生活福祉資金活用のポイント
全国生活と健康を守る会連合会事務局長
辻清二さんに聞く
金融機関からの融資が難しく、一時的に費用が必要な場合に資金を貸し付ける「生活福祉資金」。生活費や教育費などのほか、技能習得や中小業者が必要とする費用(生業費)の貸し付けも行っています。各地の民主商工会(民商)は、緊急保証制度や金融円滑化法など融資制度を活用しつつ、福祉制度の「生活福祉資金で、危機を乗り切ろう」と相談を始めています。制度の概要と活用のポイントを、全国生活と健康を守る会連合会事務局長の辻清二さんに聞きました。
Q1.生活福祉資金制度とは何ですか
A.低所得者や障害者、高齢者が、生活や仕事で「独立自活」するために資金が必要なとき、貸し付けができる制度です。厚生労働省は、生活保護を受ける前の自立を支えるセーフティーネットの役割を担っているとしています。
雇用情勢の悪化で失業者、低所得者が急増することが見込まれ、多重債務問題が深刻になっていることもあり、10月から制度が「見直し」されました。厚生労働省は効果的な支援を行うとして、従来の10種類の資金を「総合支援資金」「福祉資金」「教育支援資金」「不動産担保型生活資金」の4資金に統合。幅広く運用できるようにしたと説明しています。
Q2.自営業者も借りられますか
A.借りられます。貸し付けの対象者は、(1)貸し付けで独立自活できる低所得者(2)身体障害者手帳を持っている人(3)療育手帳の人(4)精神障害者福祉手帳の人(5)65歳以上の高齢者のいる世帯‐です。
(2)(3)(4)は所得制限がなく、それ以外は市町村民税非課税程度とされていますが、地域の実情に応じて都道府県ごとで違います。
自治体によっては、生活保護基準の1・5倍程度までの収入の世帯を対象にしているところもあります。
「総合支援資金」は、生活の立て直しのために継続的、一時的な資金の貸し付けを行います。生活支援費、住居入居費、一時生活再建費があります。
「福祉資金」には、自営業にかかわって「生業を営むために必要な費用」(貸付限度額目安は460万円)があります。
詳しい資金の種類や貸し付け条件については、「商工新聞」(12月7日号)に掲載された表を参考にするか、民商に問い合わせてください。
手続きでは、まず、地域の民生委員や各市町村の社会福祉協議会に相談し、必要な書類をそろえることから始めるのがよいでしょう。
Q3.注意すべき点はありますか
A.(1)貸付金がおりるまでに時間がかかります(約1カ月から3カ月)。ただ、「教育支援資金」については、厚生労働省は入学金などの納付期限までに貸し付けするよう「通知」しています。
(2)「返済能力がない」などの理由で申請を認めない状況があります。
(3)民生委員の証明提出や資産などの調査で、10枚以上の申請書類を求められ、手続きが煩雑な点です。改善を求める運動が大切です。
生業を営むために必要な資金
北海道・帯広民商の会員 100万円が実現
北海道・帯広民主商工会(民商)のAさん=製造=は11月11日、生活福祉資金の「福祉資金」で「生業を営むために必要な経費」として100万円を借りることができました。材料の仕入れに充てる運転資金で生活福祉資金を活用した初めての例です。返済の可能性を明らかにしたことが決め手になり、「これから仕事を頑張って続けていきたい」と喜んでいます。
Aさんは過去に自己破産の経験があり、銀行や政策公庫などからの借り入れは無理とあきらめていました。帯広民商が10月に全戸配布した生活福祉資金の紹介ビラを見て、「利用できるのでは」と民商に相談に来ました。
社会福祉協議会(社協)に行くと、職員は社協が指定する金融機関を先に当たるよう指示。後日、融資ができなかったことを報告すると、申請書と合わせ、「生業資金事業実績計画書」と「資金繰り表」などを提出するよう指示されました。
申請書には材料等の仕入れに資金が必要なことや、現在の受注状況などを詳しく記入したところ、12日後に貸し付けが決定しました。
同民商では、派遣労働者のBさんも「緊急小口資金」を実現しています。
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