<社会保険 加入指導強まる>
安心できる制度に 全商連が提案
安心して加入できる社会保険制度の確立を―。全国商工団体連合会(全商連)は5月、払い切れない社会保険料(協会けんぽ=健康保険、厚生年金)や、急増する年金事務所による差し押さえに苦しむ小規模企業の商売と暮らしを守ろう!と提案(リーフレット)を発表しました。社会保険料の負担軽減に向けた改善方向を紹介します。
5人以上の従業員を雇う個人事業所と、すべての法人事業所に加入が義務付けられている社会保険。従業員が病気やけがを安心して治療したり(協会けんぽ)、老後の生活を保障(厚生年金)するための制度で、協会けんぽの加入事業所は約165万社です。
しかし、重い社会保険料が払い切れず15万4013社が保険料を滞納(厚生年金、2012年度)。うち2万2556社に対し、年金事務所(旧社会保険事務所)から売掛金などの容赦ない差し押さえが横行しています。
最大の原因は、小規模企業の事業主の社会保険料負担が重過ぎることです。昨年4月の消費税8%への増税や、大企業・大資産家優遇のアベノミクスなどによって小規模企業の経営環境は悪化し、7割以上が赤字に。社会保険料を“払いたくても払えない”のが実態です。その上、社会保険料には「応能負担(支払い能力に応じた負担)」の原則が適用されません。
健康保険料(13年度)については、加入者の平均収入が最も低い協会けんぽの保険料率が全国平均で10.00%と最も高い負担率であるのに比べ、大企業の健康保険組合が8.635%、公務員などの共済組合が8.20%と低い負担率になっています(図)。
昨年6月に成立した小規模企業振興基本法(小規模基本法)は、小規模企業が地域経済に果たしている積極的役割を評価し、「事業の持続的発展」を図ることを国と自治体の責務と定めました。小規模基本法の付帯決議では「社会保険料が、小規模企業の経営に負担となっている現状があることに鑑み、(中略)小規模企業の負担軽減のためにより効果的な支援策の実現を図ること」を求めています。
小規模企業が必死に従業員の雇用を支えてきたの対し、大企業はこの間、非正規雇用への転換を進めて国民健康保険や国民年金に従業員を移行させ、莫大な社会保険料負担を逃れてきました。
こうした実態からも、小規模企業の社会保険料の負担軽減策を早急にとるべきです。全商連の「改善のための三つの提案」の実現を迫りましょう。
全国商工新聞(2015年9月14日付) |