平和でこそ商売繁盛 戦争法案に反対
戦争法案廃案を求める声が衆議院での強行採決後、全国に広がっています。60年安保当時、「閉店スト」で安保条約に抗議した中小業者。今、各地で地域の共同を広げるとともに、「自分の言葉で、自分のやり方で、そして自分の商売を通じて」戦争法案反対を発信しています。
「はん(印かん)も命も世界にひとつ」=静岡・沼津
母親と一緒に店に来た中学生に手紙を渡す竹垣佳雄さん
「お帰りなさい。僕からのラブレターだよ」―。静岡・沼津民商の竹垣佳雄さん=印章・賞状書き=は経営するはんこ店近くの交差点で、信号待ちの小中高生にイラスト付きの手紙を手渡しています。
「これから社会の主役になられる小学生、中学生、高校生のみなさんへ」で始まる筆書きの手紙。空襲から逃げまどった太平洋戦争での自分の体験とともに、アメリカの戦争に日本も参戦する戦争法案の本質をつづっています。
「子どもたちとその両親に戦争法のことを一緒に考えてもらいたい。戦争は、一つしかない人の命を台無しにする。それを伝えたいのです」
印章彫刻の一級技能士として半世紀を超えてはんこ作りに関わってきた竹垣さん。「はんも命も世界にひとつ」。手彫りのはんこが一つしかないように人の命も一つしかない―。竹垣さんが大事にしている商売の信条でもあります。
印章(はんこ)作りや賞状書きを通して地域の人たちの歩みや人生に寄り添い続けてきました。生まれたばかりの子どもの健やかな成長を願う夫婦から、「一生懸命に生きてほしい」という願いを印章に託されたこともありました。
憲法も国民の声も無視して戦争法を強行採決した安倍自公内閣。戦後の平和主義を踏みにじるその姿は、竹垣さんにとって「世界でたったひとつのもの」を踏みにじるものです。
強行採決の前、安倍首相、自民党などに抗議する直筆の手紙を出しました。自民党宛ての抗議文には「安保法案知れば知るほど違法…これでも強行採決か」と記し、怒りが文面からも伝わってきます。
大手企業との取引もあって、「仕事への影響が頭をよぎった」といいます。
「ささやかな抵抗です」と話す竹垣さん。「それでも今やらなかったら、僕が貫いてきた信条はなんだったのか後悔することになる」「黙っていることは認めること」と、きょうも子どもたちや親に「おはよう」と声をかけ、戦争法反対の手紙を配り続けています。
「印染」を戦争で汚させない=兵庫・西宮
「印染めを二度と汚させてはならない」と話す山田平さん
印染めを二度と戦争のために使わせない―。兵庫・西宮民商会長の山田平さんの信念です。
創業100年を超える山田染物店(西宮市)の3代目。デザイン、下絵、糊置き、染めなど完成までの7工程を一人でこなす全国でも珍しい染物師です。
その技術は高く評価されており、歌舞伎の人間国宝の襲名式のぼりや、元横綱の曙の相撲のぼりなども製作してきました。
友禅の技法を使って組合旗、大漁旗、のぼり、法被、垂れ幕などの「印」を染める印染め。「着物など『個人の美』を引き立てるものと違い、『団体や集団の美』を引き立てるのが印染めなんです」と山田さん。
しかし「印染め」には暗い歴史も。第二次世界大戦当時、兵士の出征を見送る時に使われたのも「印染め」でした。
「自分の仕事を汚されるわけにはいかない。自分の仕事に対する思想を曲げるわけにはいかない」
中学を卒業し、15歳でこの仕事を始めた山田さんの決意であり、それを貫いてきた歴史でもあります。工場の窓に張られた印染めの言葉に山田さんの思いが浮かび上がってきます。
「戦争法案廃案! 平和の心 一つにあつめて」
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「安倍政権は退陣せよ」と看板設置=北海道・室蘭
安倍内閣の退陣を求める手書き看板を会社前に掲示した田口清英さん
「世界遺産 憲法第九条を破壊する安倍内閣は退陣せよ」。衆院特別委員会で安倍内閣が戦争法を強行解決した直後、北海道・室蘭民商の田口清英会長は、会社前に手書き看板を立てました。
「腹が立って仕方なかった」と話す田口さん。「自分の気持ちをみんなに伝えたかったから」といいます。
タイヤ修理販売の有限会社テーケーブラザー商会を創業して53年。店内には戦争法反対の署名を常備し、トラックや自家用車のドライバーさんに納品書を手渡す時も署名をお願いしています。
終戦直前、艦砲射撃を受けた室蘭。父親も千島から命からがら戻ってきました。親から聞いた体験談が「戦争反対」の原点です。「国民よりも自分の自尊心を大事にするような首相に政治を任せられない」と怒りを込めます。
目に映るのは若い人たちの頑張り。「私たちの世代も頑張り時ですよ」。2年前には俳句を始め、憲法を題材にした句も作っています。
蒲公英の絮地球の果てに武器運ぶ
全国商工新聞(2015年8月3日付) |