全商連トップページ
中小施策 税金 国保・年金 金融 経営 業種 地域 平和・民主 教育・文化 県連・民商 検索
 全商連とは活動方針・決議署名宣伝資料調査婦人部青年部共済会商工研究所発行案内入会申込リンク
  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第3150号1月5日付
相談は民商へ
 
 
業種 製造・小売
 

「現代の名工」で表彰・寺社に輝く職人の技=京都・山科

Photo
金箔を無駄なく素早く押していく岡本さん

 気高く華麗な輝きで人々を魅了する金箔。仏具や寺社などに金箔を張る「金箔押師」で京都・山科民主商工会(民商)会員の岡本正治さんが2014年度の「現代の名工」の1人に選ばれました。金箔押しの職人として45年、東大寺大仏殿や上野東照宮金色殿も手掛けたその技と後継者づくりが評価されました。

 後継者育て業界振興
 修復を終え、金色に輝く仏像の台座が鎮座する作業場。岡本さんは厚さ1万分の1ミリの金箔をそっと竹のはさみでつまみます。素早く無駄なく、接着剤の漆を塗った仏具に配置し、刷毛で余分な金箔を払い真綿で優しくなでると、やがて滑らかで重厚な輝きを呈します。
 「金箔に目が行きがちですが、一番大事で難しいのは漆の扱いなんですよ」。乾く速さや産地などが異なる漆を2〜3種類、仏具の土台や季節に合わせて調合し筆で塗っていきます。「金箔のつやや趣き、強度などは漆の調合、塗り方が大きく影響する。見えないからこそ難しい」と筆先に集中します。
 心に留めているのは、金箔を製造する職人の苦労です。「一生懸命作った最高の金箔を思い切り生かしたい。いい金箔が台無しになってしまう仕事はしてはいかん」と力を込めます。「紫外線・赤外線等をほとんど通さず反射効率が抜群に良好な金箔の本質は、装飾はもとより保護材」と考え、土台をいっそう長持ちさせる完成度の高さを追求してきました。

Photo
妻の昌代さん(右)と修行中の弟子(左)と受賞を喜ぶ岡本さん。足元は修復した大仏の台座

 岡本さんは23歳から師匠の作業場の2階に住み込んで修業し、33歳で自身の工房を持ちました。京都仏具協同組合の推薦を受けた「現代の名工」は22年前に師匠も受賞。妻の昌代さんは「30年前に税金裁判をたたかったこともあったから驚いた。技をきちんと見てもらえた」と喜びます。
 納得できないことにとことん向き合う、まっすぐな岡本さんの姿勢は仕事にそのまま通じています。
 表彰の理由には、後継者の育成と業界の振興も挙げられます。6人の弟子が岡本さんの工房で修業し5人が独立。先細りになっている業界で仕事をする弟子を案じ、副業のためにヘルパーの資格を取らせたりパソコン教室に通わせたりしながら技術を伝えてきました。
 山科民商の伝統工芸職人でグループをつくり、全国各地で展示会なども開催。「頑張ってこれたのは、競争して技を磨き合える仲間がいたから」と話します。
 「先が見えるのが嫌で」と勤めていたガス会社を辞め、金箔押しの世界に飛び込んだ岡本さん。「この仕事は奥行きがあって、やってもやっても分からんことが多い。次はもっといい仕事をする」。柔和な笑顔の奥に、たゆまぬ探究心をのぞかせます。

 ▽きんぱくの岡本
 京都市山科区大塚北溝町72の10 TEL:075-594-5459


▽現代の名工
 卓越した技能を持つ技能者を都道府県知事や事業者団体などが推薦し、厚生労働大臣が決定し表彰するもの。(1)極めて優れた技能を有す(2)現に表彰に関わる技能を要する職業に従事(3)技能を通じて労働者の福祉の増進および産業の発展に寄与(4)他の技能者の模範と認められる-以上のすべてを満たすのが条件。1967年に創立。昨年は149人に授与された。

全国商工新聞(2015年1月5日付)
 
   

相談は民商へ
ページの先頭