大手コンビニ進出で地域経済が疲弊 高知大学・岩佐教授に聞く
加盟店と共存繁栄へ法規制を
「コンビニ・ブームは地域に何をもたらすか」―。地域へのコンビニ進出を分析し、地域経済に役立つフランチャイズへの提言も行う高知大学人文社会科学部・岩佐和幸教授に話を聞きました。
高知大学人文社会科学部教授
岩佐和幸さんに聞く
業界内で階層分解
「コンビニの時代」と称されるほど、コンビニ業界はプレゼンスを高めています。1990年代以降の業界の成熟化に伴い、今、二重の意味で、業界の再編が進んでいます。その一つは、業界内部での階層分解ならびにチェーン同士の統合・提携に基づく大手3社への寡占化の進行です。もう一つが、大都市部から低密度地域への出店エリアの外延的な拡大です。特に四国は、大手資本にとっての最後の草刈り場として注目されるようになっています。高知県にも、ついにセブン-イレブンが、2015年に初出店してきました。
利益は県外に流出
大きなイートインコーナーや駐車場も設けられている高知市内のコンビニ店
そこで、高知県に焦点を絞り、コンビニの浸透が地域経済にどのような影響をもたらすかについて、住民グループで調査を行いました。明らかになったことは、大手資本の進出に伴なう二度の「コンビニ戦争」(第1次1990年中盤〜2000年代。第2次2000年代中盤以降)を経て、かつて主流であった地場コンビニが姿を消し、大手チェーンの独壇場と化してしまったことです。
加えて、コンビニ業界にとどまらず、地場スーパーとコンビニ大手との提携も急速に進行していきました。提携内容や裁量のレベルには差が見られるものの、サンシャインがセブン―イレブンと、サンプラザがファミリーマートと、そしてサニーマートがローソンと業務提携が進み、地域の商業構造ががらりと変わってしまいました。
しかし、この「コンビニ=地場連合」は、あくまでコンビニ資本が主導権を握っていることに注意しなければなりません。コンビニの店舗で陳列されている商品の大半は、県外の工場・配送センターから送りこまれますので、店舗の売上が伸びても関連利益は県外に流出します。つまり、コンビニの出店が増えても経済的な「果実」は地域にとどまらず、地代・テナント料とオーナーや非正規雇用者の低報酬ぐらいしか、地域には残されません。地域経済へのマイナスの影響は極めて大きいと言わざるを得ません。
「奴隷契約」は今もなお
さらに、「現代の奴隷契約」と言われたFC契約の問題性は、相変わらず深刻であることも明らかになりました。
本部の利益は拡大し、勢力が拡張される一方、オーナーは本部の指揮下で働く実質的労働者として経営の自立性から疎外され、過酷な長時間労働を強いられています。ヒアリングでは、(1)出店飽和状態で競争が激しい(2)経営の自立性がない(3)24時間営業がきつい―との声が共通していました。オーナーの裁量は、せいぜいカウンターフーズの販売や人件費・廃棄ロスの削減など、限られた範囲にすぎません。労働者であれば決して許されない長時間・過重労働がまん延しています。このような高リスク・低リターンの実態は、コンビニ全体のイメージ低下にもつながり、「人手不足」や「オーナーが確保できない」など、負のスパイラルに陥っています。放置すれば、スクラップ&ビルドが繰り返され、社会的損失は限りなく大きなものになるでしょう。
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出店規制・誘導策も
今、私は二つの点から対応が必要だと考えています。
第一は、本部と加盟店との関係を規制する「フランチャイズ規制法」の制定です。
海外では、情報や資本力など力関係の非対称性からくる本部の横暴を規制し、加盟店の権利を守るために、フランチャイズ規制法が進んできています。先進的な取り組みを参考に業態法を成立させることが、オーナーの地位向上の前提条件になるでしょう。
第二は、出店規制・誘導を通じたコンビニの地域への「埋め込み」です。
かつて、「スーパー時代」に大店法が成立したように「コンビニ時代」にふさわしい法的枠組みが求められています。コンビニを対象とする地域主導の出店規制・誘導策などが検討されるべきでしょう。地域経済の持続的発展に寄与する貢献なども求めていくべきでしょう。
具体的には、地域内での商品やサービスの調達の拡大や地域特性を生かした店舗経営への改革を通じ、その地域にふさわしい新たな「地場コンビニ」をめざしていくことが考えられます。
現在、コンビニは、地域の中でますます存在感を高めています。また、公共的な役割の発揮も求められています。業界全体の健全化・適正化を図ることこそ、地域になくてはならない真の社会インフラとして存在できるようになると思いますし、地域の期待に応えながら、本部と加盟店との共存共栄への道が開かれるのではないでしょうか。
全国商工新聞(2018年2月12日付)
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