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  トップページ > 金融のページ > 商工ローン > 全国商工新聞 第2778号 4月16日付
金融 商工ローン
 
訴訟経ない救済に道
東京・北区民商会員
特定調停で過払い返還
東商連などこれまでの運動が実る
 東京・北区民主商工会(民商)の会員がこのほど、特定調停で金融業者から過払い金101万円を返還させる画期的な成果を上げました。東京商工団体連合会(東商連)は定期的に東京簡易裁判所と特定調停の運用改善について懇談をおこない、過払い金の返還を調停の場でできるようにと強く要請していました。

 過払い金の返還をかちとったのは北区民商会員の佐藤進さん(仮名・製菓業)。民商の金融相談会「虹の会」に参加しています。
 同会は、簡易裁判所の特定調停制度の活用を中心に、相談者同士が経験を交流、助け合いながら債務整理にとりくんでいます。  佐藤さんが借りていたのは丸井やニコス、サラ金など。売り上げの減少が続くなかで家賃など月々の店の維持費の支払いに困り、カードのキャッシングなどを利用し始め多重債務に陥り、昨年11月、会に参加するようになりました。  佐藤さんは、引き直し計算をすると過払いが明白でしたが、過払い金を取り戻すには過払い訴訟を提訴するしかありません。同会では経験者のアドバイスを受けながら何人もの会員が個人訴訟で勝訴し過払い金を返還させていますが、訴訟は法律知識をもとに書面を準備しなければならないなど、個人では相当なエネルギーがいる行為で、時間もかかります。  そこで佐藤さんは、なんとか調停の場で解決できないか粘り強く要請したところ、調停員から「試しに相手業者に過払い金の返還を聞いてみましょう」ということになりました。

 調停員に要請しあっさりと実現

 すると驚いたことに、丸井とニコスの2社が素直に「お支払いします」と返答し、あっさり調停での過払い返還が実現したのです。
 調停員はこれに気を良くしたのか、次には「異議申し立てが出るかもしれないが、残りの貸金業者に裁判所から17条決定(注)を出してみましょう」ということに。その後、この決定に対して相手の貸金業者から異議申し立てはなく2月、過払い金返還が確定しました。

 成果足がかりにさらに要請強め

 東商連が東京簡易裁判所とおこなっている特定調停の運用改善についての懇談では、毎回過払い金の返還を調停の場でできるよう要請。調停で債務の残った他社への返済や銀行返済などに過払い金を充てることで、さらに債務が減り生活再建に役立つからです。
 これは「債務者の経済的再生に資する」との特定調停の趣旨からも道理のある要請でした。  ところが簡易裁判所はこれまで「調停は債務の支払いを話し合う場で、過払い金を取る場所ではない」との主張に終始。明確に過払い金額が確定している場合でも、「過払いは裁判でやりなさい」と、調停員は返還の意思を業者に問い合わせることすら拒否してきました。
 佐藤さんの成果は、貸金業者を断罪する最近の最高裁の一連の判決や貸金業規制法の成立など、民商や対策弁護団、クレサラの会などがかちとってきた成果が反映しているといえます。  北区民商ではこの成果を足がかりに、すべての案件で特定調停で過払い金の返還が実現するよう、簡易裁判所に要請を強めることにしています。

17条決定による成果
高利引き下げ全国連絡会
代表幹事・弁護士 新里宏二

 特定調停法(2000年2月施行)の元になった考え方は、バブルの中で窮地に陥ったゼネコンの銀行への債務などを処理する仕組みを作ろうとするものでした。
 検討する中で、どうしてゼネコンだけを優遇するのかとの疑問が上がりました。そこで、包括的な自己破産に至る前の債務の整理方法として導入されたのが特定調停法でした。
 導入後は、本人による利息制限法による解決方法として予想以上に機能してきました。また、商工ローン手形取り立て禁止の事前措置を利用し、特定調停の申し立てをおこなうなど、当初予想もしない使われ方にまで広がっていきました。  過払い金返還もこの制度のなかで、できれば多重債務者をさらに救済できる仕組みとして大きく活用されることになるといわれてきました。
 今回の特定調停での過払い金返還の17条決定は、多重債務問題にとりくんできた者として高く評価されるものです。最高裁判決、貸金業規制法改正の動きが実務にも好影響を及ぼしたものでしょう。粘り強く要請した「虹の会」に敬意を払うものです。各地でも実践してみましょう。
 しかしいまだに、利息制限法の引き直しすらおこなっていない簡易裁判所があるといわれている事態も、早急に変える必要もあります。

 注・民事調停法第17条
 裁判所は、調停委員会の調停が成立する見込みがない場合において相当であると認めるときは、当該調停委員会を組織する民事調停委員の意見を聞き、当事者双方のために衡平(釣合)を考慮し、一切の事情を見て、職権で、当事者双方の申し立ての趣旨に反しない限度で、事件の解決のために必要な決定をすることができる。(以下略)


 
 
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