など痛ましい話もあり、心を痛めるところがあるが、個別事案の詳細については課税庁ではないので承知しない。税についてはそこにお住まいの方が負担をしていくのが基本。当然のことながら、負担の公平から納めていただくのが大原則。
●生活に困っているなどの実情があれば、そういう点に配慮しながら徴収をしていかなければならない。差押財産の禁止、生活困窮や災害や病気などの事情については減免・徴収猶予が用意されている。滞納処分により著しく生活が困窮するなど、すべて丸裸になってしまうような恐れがある場合、個々の方の実情をよく判断した上で、滞納処分の執行停止ができることになっている。
●各地方団体については、個々の滞納者の方の事情をよく踏まえて、生活に困窮されるような方については、徴収猶予ですとか、減免ですとか、あるいは差押の執行停止など、きちんと対応していくべき。
●個々の事案を詳細に把握できないが、差し押さえるにあたって、その方にどういった収入があるのかとかは当然、調査をしているかと思う。正確な調査がなかなか事前に不可能な部分もあり、差押をした後に困窮が判明する可能性があるが、地方税法なり徴収法に基づいて差押解除をするなど、柔軟対応が必要。

 振り込まれた給付金等の差押は違法ではないが、生活に困ることがあれば、困らないようにする配慮が必要。人間の顔をした徴収、心ある徴収に心がけなければならない。個々の納税者の実態をよく把握した上で差押すべきと呼びかけ、指導している。
 色つき封筒は、催告書に気づかないことがないように、目を引く封筒をつくっている。
 市町村では徴収職員が少ない、一人あたり処理件数が多く、市町村側から積極的に納税者にアプローチすることは困難。納めていただくのが当然なので、市町村側から税金を負けるとか、猶予するとかを積極的に言うことはない。差押までには催告書などがあるはずなので、よく相談してもらうことも必要。市町村側では真摯に対応すべき。相談があれば厳しい事態も避けられると思っている。」

◆会場から「色つき封筒は人権侵害!」「差押禁止、滞納処分停止の検討など法に基づく行政執行の徹底を」「人間の顔をした徴収ができるよう、人員配置を保障すべき」「告発された実態についての総務省の見解を」「負担の公平と最低生活の保障のどちらが重いのか」
◆応答「当然、最低限の生活を保障するのは憲法上、保障された権利であり、最低生活の保障は負担の公平性を上回るもの。負担の公平性が原則だが、最低生活の保障という観点から執行停止だとか、負担の減免などのいろんな配慮がされている

◆仁比聡平参議院議員「総務省は実態を踏まえて、差押しないようにすると言うべき。参加されている皆さんは、実情を把握せずに、機械的に命を奪うようなやり方で徴収されていると言っているではないか。今、あげられた実例を関係自治体に問い合わせて、実態を把握しなさい。個別は把握できないというが、これらが自治体としてやっていいことかが問われている。国会での質問に対し、当時の与謝野財務大臣は『血も涙もなければならない』と言ったんですよ。
 自治体は地域経済の主役である中小業者を応援するのが仕事。つぶしたり、まして命を奪うことは、あなたたちの仕事じゃないじゃないですか。それに反することがやられているから、皆さんが上京して告発しているんだから、関係自治体に問い合わせて実情を把握し、ちゃんとコメントしなさい」

3、各分野からの報告と運動交流
 自治体労働者、専門家、納税者の立場から3人が報告しました。
○木村雅英・自治労連自治政策局長:住民のいのちと暮らしを守る、本来の自治体になるよう共同したい。徴収職場での目標管理をやめさせ、税制全体の研修を徹底させること、納税者権利憲章の制定や、減免ルール、徴収ルールの確立が必要。
○角谷啓一・税理士:告発された差押事例は違法であり、現行法による納税者の防御対策を強めることが重要。また、納税者基本権を保障する徴収手続と納税緩和取扱要領の法制化、滞納整理における納税者救済を含む、納税者権利憲章を確立すべき。
○米田 務・全商連常任理事:徴収猶予は申請を通じて、強権的徴収に抗議し、税務職員に徴収法制の精神を理解させ、厳しい生活実態を訴えることができる。埼玉・川口民商では交渉を重ね、「個々の実情をよく聞く」徴収行政に変化させている。

 最後に会場から5人が、「税金オンブズマンの取り組み」(長野・県連)、「市税を考える市民の会の取り組み」(群馬・前橋民商)、「全自治体の公的負担調査の取り組み」(宮城・県連)、「市税・国保の減免制度活用と拡充の取り組み」(神奈川・県連)、「滞納整理機構から納税者権利を守るたたかい」(静岡・県連)について発言しました。

   
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