匠の技あり・小口とほぞで自在に木組み=国府木工所
ドアや窓、障子、ふすまなど建具作りを手掛ける蓑島良一さん(49)。匠の技を生かして、家具やいす、かばん、はし箱、名刺入れなど、大小さまざまな木工製品作りに挑戦しています。「自分の持つ技術で何ができるか」と日々、創意工夫を重ねています。
くぎをまったく使わず、小口とほぞをつないで内扉用の枠をつくる簑島さん
木組みの仕組み。溝を合わせるとしっかり固定された十字に
木の組み合わせ次第でこんな美しい模様も
障子や窓の飾りとして使われます
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簑島さんの作品。 中央奥はデザイナーとの共同でコンクールに出品した「キセカエタテグ」
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「材木を切って小口やほぞ、溝を作り、くぎをほとんど使わないでパズルのように組み立てるのが日本の家屋、建具の伝統工法です」と語りながら、室内扉のガラスをはめ込む枠を作る蓑島さん。「職人は完成時の姿をイメージできることが大切」と、角材に施された小口やほぞを一つひとつ組み立てると、見事な枠が出来上がりました。
材木切りに始まり、かんながけ、組み立てなど一連の行程を手がけ、木の組み合わせで模様を作る「組子細工」。細かな手仕事を得意とします。
お客さんには天然木材と天然塗料を使うよう勧めるなど、シックハウスや環境に配慮した製品にこだわっています。
中学生のころから父親を手伝い、「完成させる」喜びにひかれて建具の道を選びました。最初は建具一筋でしたが、35歳のときに友人の作る家具に出合ったのが転機に。「自分ならどんな家具ができるかという衝動に駆られ試作した家具が好評で、木工製品を作りを始めました」と振り返ります。
木工製品を作るようになって、「売れなければ意味がない」と営業活動にも力を入れました。
所属していた神奈川県建具協同組合青年部に働きかけて神奈川県に申し入れ、01年に県産木材を使用した家具類をアピール用に県庁舎に展示させることに成功しました。
建具の技術を生かして出品
デザイナーや設計士とも共同で仕事するよう呼びかけ、05年に開かれた全国建具展示会でアイデア品「キセカエタテグ」を出品したことも。「障子の中に自由に入れ替えができる小枠を並べたもの。くぎを使わない建具の技術を生かすからこそできたものです」と笑顔で語ります。
また、県産木材を管理するNPOとの共同事業も展開。展示会などへの出品も行っています。
こうした努力が実り、今は設計士などの紹介で仕事が切れることがありません。
「国府木工所」
〒259-0111 神奈川県中郡大磯町本郷1377の9 Tel0463-61-4173 ホームページ「国府木工所」で検索
経歴 1961年神奈川県大磯町生まれ。
中学生のときから父を手伝う。高校卒業後、1年半の大工見習いを経て、「国府木工所」にもどる。
神奈川県建具協同組合理事、同組合県産木材開発室室長。全国の和風建築職人でつくるNPO(特定非営利法人)「職人の森」の中心メンバー。
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