原水爆禁止世界大会 核のない世界へ運動の発展を
4日から開幕した原水爆禁止2012年世界大会広島は、5日に19の分科会が開かれ、6日の閉会総会には6800人が参加しました。原発ゼロをめざす声の高まりに呼応して、「核兵器のない世界」へ扉を開く運動をさらに発展させていくことが確認されました。閉会総会では全国商工団体連合会(全商連)国分稔会長が議長を務めました。
被災地から届いた大漁旗が翻り、核兵器廃絶の思いを強めた閉会総会
潘基文国連事務総長代理として参加した国連軍縮問題担当上級代表のアンジェラ・ケインさんは、「年齢、職業、国籍とは無関係に誰でも核兵器廃絶から利益を得る。核兵器廃絶という崇高な目標を達成する運動で皆さんのパートナーであることを光栄に思う」と事務総長のメッセージを代読。ケインさんからも「皆さんは歴史の正しい側にあり、世界中の多くの人々が皆さんを支持している」と力強い呼びかけがありました。
5日の分科会でも講演した福島県浪江町の馬場有町長は浪江町の全町民2万人以上がバラバラに避難している状況を話し「われわれの生活と社会全体を破壊した原発はまさに原子爆弾」と訴え、「日本は原子力関連の開発を放棄し、方向転換するとき」と語ると会場は大きな拍手に包まれました。
最後に「広島からのよびかけ」を会場いっぱいの拍手で採択。2015年のNPT(核拡散防止条約)再検討会議に向け、原爆写真展の開催とアピール署名で、大きな世論を広げるための行動提起を確認しました。
思い伝える気運高め Ring!Link!Zero実行委員会 青年交流集会
真剣に被爆体験に耳を傾け、フロアからの発言も相次いだ「青年交流集会」
全商連青年部協議会(全青協)も加盟する「Ring!Link!Zero実行委員会」は4日、「核兵器をなくす青年交流集会2012in広島」を開催し、全国から1000人が集まりました。被爆者の貴重な証言をもとに、「核兵器はなぜなくすべきなのか。そしてどうすればなくすことができるのか」を参加者全員で深めました。
13歳のときに被爆した中村雄子さんは原爆が投下された時、爆心地より2・8キロメートル離れた屋内にいたものの、爆風で飛び散ったガラスが体に突き刺さりました。また、爆心地の近くで、原子爆弾を落としたB29を見上げていた子どもたちの顔が、顔とは言えないようになってしまったことを声を詰まらせながら話しました。「私は助かった。亡くなった人たちのために生き抜いてきた」と語り、「いつまで伝えていけるか不安になることもあるが、二度と被爆者をつくらないために、皆さんと一緒に頑張りたい」と呼びかけました。
その後、日本平和委員会常任理事の川田忠明さんを助言者に、フロア発言を交えながら討議。川田さんは「8月6日に人間が何をされたのかを思い切り想像してほしい。粘り強く対話を重ね、人に伝えていこう」と訴えました。行動提起では、(1)被爆者を訪ねること(2)周りの人に核兵器をなくしたいという思いを伝えることが提起され、「地元に帰ってアクションを起こそう」という機運が高まりました。
東京・新宿民商からの参加者=肉・総菜製造販売=は、「今日の思いを民商青年部に持ち帰って話し合いたい。来年は自分より若い仲間を参加させたい」と話していました。
核廃絶の思い新たに 女性のつどい
広島の女性たちが作った原爆ドームを背景に平和への願いが語られた「女性のつどい」
5日に開催された「核兵器なくそう女性のつどい2012in広島」には、「世界中の女性たちと連帯し、核兵器のない世界へ」の呼びかけのもと、国内外の女性1000人が参加しました。
被爆者の証言では、矢野美耶古さんが、広島で被爆した当時の状況とその後の人生を語り「核兵器の廃絶と原発の廃炉を願ってやみません」と放射能によって苦しむ福島の被災者への連帯と共同を呼びかけました。
海外代表の発言では、ヨーロッパ各地に広がる青年の反核ネットワーク「核兵器廃絶世代(BANg)」のニナ・アイゼンハートさんが、「ヨーロッパでは青年の4人に1人が失業するなど経済危機による深刻な状況の中で、核兵器に膨大な資金がつぎ込まれている。経済危機と核兵器存続には共通点がある」と訴え「核兵器を存続させないために広島と長崎の経験を青年たちに伝えなくてはいけない」と語りました。
会場からも海外代表5人と全国各地から発言が相次ぎました。福島県の女子高生が制服姿で登壇し「原発事故で、学校の友達と離ればなれになり、放射能への不安に脅えて暮らしている。核兵器も原発もなくしてほしい」と涙を流し訴え、会場は共感と大きな拍手に包まれました。
初めて参加した広島北民商婦人部員=建築=は、「平和行進や平和に関する行事を見て、自分にもできることがあるのではないかと思って参加した。放射能の問題や福島の被災者の話しを聞き、核兵器廃絶への思いを新たにした。若い世代にこの運動を引き継いで、頑張ってほしい」と期待を語りました。
核抑止論の以上を正す 第12分科会 増税の背景を討論
核兵器が暮らしに与える影響の大きさを再認識した「核兵器廃絶とくらし」分科会
全商連が運営責任団体となった第12分科会「核兵器廃絶とくらし」には、全国から131人が参加しました。
神戸女学院大学の石川康宏教授が助言者報告。福祉を切り下げて軍拡、大企業には減税して消費税を上げるこの国の財政の在り方は、一体誰のための政治なのかと問いかけました。「核保有の現状維持と核抑止論」の背景には、世界の軍事費41%、核兵器関係だけで4兆円規模を使う米政府の経済的利益の追求と軍産政複合体の強固な存在があることをグラフなどを使って説明しました。
参加者からは、生活保護、国保料の値上げ、就職難など、あらゆる階層に貧困と格差が広がっている報告が相次ぎました。また、核兵器全面禁止アピール署名を被災地で若者からたくさん集めて参加した取り組みや、原爆パネル展示を大学内で行ったなど、日常の中で核兵器廃絶を取り組んでいることも交流しました。
神奈川・横須賀民商の会員=精肉店=は「店を休んで参加するのは大変だが、民商の原点である平和でこそ商売繁盛の思いで参加した。横須賀港は米軍の原子力空母ジョージ・ワシントンの母港となって5年。事故が起きれば3000万人が住めなくなる。母港化撤回の運動を続けていきたい」と決意を話していました。
エネルギーの未来語る 第10分科会
第10分科会では「原発からの撤退、自然エネルギーを考える」をテーマにシンポジウムが行われ420人が参加しました。
医療生協わたり病院医師の齋藤起さん、島根大学の上園昌武さん、国際反核法律家協会共同議長でドイツ反核法律家協会のピーター・ベッカーさんの3人と福島県浪江町の馬場有町長がそれぞれ講演しました。
ベッカーさんはドイツが脱原発に至った経緯を説明。「80万戸に及ぶ個人宅で太陽光エネルギーがつくられている」と現状を話しました。
馬場町長は原発事故当時の政府対応の遅さを批判し、「脱原発をめざし、自分たちの電気は自分たちの町でつくっていく」と自然エネルギーの集約化による復興ビジョンを示し、大きな拍手に包まれました。
「観光客などでにぎわうはずの鹿行の海岸線は信じられないくらいガラガラ。賠償も進まない」と話すのは、以前東京電力に勤めていたことがある茨城・鹿行民主商工会の会員=古本。「間違っていることを指摘したらひどい差別を受け、会社を辞めざるを得なくなった」と東電の無責任体質に怒りを込め、「これ以上危険な原発に頼ってはいけない。自然エネルギーに転換して地域経済も豊かに」と中小業者として思いを語りました。
全国商工新聞(2012年8月27日付)
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