欧米に広がる軍縮の流れ 軍事費「聖域」日本の異常
1月の通常国会で2011年度の予算審議が始まります。菅・民主党政権は、大企業の利益を最優先する「新成長戦略」の関連施策に予算を重点配分する一方、生活密着の公共事業に関する予算や中小企業予算などは概算要求で1割削減の対象に。しかし、「ムダを徹底的に見直す」としながら、軍事費と大企業・大資産家減税は「聖域」にしています。リーマン・ショック後、主要国では財源確保のために、軍事費削減に踏み出しており、5兆円規模の軍事費を維持する日本の異常さが際立っています。
いまや日本の軍事費は年間5兆円規模にも膨れ上がっています(図表5)。アメリカ、中国、フランス、イギリス、ロシアに次ぐものです(図表2) 。
10年度の予算総額は4兆7903億円。内訳は(1)人件費・食料費2兆850億円(2)歳出化経費1兆6750億円(3)一般物件費1兆303億円―です。
自衛隊の活動費に当たるのが「一般物件費」ですが、その約4割4028億円が在日米軍関係経費に充てられています。しかも大部分は、日米地位協定上も支払い義務のないいわゆる「思いやり予算」(10年1900億円で中小企業対策予算とほぼ同額)や米軍再編経費などです。米軍駐留を受け入れるドイツや韓国などと比較しても、日本の負担は突出しています(図表1)。とりわけ「思いやり予算」は昨年度までの32年間で、総額にして6兆円に達しています。
全体の35%を占める「歳出化経費」は、兵器購入のツケ払いです。例えば約1400億円のイージス艦を調達した際、単年度では支払えないため、分割して支払うものです。
米軍を支援し海外派兵を展開するための装備=「おおすみ」型輸送艦(1隻約500億円)、「空中給油機」(1機約250億円)など、憲法9条に明らかに違反する支出も見過ごせません。
地球温暖化の防止が世界的課題ですが、軍事活動は最も環境破壊を引き起こす要因となっています。例えば、F15ジェット戦闘機は、最大推進力で飛行した場合、1分間で908リットルの燃料を消費。普通の自家用車(1リットル10キロで年間1万キロ走行の場合)の年間燃料消費量1000リットルとほぼ同じです(図表6)。
軍事費削減は環境問題の面からも待ったなしです。財源難の折、この聖域に切り込んでムダを削れば、中小企業予算はもちろん、国保料(税)の引き下げなど暮らし関連の予算を増額することが可能です(図表4)。
欧米は軍事費削減
13億ドル削減/ドイツ
ドイツ連立政権の国防省は10年度、385億ドル規模の軍事費を13億ドル削減を発表。兵器調達、兵力の削減に踏み切る構えです。
4年後25%/イギリス
イギリスは14年度までに25%の削減を義務づけました。
軍人など5万人/フランス
フランスでは10年度、約400億ドル規模の軍事費から61億ドル削減すると発言し、さらには3年間で軍人、軍属5万人を削減することを決めています。
09年から/イタリア・スペイン
イタリア、スペインは09年から、軍事費を削減しています。
5年で1000億ドル/アメリカ
アメリカは欧州諸国が軍事費を削減し兵力が減少するのを懸念しているもののアメリカ自身も、軍事費を今後5年間で1000億ドルの「節約」を表明しています(図表3)。
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