どうなる卸売市場法 公的責任まで規制緩和
買収・再編など進む恐れ
今国会で審議されている卸売市場法等の改正案は、平成11(1999)年と平成16(2004)年の「改正」による規制緩和をさらに進め、民間企業の中央卸市売市場の開設も盛り込んでいます。
中央卸売市場を民間が開設する
東京・豊島市場で行われるセリ
これまで都道府県か市など地方公共団体にしか認められていなかったものが、改正案では民間企業が開設する卸売市場についても、国が定める一定の施設規模以上の卸売市場については、中央卸売市場として認定することができるとしました。
現在も地方卸売市場については、民設民営、公設民営、公設公営などのタイプがありますが、民設民営が多くを占めます。民設民営でも地方によっては、中央卸売市場よりも取扱規模が大きい市場があります。認定等の基準は、総務省令に委ねられているため、国がこれから定める一定の施設規模等の基準がどうなるか今のところ分かりません。
卸売市場法に詳しい三国英実広島大名誉教授は「その基準いかんによっては、民設民営市場の中央卸売市場化、中央卸売市場の地方卸売市場化や、また中央卸売市場の民間大企業による買収などの再編が進展するものと考えられる」と指摘します。
また、取引方法の規制についても各市場での市場関係者の協議に委ねられているために、規制緩和がどこまで進むのか、はっきりしません。
市場関係者から苦渋の声上がり
東京都には11の中央卸売市場があります。豊島市場もその一つ。朝6時半からは青果、7時からは野菜のせりが行われます。青果のせりはメロンだけで数分で終了。野菜もナス、小松菜など数品目であっという間に終了してしまいます。大部分の取引は、せりではなく相対取引が主流になっています。
豊島市場の買参人組合のある幹部は、「改正案はこれから参入しようとする人たちにとっては都合がいいのでしょうが、われわれ青果店にとっては取引が一層きつくなることは間違いない。しかし、グローバル化の進展など大きな環境変化の中では受け入れざるを得ないのでしょう」と苦渋をにじませます。
同氏は、生産者の力が強くなっており、卸売業者も生産者の指値で買わざるを得ないと指摘。7%の手数料収入では卸売の経営自体もきつく、一つの市場で卸売会社は1社だけになったところも珍しくなく、モノが集められなくなっているのが実態と話します。
「産地から直接荷を買い付け、スーパーなどに販売する『直荷引き』を仲卸に解禁したのは、品薄の解消が狙い」などデメリットだけではないことを指摘します。「力のあるものが勝ち残る時代なので、われわれはスーパーにはできない手間暇かかる仕事に取り組んでいくしか生き残る道はない」
また、「市場のルールづくりは各市場で市場関係者の意見も聞いてつくっていくということになっているので、豊島市場が市場に近い利便性の高い市場として存続が図れるように意見を述べていきたい」と話します。
全国商工新聞(2018年6月4日付) |