被爆から62年。広島市で3日から始まった原水爆禁止2007年世界大会は9日、2010年のNPT(核不拡散条約)再検討会議に向け、「核兵器廃絶の明確な約束を核保有国に実行させる力を世界規模でつくり出そう」と参加者が決意を固め合うなか、長崎市内でフィナーレを迎えました。広島大会に2000人、長崎大会には1万3800人(開会、閉会総会合計)が国内外から集い、3カ国の政府とアラブ連盟を含め20カ国以上の海外代表が駆けつけた大会は、各国政府と反核運動の連帯がさらに深まり、核兵器廃絶に向け、新たなうねりをつくり出す場になりました。地元の民主商工会(民商)・県商工団体連合会(県連)は分科会要員や会場前テントで各地の参加者をもてなすなど、大会成功に尽力しました。(関連記事は2面、5面、7面)
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核兵器のない未来を見据えて「We shall overcome」を合唱する世界大会長崎に参加した青年たち |
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世界大会広島で開会宣言する全商連の国分会長 |
国分会長が開会を宣言
6日の世界大会・広島では、全国商工団体連合会の国分稔会長が開会を宣言しました。世界大会が核兵器廃絶を世界の大勢にする大きな力となり、2010年のNPT(核不拡散条約)再検討会議の準備委員会で、圧倒的多数の国の核兵器廃絶要求などに結実していることを紹介。日本では憲法9条を守る運動や「非核日本宣言」が全国に広がっていることに触れ、「国際的な核兵器廃絶運動のいっそうの前進、憲法改悪反対、米軍基地再編強化反対などのたたかいを大いに交流し、連帯を強め、発展させよう」と呼びかけまし
た。
長崎開会総会
7日の世界大会・長崎の開会総会では、国内外の熱気みなぎる報告に、参加者の半数以上を占めた青年たちが熱心にメモし、立ち上がって声援を送る姿が目立ちました。
特別報告した田上富久・長崎市長は、核兵器廃絶に向けて国内外のNGO(非政府組織)や自治体との連携強化を表明しました。
大会議長団の安斎育郎氏(立命館大学国際平和ミュージアム館長)が主催者報告。ブッシュ政権によるイラク戦争の破たんと世界からの孤立など世界情勢の大きな変化を指摘し、国際会議宣言(2面参照)の内容を紹介しました。
マレーシア、エジプトの各政府代表は、核軍縮と核不拡散のために核保有国の責任を厳しく批判し、非核兵器条約地帯の拡大とともに核兵器廃絶への強固な連帯と決意を表明しました。
日本被団協の田中熙巳事務局長は来賓あいさつで、原爆症認定集団訴訟の6地裁での勝訴に触れ、安倍首相の認定基準の見直し発言を批判。「国は控訴を取り下げ、国の息がかかった専門家ではなく被爆者の声に真摯に耳を傾けるべき」と1日も早い解決を政府に強く求め、参加者に支援を呼びかけました。
海外5カ国の団体が報告。韓国・民族和合運動連合の朱宗桓代表は「核兵器廃絶は正義のたたかいで国際社会の義務」と述べ、韓朝日三国の平和条約締結を求めました。中国人民平和軍縮協会の牛強秘書長は日中両国の青年が歴史を学び、未来に向け相互に理解する重要性を強調しました。
草の根のたたかいでは、神奈川・横須賀民商の鶴田光秋事務局長が米軍原子力空母の母港化に反対するたたかいを報告しました。
8日はフォーラムや分科会で多彩な討議や行動を展開しました。
民商も大勢参加
9日の閉会総会では、翻訳家で「非核日本宣言」運動共同提唱者の池田加代子さんが特別講演。「憲法の平和条項が真に実現するまで声を上げよう」と呼びかけました。若者と高校生が発言するプログラムでは、全商連青年部協議会の小林秀一副議長が司会を務めました。
大会では、国連と各国政府に核兵器全面禁止条約の協議開始などを訴えた「長崎からの手紙」と決議「長崎からのよびかけ」を採択。
日本原水協の高草木博事務局長は(1)今大会の内容を伝え、核廃絶の世論形成へ直ちにとりくむ(2)9月の地方議会向け「非核日本宣言」への賛同を全国の自治体に広げ、憲法守れの声を広げる(3)被爆者支援へのネットワーク構築‐などを行動提起しました。
全国の民商からも大勢が参加。兵庫・尼崎民商の田中穣二さん(72)=ソックス販売=は「世界の反核団体、若者グループの参加が増え、勇気をもらった」と語り、神奈川・平塚民商の小林淳子さん(64)=水道工事=も「『長崎』を忘れないとりくみが必要」と決意を新たにしていました。
また、全商連の岡崎民人事務局長が国際会議の議長を務めました。
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長崎市内の爆心地公園で狭川さん(左)の被爆体験に聞き入る青年たち |
被爆の実相 伝えて
大阪・淀川民商 狭川一三さん
「ふたたび被爆者をつくらない」と被爆の実相を語り継ぐ被爆者。その思いに真摯に応える青年たちの姿が大会期間中、さまざまに見られました。
大阪・淀川民商の狭川一三さん(72)=こんにゃく製造・販売=も語り部の一人として長崎大会の分科会が終了した8日午後、長崎市松山町の爆心地公園で青年らに語りかけていました。
狭川さんは62年前の8月9日、松山町に住んでいた叔母をはじめ親せき4人を原爆で奪われ、自身も8・3キロ地点で被爆。「今は元気だけど、いつ病気になるか」と常に健康不安を抱えています。
大会では「原爆認定行政の抜本的改善、被爆者との日常的支援連帯」の分科会に参加しました。
長崎がメーン大会のときは爆心地公園に来て親せきを弔う狭川さん。たまたま、公園に来ていた青年らに被爆体験を話し始めました。
京都から長崎まで友人と自転車で来たという竹井淳平さん(23)は、突然でしたが真剣に狭川さんの話に聞き入り、「被爆者の核兵器への脅威や憎しみを感じ、国の不条理を崩したい思いです」と背筋を伸ばして答えました。
狭川さんは強く言います。「久間発言や閣僚の核武装発言などは米国の『核の傘』の下で、核戦争を想定してのもの。核兵器の恐ろしさを分かっていない。青年は真剣に受け止めます。核兵器廃絶のために6・9行動などを日常的におこない、被爆の実相を知る機会をつくってあげないと」
原水爆禁止2007年世界大会
国際会議宣言<全文>
広島市で開かれた原水爆禁止2007年世界大会国際会議で採択された国際会議宣言は次の通りです。
原水爆禁止2007年世界大会国際会議は8月2日から5日まで広島で、20カ国以上から250人が参加して開催された。我々は世界のすべての人々に、核兵器のない平和で公正な世界を築くため、ともに行動するよう呼びかける。
核兵器の廃絶はいま世界の声となり、圧倒的多数の政府もその実現を求めている。
しかし、世界には現在なお2万7000発近くの核兵器が蓄積、配備され、多数の弾頭が即時発射態勢に置かれている。ヒロシマ・ナガサキの悲劇が示すように、核兵器の使用は人道に対する犯罪であり、人類は核兵器と共存できない。核兵器の廃絶は人類の生存にかかわる最重要課題である。
テロや大量破壊兵器拡散の脅威を理由に先制攻撃政策を強行してきた米国は、いま世界からも米国内からもきびしい批判にさらされ、孤立を深めている。
しかしなお米国は、イラクやアフガニスタンでの戦闘を継続し、おびただしい犠牲を生みつづけており、外国軍隊の撤退が緊急課題となっている。さらに、「核、非核の双方を含むあらゆる種類の軍事力」による威嚇と行使を公然と追求し、新たな核弾頭の開発や既存兵器の改良を進めている。先制攻撃戦略を補完する「ミサイル防衛」網配備や軍事基地網の再編・強化を世界的に推進し、ひきつづき平和への重大な脅威となっている。
核兵器によって安全や平和をまもるという政策の欺騙と破綻は明白である。新たな核保有国の出現は、いかなる理由であろうと認めることはできない。同時に、かつて核保有国で外交や軍事の中枢にいた人々も指摘するように、大国が核兵器に固執しつづけることが核拡散の要因ともなっている。核超大国は率先して核軍縮にとりくまなければならない。拡散問題の根本的な解決の道もまた、核兵器の全面禁止にある。
2000年の核不拡散条約(NPT)再検討会議で核保有国も合意した、核兵器廃絶の「明確な約束」の実行が、いま強く求められている。思想、信条、立場をこえて、市民社会と諸国政府をふくめ国際社会が共同して力をつくさなければならない。我々は、次回2010年のNPT再検討会議にむけて、すべての国の政府がすみやかな核兵器廃絶のための積極的行動を決意し、とりわけ核保有国が廃絶に踏み出すことを決断し、国連総会で核兵器全面禁止条約の協議開始を決議するよう強く提唱する。
我々は核保有国政府に対して、核による威嚇と核使用計画の放棄、即時発射態勢の解除、非核保有国への安全の保障と、核兵器開発計画や新たな核装備への更新、「ミサイル防衛」網配備の中止を要求する。
北朝鮮の核開発問題の平和解決と朝鮮半島非核化、NPT再検討会議で合意された中東非核地帯の実現など、これまでの合意の誠実な推進をすべての当事者に要求する。
世界の軍事費はこの間、1兆2000億ドルをこえ、国連ミレニアム開発目標をはじめ、貧困と欠乏、地球環境問題など世界的課題の解決を困難なものにしている。大幅な軍縮に取り組むことはすべての政府、とりわけ世界の軍事費の大半を占めている核大国の重要な義務である。
世界で唯一、核戦争の惨禍を体験し、戦争放棄の憲法を持つ日本は、国際政治の場で核兵器廃絶のイニシアチブを発揮し、「非核三原則」を厳格に実行することが強く期待されている。これに反し、「核の傘」への依存や核保有国議論、原爆投下の容認や過去の侵略戦争の正当化、在日米軍基地の再編・強化、さらには憲法改定などの動きがおきていることを、我々は深く懸念する。
これらに反対する日本国民の力強いたたかいが進んでいる。我々は「非核日本宣言」の運動を心から支持するとともに、憲法9条をまもり、非核・平和の日本をめざす運動に連帯を表明する。
世界の声となった「ヒロシマ・ナガサキをくりかえすな!」という被爆者のねがいを、世界のすべての国でさらにひろげ、草の根の運動、市民社会と政府の連帯した力で国際政治を大きく動かそう。第62回国連総会、2008年のNPT再検討会議準備委員会、7月の主要8カ国首脳会議(G8サミット)などさまざまな機会をいかし、行動を強めよう。
そのために「すみやかな核兵器の廃絶のために」の署名をはじめ、世界各地で原爆展や核被害展、被爆体験の聞き取り・継承・発信、平和行進など多様な運動をすすめよう。反戦平和、主権、軍事基地撤去、公正な社会をもとめる多様な運動との連帯をさらに広げよう。
核兵器のない平和で公正な世界の実現は可能である。未来をになう若い世代とともに、いまこそ行動に立ち上がろう。
ノーモア・ヒロシマ!
ノーモア・ナガサキ!
ノーモア・ヒバクシャ!
2007年8月5日
原水爆禁止2007年
世界大会国際会議
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