60年の経験で間隔磨き1000分の1の正確さ=長野・飯田
飛行機の尾翼の制御部分などの金属加工を手掛ける「大倉製作所」の大倉通夫さん。果樹園に面した小さな工場で、長年にわたり高度な日本のものづくり技術の一翼を担ってきました。
数百万個もの部品が作用し合い、機体を浮かせることを可能にする航空機の部品は、1000分の1ミリの精度が求められます。種子島から飛ぶロケットの部品の一部も大倉さんが担当。さらに厳しい1万分の1ミリの審査に合格し、採用されました。
緻密な加工は温度による形状変化の影響が大きいため、室温が20度に保たれた作業環境が理想的。しかし「寒暖差の激しい山間地にあり、小さな工場ではそんなことは難しい」と大倉さん。金属が変化しない温度を見極めるため、加工した部品を唇に当てて微妙な温度の違いを確認します。「耳や頬でも試したけど、唇が一番返品が少ない」と言います。
正確な製品を生み出すため、大倉さんが作った刃
いくつもの工程を経て寸法の狂いもなく作られた部品
余計な付加がかかるとゆがんでしまう金属の加工には、材質や厚さ、加工方法などに応じた刃を使います。15歳からこの道に入った大倉さんは修業時代から刃を自分で作製。難しい加工も多く手掛けてきました。
コンピューター制御の機械導入や価格競争を避け、工場への投資を最小限に抑えて自分にしかできない手仕事を続けてきました。材料費が上がり、海外に仕事が流出する状況はあるものの、「どうしてもお願いしたい」と試作品や加工の難しい小ロットの注文が絶えません。一人きりの工場にもかかわらず、一次下請けとして親会社から直接仕事を受注し続けてきました。
「こんな小さな工場で飛行機の部品作ってるって知ったら、みんな不安になるんじゃないか」と笑顔。日本のものづくりを担う卓越した技術への自信をのぞかせました。
全国商工新聞(2015年7月6日付) |